第53話 ご挨拶
では、次の話をしようか?
まず、此処の商品を人間の街まで行って売って貰う。
街までは送るが、街の中は自己責任だ。
どこかで商品を捌くのか?普通にギルドに卸すのか?
問題は売った後だな。
間違いなく襲われるぞ?だから、売るのは少量にした方が良いだろう。
金額にしてどのくらい売るのが妥当なのかは、お前たちに任す。
余り派手にやると目を付けられるからな。
後は、借金は幾らあるんだ?利子はどのくらい取られる?
金貨10枚分か‥‥、それじゃ、今回は売った分は貸しにしてやる。
サッサと借金返して、お姉さんを開放してやれ。
貸した分は、毎回少しずつ返せば良いから。
あと利子は付けないでやる。
その分、自分達の服や馬車の装備を揃えろ。
健康に安全に仕事を続けられるように。
それと、今後エルフの里は、お前たち意外と交易はしない。
お前達が儲けだしたら、元の商人が出て来るだろう。
そしたら、ここへ逃げて来い。
もう、奴らに儲けさせる気はないからな。
人間の商人、ジャニ、フェブ、メイの3人は、何で自分達にこんなに良くしてくれるんですか?僕たちは何の見返りも返せない。
返せるとしたら‥‥兄弟二人は思わず妹のメイを見てしまった。
その様子を見た真悟人は、苦笑しながら、
「いやいや、何か見返りを求めてる訳じゃ無いからな。売りに行くには、エルフじゃ搾取されるのは目に見えてるし、人間は俺しかいないから時間的に厳しいしな。
だったら、商人として慣れてるお前達に託した方が、互いの利になるだろ?」
まぁ、そういう訳ならと彼らは納得したが、妹のメイちゃんは何故か不満そうだったが?‥‥はて?
後は、人間との交易と言ったら、飛竜便か?それはヴィトンに言って飛竜便も終了させるか?・・・いや、待てよ?
「ヴィトン!来てくれ!お前達もこれを見て、幾らになるか分かるか?」
「なんじゃ?どうした?」
テーブルの上に、魚介類を出した。
「なんじゃ?これ‥‥これ、は?おい!これは海の魚か!?」
「ピンポーン!正解!」
「ぴんぽん??・・いや、それよりどうしたんじゃこれは?」
「今回からね、人魚さん達と取引出来る様になったのさ。」
「に、人魚ぉ!!真悟人、マジか??人魚とどうやって取引なんて??」
「それは、企業秘密です!」
「きぎょう??真悟人は時々訳分からん事を言うのう。」
海の魚や貝は、どのくらいの価値があるのか聞いて見たが、ピンと来ないようだった。お貴族様の口にしか入らない物らしく、庶民じゃ価値が分からないと。
そうか、それは今後の課題だな。
「じゃあ、今夜は海の魚で宴会するか!」
その話が、トゥミ、サラ、シャルから皆に伝わり、地鳴りのような歓声が起きた!
プラダやヘルメスも、長生きはするもんだと、海の魚が食える日が来るなんて!と感動頻りである。
あと、酒もあるぞ!と言ったら、地鳴りがもう一度起きた!
エルフの里も、酒は少量しかないので、そうそう飲めない。俺が提供すのはワインだが、質が良いと皆大喜びである。
海の幸とワインで大宴会は非常に盛り上がった!
皆、初めての海の幸だが、川魚より食いやすいし美味い♪と評判良かった。
何と言っても、白身魚をバター焼きやムニエルにしたものは、争奪戦になっていた。
一方、カニに食いついた奴らは、無言で黙々とカニを穿っている。
三杯酢の消費が半端ないね。
人間の商人、ジャニ、フェブ、メイの3人は、海の物が食えるなんて!と泣きながら食っていたが、今度姉さんにも食べさせたいとメイがウルウルした目で訴えていた。その為にも借金返さないとな!
価値について街で調べてみるそうだ。相場が分かれば、飛竜便で呼んでも交渉できるだろう。利用できるものはさせてもらう。
悪い顔で、計画を練っていたら、シャルが恥ずかしそうにやって来た。
どした?後ろに女の人が。
「初めまして。シャルの母です。」
ピキーーーンと固まった!
「あ、その、シャルのお母様で?」
「突然、ごめんなさい。シャルの母のヴィッキーです。」
「は、初めまして。神田真悟人と申します。」
シャルに似た美人さんだった。大人の色気で、シャルに会う前だったら惚れてしまうかも?
「ウフフ。シャルの言ってた通りの方ね。」
「は?いえ?ん?な、何がでしょう?」
「純粋で真っ直ぐな方って。」
「いえ!いえいえ!そ、そんな事は無いです!」
煩悩一杯で、嫁さんのお母さんにドキドキしてる不純な奴です。
「私たちの事、色々聞いてるとは思いますが、シャルを大事にしてあげて下さいね。」
「あ。それはもう、勿論です。」
よろしくお願いします。と頭を下げて終わった。
お父さんの事、聞くのも何だし、他の集落の事とかも、なんか聞きずらいよね。
一応、シャルのお母さんには挨拶出来て良かった。
サラは、どうなんだろう?両親の事は?
