第43話 日常と宣言2

 空が白んできた。

 二人は寝息を立てている。


 風呂場で水を浴びて、スライム先生の所に行った。


「やぁ。来たね。」


「スライム先生、ありがとうございます。」


「僕は何もしてないよ。シャマルちゃんが大変そうだったから、皆が連れて来ただけだよ。」


「それも先生の采配では?」


「そんな予知するような事は出来ないよ。ただ、子供の足で逃げるには、こんなコースかな?って考えただけさ。」


「最初から先生に相談すれば、もっと早く見つけられたのに。」


「う~~ん。遠回りも時には重要なんじゃない?オークの皆も助かったんでしょ?」


「確かにそうだね。でもシャマルが逃げた事とか先に知ってた??」


「あはは。スライムって何処にでも居るし、誰も気に掛けないでしょ?」


「そういう事かぁ‥‥改めて尊敬しますよ。」


「何を言ってるの?君はこの村の長なんだから、自分より上を作っちゃダメだよ。」


「先生はオブザーバーって事で!」


「何言ってるのか、良く分からないけどね。---所で魔狼達も住むようになったんでしょ?」


「そうだね。段々色んな種族が増えて、嬉しいですね。」


「うんうん。だったら村の名前も考えた方が良いね。牙猿の村じゃ無く、君の村らしい名前をね。」


「あぁ、名前かぁ・・・苦手なんだよな。まぁ、考えておくよ。」



 家に戻って風呂を沸かす。

 トゥミはまだ寝ていたが、サラが起きて身支度をしていた。

 おはよう!と挨拶をしたら、少し赤くなってはにかみながら、オハヨ♪と返してくれた。無性に愛しくなって、ぎゅ~~っとしてチュッとした。


 また頭の中で、指輪の声が聞こえる。

『異界の指輪』の声?‥‥‥サラが認めてくれたか。


 サラに認められたので、新たな機能を解放!‥‥

 水魔法を解放します。


 よし!魔法の解放は嬉しい!これで回復と水だから、癒し系が多いね。


 サラが不思議そうな顔して見ているので、もう一度チュッとして、風呂沸いてるから入ってお出で!と、風呂に行かせてから朝飯の準備に行った。


 今日からまたフルメンバー以上に人員が増えている。

 朝飯はどうするんだろう?と迎賓館厨房に見に行った。

 カレンとワフスリとジーワンが顔突き合わせて、どうしようか悩んでいた。


 ん?どうしたんだ?問題か?

「あ、真悟人。あのね、人数増えて調理器具が足りなくてどうしようかと?」


 しまった!準備した調理器具を出すのを忘れていた!

 倉庫に搬入して貰った後、移動させるのにアイテムBOXに入れていたのが失敗だったな。

 直ぐに寸胴鍋や中華鍋やお釜や包丁、お玉などの調理器具を出す!


「ちょっ!ちょっと!今、大量に出されても困るって!」


「あっ。すまん。‥‥取り敢えず、今必要な物を言ってくれ。」


 言われた通りの物を順に出して行く。

 今朝のメニューは、スープとパンと肉入り野菜炒めだそうだ。

 俺も何か作ろうか?と提案したが、もっと時間のある夕飯の時にしてくれと追っ払われてしまった。


 しょうがないから、厨房の隅に残った道具を出して、洗って並べて置いた。

 後は、厨房の調味料庫を確認して減っている塩、胡椒などを補充した。


 食器も大量にあるので、端っこのシンクで洗っていく。

 さっき道具と一緒に洗えば良かったじゃん!思いながらも、片付ける棚との相談もあるので全部は出せなかった。が、


「あっ!丁度いい食器がある!」


 と、洗った順に持って行かれて、一気に忙しくなった。

 こっちを先に出せば良かったね。



 厨房を後にして、ワフワンの所に行った。

 布や裁縫道具を出そうと思ったのだ。

「ワフワン居るか?」


「主、どうしました?」


「こないだ仕入れた布なんかを飯の後にでも出そうと思う。時間あるか?」


「了解しました、主。倉庫係のビーフォとビーファイも呼んで置きます。」


「ほう、今はあいつらが倉庫係なのか?」


「自分たちで大掛かりな棚を作って、何がどこに在ってどんだけ残ってるのか?あの二人に聞かないと今は分からないですよ。」


「そうかぁ!今度、褒美でも出してやるか?」


「そうですね。喜びますよ。‥‥ただ、ちょっと変態ちっくな物が好きなので、その辺が玉に瑕ですね。」


「変態ちっく‥‥例えば?」 コソコソと小声になってしまう。


「例えば、女性の下着とか?‥‥」


「あぁ~~~!そりゃ女性からしたらイヤだろうなぁ!」


「あいつらも嫁でも貰えば変わると思うんですが。」


「そうだなぁ‥‥(ワフワン、甘いぞ!男の性癖はなかなか奥深いもんなんだ。嫁貰って収まれば御の字だぞ?‥‥言えませんが)‥‥誰かイイヤツは居ないのか?」


「なかなか難しいですね~。昔と違って強ければモテる訳じゃ無いですよ。」


「じゃあ、ボスなんかモテモテだったのか?」


 あ‥‥やばい!要らぬ話題を振った。‥‥しかし、遅かった。


「あいつは‥‥当時はイケイケで、ワフスリまでは皆納得してたけどね。最近、主の側近で、またモテる様になったからって、イイ気になってるんですよ!主からも一言言ってやって下さい!」


