第55話 マウントフジ

 初めて人間の街へ行く。

 交易してた街でなく、その領主である人物の居る領都へ行くことになった。


 マジですか?突然、俺が行く意味が分からない。

 祖母ちゃんの家で暮らそうとして、何だかんだが在って村にしようと思った。

 嫁が3人も出来て、嫁の実家の交易に口出しした。

 そしたら、領主に呼ばれて馬車に乗せられ、今に至る‥‥


 べしっ!とトゥミチョップされた。

「んな簡単な事じゃないでしょ?」


「え~~?だってそんな感じじゃん?」


 今度はサラにほっぺをムニムニされて、

「真悟人の交易品が凄いから領主直々にお目通りが叶うんだよ?塩に砂糖に海の幸じゃ、近隣でこんな交易無いからね。」


「結構、暖かい地域だし、海は外海も、内海も在るんだから、なんで海の幸と言うか、海産物が貴重なのか分からないよ。」


 シャルに足裏マッサージをされて、ちょっと涙目な所に、

「その海に出るのが命懸けって言ってるでしょ?真悟人は気軽に人魚さんとか言ってるけど?その人魚さんと交易出来るってのが、今回の最大の売りね!」

「真悟人‥‥本当に人魚さん達とはしてないの??」


「イッッッテ~~~!!痛い痛い!」

 足裏でメチャメチャ痛いツボをぐいぐい押されて絶叫してしまう!


「してない!してない!トゥミ、サラ、シャル以外とは本当にしてないから~!」


「まぁ、信じてあげるけど、嘘ついたらちょん切っちゃうからね!!」

 トゥミさん?あなたそんなキャラだっけ?

 サラは薄い笑顔を浮かべてるし、シャルは無表情である。


「本当にしてません!官能的な姿態にグラグラしたけど、してません!褒めて欲しい位だよ。」


「フフッ我慢したのね。偉いね。」

 サラにチュッされて、シャルにアムッとされて、トゥミにチュ、カリッと唇を噛まれた。酷い!俺にも噛ませろ!とトゥミに襲い掛かる。


 何の事は無い。

 嫁3人とイチャイチャとじゃれてるだけである。

 爆発すればイイのである。


「何で馬車なんだ?」


「そりゃ、飛竜にこの人数乗れないし、ましてやボスやアルファなんて、飛竜が怯えて乗せられないでしょ?」


 それもそうかと納得した。

 今回の旅程は、当然の如く嫁3人とボスとワフワン更にアルファ。

 エルフの里からはヴィトンと、いつもの護衛二人組である。

 ヴィトンはいつものユニコーンに乗っていて、護衛二人組は普通の馬に乗っている。つか、普通のお馬さんも里に居たんだね。


 シャマルはお留守番である。

 シャマルはかなりごねたが、流石に人間の街に自分の身を守れない女の子を連れて行く訳には行かない。普通の子供と違って、魔狼の姫である。

 こんなのバレた日にゃ、速攻攫われるのは目に見えている。

 そもそも伝説の魔狼で、人化出来るのもお伽話の域である。

 それが目の前に居たら、どこぞのアイドル真っ青な状況になるのは火を見るより明らかであって、碌なことにならないであろう。

 正直言って、今回は一緒に行くのは困ると、遠慮してもらった。


 因みに、アルファに人化出来るのか聞いて見たら、ただ目を逸らしただけであった。これは、出来ない訳じゃ無く、嫌な思い出がある感じか??



 出発時は馬車に閉じ込められていたが、翌日からは普通に自由行動を許された。


 外に出てビックリ!人間の商人、ジャニ、フェブ、メイが居た!

 なんで?なんで?と聞いたら、出発直前に真悟人護送の話が在って足止めを食らったと。だから、一緒に商人隊として居るんだと。


 ちょっと待て!!護送?、今、護送って言ったよなぁ??

 そこで、嫁3人に連れて行かれた。


「え~~~~!なんで囚人護送扱いなんだ?可笑しいだろ?」


 3人して、フルフルフルと頭を振りながら、そんな事無いよ!囚人だったら外に出られないよ~!と言われて‥‥それで納得出来る訳ないだろう?と食い下がったら、‥‥真悟人を自由にしたら、直ぐ揉め事を起こすし、直ぐ何処かに行ってしまうし、直ぐ勝手に狩っちゃうし!‥‥


 え~~??そんなイメージなの?

 何処かに行っちゃうとか、勝手に狩っちゃうは分かるが、直ぐに揉め事起こすが一番先に来るの?可笑しくない?そんな訳無いから!


 嫁3人からは、牙猿は?エルフは?魔狼は?オークは?人魚は?‥‥

 俺の中では何も揉めて無いよ?‥‥‥ん?

 それは、認識の違いで、それぞれの種族では激動の揉め事になると。

 基本的に他種族と交わるのは、交易担当者くらいで、一般の者は他種族なんて見る事も無いと‥‥要するに、他種族と交流する事事態が、滅多に無い揉め事であると!王都や領都と違うんだから。‥‥‥ん~・・・そんなの知らない。


 だ~か~ら~!自由行動させられないんだよ!