サラを探した。
ここでは、トゥミもシャルも親と過ごして貰っている。
折角の里帰りだから、俺の事は気にしないで良いよ。と。
少し離れた所で、ボス達やアルファ達が固まっていた。
一応、周囲の警戒はしている様だ。
ちゃんと食べてるか?‥‥アルファ達は魚の骨や頭を貰ってご満悦である。
ボス達は、何故か貝をバリボリ食っている。なかなかイケるんだそうだ。
シャマルはワインを飲んで、子犬状態でアルファのお腹で丸まっている。
カワイイな~~♪ホント可愛いです。
さて、サラは何処に??
周囲を散策しながらサラを探す。
ん?何か言い争う声がする。そちらに行って見ると、サラが居た。
相手は、両親?っぽいご夫妻?
木の後ろで立ち聞きする形になってしまったが、どうやら養父と養母らしい。
サラの両親は、既に亡くなっているらしく、養父母に育てられたと。
その養父母は、俺の所にサラが嫁ぐのを反対していて、人間の貴族の所に嫁がせたかったと。それをサラは反発して、俺の所へ来ることにしてしまった。
今からでも遅くないから、帰ってきて貴族に嫁げと。
そうすれば皆幸せに成れると。
でも、サラはもう俺の嫁になったから無理!そんな事は絶対に嫌だと。
皆が幸せにって?それじゃ、私は幸せじゃない。
真悟人と一緒じゃ無きゃ幸せに成れない!
グッと来た!胸を貫かれた気がした。
ゆっくりと出て行く。
養父のジョゼットさんが気付いた。
「お前は‥‥」
お前呼びかよ。ご挨拶だな。ちょっとイラッとした。
「お前と言われる覚えはありませんな。」
「改めて自己紹介しましょう。人間でサラの夫の神田真悟人です。」
「真悟人。‥‥」
サラが俺の腕を強く掴んでくれる。
彼らは苦虫を嚙み潰したような顔をして、無言である。
「養父母のジョゼットさんとクアガールさんですね。」
「人間の貴族の話、詳しく聞きましょうか?」
「くっ!お、お前には関係ない事だ!」
「関係ない?自分の妻の事を関係ないとは言えませんね。」
サラが強く腕を抱えてくれる。幸せな柔らかさに意識が向きそうになる。
微笑みながらサラに目を向けると、しっかり見つめ返して頷いてくれた。
「貴族とはどんなお話になっているんですか?良かったら自分が話を付けに伺いますが?如何でしょうか?」
「そ、そんな事出来る筈無い。なんの地位も無い人間が、貴族に逆らえる訳無いじゃ無いか。」
「何か、脅されてるんですか?何を言われてるんです?」
「そ、そんな事実はない!いいか!サラ!お前は貴族に嫁ぐんだ!これは決定事項だ!」
そう吐き捨てて行ってしまった。
何か弱みを握られて、サラを寄越せと脅されている感じだろうか・・・
「ごめんなさい‥‥」
サラを見ると、瞳に涙が溜まって、今にも零れ落ちそうである。
ゆっくりと抱き締めて、「大丈夫、大丈夫。」と背中を擦ってやった。
俺の胸の中で、何かごめんなさいを繰り返しながら泣きじゃくっていた。
取り敢えず、落ち着いたら話を聞いて見よう。
サラの話によると、子供の頃、サラの両親は交易担当だったそうだ。
その頃は、そんなに交易の値段が高いと言う事は無かったらしい。
それが、両親が事故で死んでしまった。そして引き取られたのが今の養父母らしい。そこから彼らが交易担当になって‥‥それから、色々理由を付けて交易の値段が上がる様になったそうだ。
そして、サラが成人する少し前から、成人したら貴族に嫁げと言い出したらしい。
もう、何の捻りも無く、真っ黒ですね。
貴族と言うのは、実は街の代官らしくて、商業ギルドとズブズブの関係だと。
本当の貴族は、飛竜便を出してる辺境伯で、辺境伯との取引は真っ当なんだそうだ。この情報は、いつもの護衛二人組と新護衛二人組に教えて貰った。
実は、サラの両親や養父母の事も事前に聞いていたんだが、やはり本人の口から聞かないとね! 彼等には、さすが!伊達に人間の街に行ってないね!と煽てて、情報収集をお願いする代わりに黒糖を約束した。互いの悪い顔でのサムズアップは人には見せられない。
一応、あらましはヴィトンに話して、対応は相談しようと保留にしておいた。
そして、人間の商人、ジャニ、フェブ、メイが街に帰る。
牙狼戦隊通じて、増員要請してたので、護衛はバッチリ!
角熊でも出ない限り‥‥いや、角熊でもイケるかな?とブツブツ言っていたら、そんなフラグは立てないでくれ!と怒られてしまった!
「本当にお世話になりました。また直ぐ戻ってきます。」
「ありがとうございました。換金したらまた戻りますのでよろしくお願いします。」
「ありがとうございました。あの真悟人さんは、お嫁さんはエルフさんだけですか?‥‥あ、あの、すいません。また来ますのでよろしくお願いします。」
それぞれに挨拶をして、街に帰って行った。
「・・・・・で、真悟人?メイちゃんのあれは何?」
「ああいう素朴な娘が好きなの?」
「いつ、そんな話を付けたかなぁ?」
「いやいやいや、関係ない関係ない、知らない知らない。」
大事な事は2回ずつ言いました。
「「「ふ~~ン‥‥」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます