第57話 キノコ

 朝になった。何も変わらない。

 シャルが朝飯を作ってくれていて、有難く頂いた。美味しかった。

 ヴィトン達は飯を食ってるだろうか?やはり心配である。


 俺らだけでこの街の兵士を皆殺しに出来るか?

 ボスもアルファも、それは可能だがやってはいけないと宥められた。

 可能なんだ?‥‥トゥミにべしっ!とチョップされた。


「な、何すんだ?」


「こんな時に真悟人が落ち着かないでどうするのよ?ボス一人でこんな街なんか、ちゃっちゃとやれちゃうけど、だからこそやっちゃダメでしょ?ボスとアルファってそんだけの戦力なんだよ?だから人間も警戒してるんでしょ?怯えてるんでしょ?」


 怯えてる?怖い?俺らが?

「怯えてる?怖いのか?俺らが?」


 改めて声に出して見た。


「当然でしょ?今まで、森に進出して作った村なんか山ほどあるよ?なんでそんな村が残らないと思う?‥‥」


 え?そんな事してたんだ?そんなの跡形も無いじゃん。

 突然の質問に、どう答えて良いのか分からない。


「いい?牙猿達は移動するって知ってるでしょ?当然、移動先は豊かな所なの。

 でも節操なく回る訳じゃ無くて、ある程度食べて次の所に行くの。でもね、人間は違う。根こそぎ奪っちゃうの。周りも破壊しちゃうの。次に牙猿が廻ってきたら、人間に破壊された後‥‥‥それ、怒るよね?

 だから牙猿達は人間を森に入れないの。人間と牙猿は相容れないの。

 私たち、エルフは森を守ってきた。でも、牙猿達には許して貰えなかったの。

 だから、真悟人が牙猿と仲間になってるって凄い事なんだよ!」


「主、我等は森を守れればそれで良い。今まではそれで良かった。

 しかし、主から仲間の大切さを教わった。いや、気付かされた。

 だから囚われた仲間は助けたい。しかし、殺し合いで助けるのではなく、ちゃんと助けたい。」


「あ、あぁ。すまねえ。トゥミの言う事もボスの言う事も分かる。ちゃんと助けたいって意味も分かる。ちょっと焦ってるのかな?ごめんな。」


 ちょっと散歩してくると歩き出した。

 実は、下半身がとんでもなくイキっている。

 なんだ?どうした?こんなにやりたいなんて?何か俺が囚われてるのか?‥‥こんなトコで抜く訳にも行かないし‥‥


 その頃、

「あっ!やべ!」

「ん?シャルどうしたの?」

「真悟人の朝ご飯、絶倫キノコ使ってた!」

「!!!!!それって……」

「今度ゆっくりと夜に過ごせる時用に、採って置いたのね。」


「ねぇ、シャル?二人でこなせる??」

「ん~~‥‥えへっ♪」

「私,真悟人連れて来るから、シャルは洞窟に準備しといて!」

「朝っぱらからマジですか?」

「だってしょうがないでしょ?他に向けられても困るし‥‥」

「そうだね。準備するから呼んできて。」


 う~~~・・・

 やべぇ、やりてぇ!・・・

 どうしちゃったんだ?俺は?


「真悟人!!」

「トゥミ!」


 襲い掛かりそうだ。


「真悟人?落ち着いて?」

「うん。ゴメンなトゥミ。その‥‥」

「着いて来て・・・」


 自分を落ち着かせながら、黙って付いて行った。

 滝壺横の洞窟まで来ると、


「誰も入れない結界張って!」

「お、おぅ。・・・」


 洞窟に入ると中には、シャルが待っていた。


「真悟人。来て。」


 瞬間、頭が真っ白になって、理性が弾け飛び、シャルに貪り付いた。

 何も考えず、ひたすらシャルを堪能した。‥‥でも、まだ足りない。


「真悟人?いいよ?来て。」


 飛び掛かる様にトゥミに抱き着いた。

 完全に獣になっていた。

 もう、目の前の女の事しか考えられない。俺はどうなったんだ?とチラッと思っても欲情のままに呑まれて行った。‥‥‥

 何度も何度も目の前の女に襲い掛かる‥‥‥

 気持ちではちゃんと分かっている。

 トゥミとシャルに何度も襲い掛かっていると。

 傷付けてはいけないと。

 でも、自制できない。トゥミとシャルが欲しくて欲しくてしょうがない。


 何度目かの後、理性が戻ってきた。


 トゥミとシャルと二人を抱き締めて謝ったが、二人とも意識朦朧だった。


 俺は、何て謝れば良いんだろう?

 何でこんなになってしまったんだ?