 移動中にまた、何処かの種族に絡んだら、誰も制御出来ないだろ?

 ちゃんと言う事聞くか?聞かないだろ?それじゃあ、自由にさせられない。

 以上!

 あ、はい、すいません。ごめんなさい。


 なんの反論も出来ず、皆の剣幕にただただ平伏するばかりです。



 3日目に問題の街に着いた。

 まだ、沙汰の降りてない不穏分子も残ってると言う事で、人間の商人、ジャニ、フェブ、メイの3人だけ街に入る。彼等とはここでお別れである。

 別れ際にメイが、帰りに寄って下さい!絶対ですよ!と力いっぱいアピールしてたので、状況次第で分からないが、寄る様にする。その時は尋ねると約束させられた。


 トゥミ、サラ。シャルの3人は、冷ややかな目をして見ていたが、約束したならちゃんと守りなさいよ?と賛成してるのか?反対してるのか?‥‥女心は分からん。



 そうして、人間の村に寄ったり、野営したりで、旅は続く。

 野営は特に問題無いが、人間の村に寄るのは色々問題もあった。

 基本的に、その辺にエルフがウロウロなんて在り得ない訳で、護衛二人組が先触れに村に行くと、そこで人間の皆さんビックリ!エルフが来たぁ~!と大騒ぎ!


 娘さんたちは目がハートマークです♪

 護衛二人組はスカした顔してるので、里で言っちゃうよぉ?と脅して置いた。

 トゥミ、サラ、シャルを見た男性陣は、ここぞとアピール!!筋肉誇る奴や煌びやかな格好をしてきて、財を誇る奴。

 跪いて手にキスをしようとする輩も登場して、ボス達に早々に排除されてた。


 そこで皆さんボスやアルファに気付きます。

 ヴィトンが、儂らの仲間で護衛の牙猿と魔狼じゃ!と言うと。

 潮が引くように皆さん居なくなりました。

 やはり、牙猿と魔狼は怖いらしい。

 改めて彼らの立ち位置を知って、

「俺ももっと怖がった方が良いか?」


「主?怒りますヨ?」


 怒られてしまった。

 もっと彼らと仲良しアピールをした方が良いかな?

 トゥミ達は、イヤイヤ、余計な事はしないで良いから大人しくしとけと‥‥

 解せぬ‥‥



 1週間もすると遠くに街が見えてきた。

 デカくね?

 遠巻きに見ても壁の端が見えない。

 あれが、この周辺の領都。

 マウントフジである。


 言われて、あぁっ!日本で見た!国の象徴にもなるであろう、左右等辺の雄大な山が目の前にあった!


 これって、首都じゃ無く、領都なんだ?

 馬車で1週間‥‥言われてみれば、その辺まで来るよね?

 次に日本に帰るときはどうなってるんだ?

 


 領都の門に着いた。

 一般の門と、特別門があり、特別門は基本的に貴族の通用門である。

 今回は、並んだ途端に門兵がやってきて、特別門に案内された。


 周囲からは牙猿と魔狼が注目を集めていて、服を着てる牙猿と、確信が持てないが、あの大きさは魔狼か??と騒ぎになっていたので、直ぐ移動させて貰えたのは有難かった。


 並ぶ事無く、関所に通されるが、誰も手形も証明書も持って居ない。

 これは、ヤバいか?と焦っていたら、飛竜の使者さんがやってきて、証明してくれた。・・・首を送るか?なんて言ってゴメンよ!助かったよ!

 使者さんはバルバータス・ナントカさん。貴族なのでナントカと言う家名があったが、聞いてなかった。

 そのバルバータスさんに案内されて、お城?へやって来た。

 説明によると、辺境伯の執務を行っている場所らしいが、イメージとしては県庁や市役所なんだろう。決して区役所程小さくは無い。


 今日は、付いたばかりで疲れているだろうから、部屋を用意しているので寛いでほしいと。明日の10時から会見の予定が組まれているので、それまではゆっくりしててくれとの話だった。


 それと、ボスとアルファについて、この街中で、一応魔物である牙猿と魔狼がウロウロするのはマズいので、(皆、怖がるからね?)冒険者ギルドへ行って従魔登録をして欲しいと。


 おぉ!冒険者ギルド!

 やっとお約束。テンプレ登場ですね?

 行ったら絡まれたり、馬鹿にされたり、受付のお姉さんと仲良くなったり‥‥とか?---バルバータスさんは苦笑しながら、そんな勇気のある奴は居ませんよと言っているが?


 それでは、冒険者ギルドに行きましょう!と早速出かける事にした。

 トゥミ達も付いて来ると言うので、ぞろぞろと街中に出る。


 人間の街には、人化云々は関係なく、ケモミミの獣人は普通に居るらしい。

 おぉ!!っと目を輝かしてたら、エルフ娘たちの目も怪しく光ってたので、その辺は、お近づきになるのは難しいのかなぁ~?と、遠くから眺める。


 冒険者ギルドの場所は市役所?から徒歩5分。近い!

 3階建ての市役所より少々小さい程度で、正面には観音開きのデカい扉がある。


 デカい割に軽い、その扉を押し開いて中に入った。

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