「あちゃ~~。ダメなパターンやん。そう言えばボスの子供ってまだ居ないのか?」


「居ませんよ。アッチふらふらコッチふらふらで、お前は何やってるんだ!?って感じですね。」


「お、おぅ、俺からも言っておくわ。‥‥」


「主!お願いしますよ?」


「お、おぅ。んじゃ、飯の後に‥‥」


 あぁ~~~!一番首を突っ込みたくない話題に入っちまった!

 自業自得なんだが、まぁ、ボスには一言、言っておこう。今シーズンに子供作れって言っておくか。


 トゥミが、他の皆を嫁にする気がないのはダメ!と説教してたのもココに繋がるのか‥‥

 そりゃ他に嫁は要らないなんて言われたら、トゥミ自身の存続問題と言う訳かぁ。

 考え無しに話して、ゴメンよトゥミ。


 今回、サラも嫁にした訳だから‥‥指輪は次回の帰還時としても、他にいくつか用意した方が良さそうだな。

 俺の左手、指輪だらけになったりしてぇ~~‥‥‥笑えない。


 朝飯前に朝礼をする。

 なんか久しぶりだね。


 今回、仲間に成ったメンツを簡単に紹介して、今は収穫期真っただ中で、皆忙しいだろうがよろしく頼むと。

 後、もう一つ報告がある。


「サラを嫁に貰います。」


「「「「「「「「「「‥‥‥‥ウ、ウォォォォォォォォーーー」」」」」」」」」


 歓声が上がった。やはりサラは真っ赤である。


 朝礼が終わって、朝飯を食う。

 エルフ娘たちは今まで固まって食っていたが、今は、トゥミとサラが俺の横で食っている。ちょっと無表情な感じのエルフ娘たちのオーラが怖い。‥‥

 逆にトゥミとサラは妙ににこやかで、女の怖さを垣間見た気がする。


 飯が終わって、ボスを呼ぶ。

 見知らぬ牙猿♀がボスに着いて歩いていた。‥‥ワフワンの言ってたのはコレかぁ。流石に公の場ではマズいぞ。

 ボスにその話題を振ると、困って大汗をかいている。


「ボス、攻めてる訳じゃ無い。男として痛いほど分かる。ただな、嫁を増やすには自分の気持ちだけじゃない。嫁たちが了承するかだろ?」


「主、分かります。分かってるだけに困ってるんです。」


「ワフワンが言ってたぞ。自分達にはまだ子供が居ないと。これで新しい娘に子供でも出来たら、ぶち切れるぞ?」


「はぁ~~~~~・・・・そうですよね。」


「俺の希望としても、ボスには子供を作って欲しい。出来たらワフワン達と。」


「はい。主の言ってることは分かります。」


「最近は、やってないのか?ワフワン達とは?」


 下世話な話題になって行く。


「まぁ、なんか、ついおざなりになってしまって」


「中折れしたりとか?」


 ギクッと肩が揺れた。

 倦怠期じゃねーか!

 前みたいに本能だけでイケイケな訳じゃないんだな。

 ふぅ~~。例えば、‥‥耳貸してみ?


 例えば・・・・ゴニョゴニョ・・・3Pとか4Pとか・・・ごにょごにょ・・

 口で、とか、ごみょごにょ・・・69とか、騎乗位とか・・・・・・・


 ボスは真っ赤である。

 お前の心に突き刺さるものを試して見ればいいんだよ!

 でも、痛いのはダメだよ。痛いのはダメだからね!


「分かりました!主の助言に従って試して見ます!」


「あぁ。検討を祈る。」


 互いにサムズアップ!



 それから、しばらく、ワフワン達が妙に機嫌が良い。

 俺のトコにきて、


「主がボスに言ってくれたんですね。あたし達をちゃんと大事にしてくれる様になりましたよ。」


「そりゃ良かった!でも大したことは言って無いぞ。」


「いいんですよ。ボスが良くなってくれれば‥‥でも、主、あんまり変な事教えないで下さいね。逆にあたし達が壊れちゃいますよ。」


「は?‥‥あ、ああ。分かった。程々にしておくよ。」


「主、ありがとうございました。」


「いや、仲良くやってくれ。」


 あいつ!どんだけ頑張ってんだよ!

 まぁ、仲良き事は良き事なり。


 頼むぞ、おい!



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