 あれやこれやと考えを巡らせていたら、シャルが気付いた。

 気付いたシャルに「ゴメンな。」と謝る。

 シャルは俺をぎゅっとして、ちゅっとしてくれた。


「真悟人?もう大丈夫?」

「うん。もう、襲ったりしない。ホントにゴメンな。」

「ううん。」


 また、ぎゅっと抱き締めてくれる。

 そして、トゥミも気付いた。


「‥‥‥凄かった。」


 そう言って、トゥミは寝てしまった。

 シャルもまた寝息を立てている。


 二人に毛布を掛けて、洞窟から出る。

 ボスは上流の方で、アルファは下流の方で警戒してくれてるようだ。

 お前達もゴメンな。と心で謝って上流の方へ行く。

 ボスは特に変わりないと、援軍の知らせもまだ無いと報告してくれた。

 次に下流に行く。アルファは、この辺は変わりないと報告してくれた。

 ただ、街に血の匂いをさせた早馬が走り込んだ。

 それが、何の知らせかは分からない。

 それでは、今晩か、明日には動きがあるか?



 夕飯の準備をする。

 偶には白身魚のムニエルでも食わしてやろうかと思う。


 食材を漁っていたら、見知らぬキノコを発見!これは!!!!!!!?

 絶倫キノコ‥‥‥‥‥

 そういう事かぁ。

 あれは、ヤバいキノコだな。

 普通に犯罪犯しても可笑しく無いわ。


 今後、このキノコ発見したら、根こそぎ回収しておこう!‥‥ヤバい事に使うんじゃ無いからね!こんな理性の飛ぶようなキノコなら、他に使い道あるだろう。


 しかし、なんで朝飯に?‥‥こんなトコに無造作に在るって事は、間違えたか?知らなかったか?嫁さんでも無理やりしたらレイプだし、気付いたらもう一度謝っておこう。



 街の方は、血の匂いをさせた早馬が走り込んだというのが気になる。

 アルファに詳しく聞くが、騎手の血なのか?馬の血なのか?返り血なのかは判別出来ないと……。


 何かが起きてるのは分かるが、まさか?


 トゥミとシャルが起きて来た。

 二人に対して、先ず謝る。

 そして体調を確認するが、二人とも身体に問題は無いと言う事なので、少しホッとする。


「真悟人、ゴメンね。真悟人があんなになっちゃったのは、私のせいなの。」


「キノコか?」


 シャルは目を見開いて、「知ってたの!?」


「いや、さっき見つけたんだ。」


「採って来てそのまま置いておけば、分かるよね。キノコの事は知ってたけど、今、使うツモリじゃ無かったんだよ。ホントごめんネ。」


 トゥミは赤くなりながら、

「あんなに凄いとは思わなかったよ。真悟人は謝ってくれたけど、真悟人のせいじゃ無いからね。」


「トゥミとシャルが傷付かなくて良かったよ。あのキノコは全部回収するぞ。」


「「そうね。」」



「話しは変わるが、血の匂いをさせた早馬が駆け込んだらしい。何が起きてるのか調べさせてる。」


 シャルが指を頬に当てながら、

「オダーラの街かな?」


「何処だ?」


「途中、商人達と別れた街。」


 代官と商業ギルドマスターの捕縛?失敗したら‥‥クーデターか?

 まったく、あっちもこっちも何やってんだよ。


 しかし、代官と商業ギルドマスターは捕縛されて、打ち首じゃ無かったか?

 関係者の方々はかなり捕まったって話しだったのに、裏の方々も整理された様な話しは全部ガセか?


 もしかしたら、上手く誘い出されてエルフの里からの早馬だったとしたら‥‥‥

 戦隊達が交戦中だとしたら‥‥‥

 どんどん嫌な考えが頭を過ぎる。

 今この時、彼等は無事なのか?直ぐに連絡が取れないのは歯痒いもので、今度日本からトランシーバーを持って来ようと思った。




 ===============




 時は少し遡る。

 サラとワフワンがエルフの里を目指して、森をかなりのスピードで飛んでいると、森のあちこちに罠が仕掛けられているのを発見する。

 もう、目の前にはオダーラの街がある。

 こんな場所に、地面や木々の間に仕掛ける簡単な罠だが、無視出来る物では無い。


「ワフワン、これって?」


「うん。私達を狙った物ではない。どちらかと言うと人間を狙った物。」


「人間同士で何かが起きてるって事だね?」


 ワフワンは無言で頷いた。

 その時!

「伏せて!」


 サラの頭を低く抑えて、ワフワンが伏せる。

 オダーラの街から怒声が上がり、血を流した兵士が馬で走り出た。

 マウントフジの方向に走って行くが、追手が掛かる様子は無い。


「ただ事じゃないね。早く帰ろう。主たちが心配だ。」

「そうだね。ワフワンお願いね。」


 後は、脇目も降らず、一気にエルフの里まで走り抜けた。


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