第42話 村に帰って‥‥

 首を飛ばしたオークをアイテムBOXにしまった後、何食わぬ顔して皆の所に戻った。ボスとアルファは気づいたらしく、2人共頷いていた。

 うん。それで良い。何も言わないで良い。


 オーク達は彼らの村に帰ってもらう。

 その為にリーダーを選ぶ。

 これも、オーク達から聞き取った内容から選んだ。

 人格的に穏やかで理性的な者。統率力などは段々と付いてくるかな?


「デュロック?っていうのか?」


「は‥い。言葉、--まだ、--不自由‥です--が、」


「仲間とのコミュニケーションに不自由は無いんだろ?」


「はい、--大丈夫--です。」


「ヨシ、じゃあ今からお前がリーダーだ。皆纏めてお前らの村に帰るぞ。」


「!!!!わ、たし、-が、リーダー?」


「皆を纏めろ!すぐ出発するぞ。」


 デュロックは慌てて駆けて行った。

 皆に、俺に言われた事を説明してるらしい、それに反対する奴は居ないようだ。


 シャマルはワフスリと一緒に先に帰すつもりだが、シャマルが拒んでいるそうだ。

 何だろなぁ?聞いて見るか?


「シャマル。帰るのを拒んでるそうだな?」


「はい。最後まで見届けたいです。」


「何でまた?確かにお前を狙ったんだろうけど、お前に落ち度は無いだろう?見届ける必要は無い筈だが?」


「確かにそうかも知れないです。それでも、私が引き金になったのなら最後まで見届けたいのです。」


「そうか、それを見るオーク達はどう思う?巻き込まれた彼らは決して好意的な目で見ないだろう。落ち度は無くても第三者はそうは見ないぞ。それを纏める者達も嫌な思いをするだけだ。自分の思いも大事だが、他人の思いも考えた方が良い。」


「うっ‥‥‥わ、分かりました。大人しく帰るです。」


「あぁ、聞き分け良い子は好きだぞ。そうした方が良いだろう。」


 思わず、頭を撫でてやった。

 ビックリした顔をしてたが、大丈夫だろう。


「ワフトゥ、ワフスリ。頼む。」


「「主、了解しました。」」


「アルファ。魔狼達も一緒に行け。俺が戻ったら今後の話をしよう。」


「‥‥真悟人殿。分かりました。」



 ボスとデュロックが引き連れて、オークは村に帰って行った。

 オークの雌たちはワフワンが面倒見ている。


 村が見えてきた。

 意外だったのは、ちゃんと畑などがあって、自給自足の生活をしている事だった。

 前の王が作り上げて、息子が壊した。

 私利私欲に目が眩んだ側近を取り立てて滅亡に向かう。

 何処の世界でもありがちな話だが、巻き込まれる方は堪ったもんじゃない。


 あのイライラは、日本の頃の自分を思い出していたのかなぁ??

 そんな事を思った。


 デュロックに今後の事を話した。

 今まで通り、自給自足が復活できるのか?足りない物は何か?

 欲しい物があれば、取引に応じる事が出来ると話して、当面で必要な塩や食料を渡してやった。オークの皆は、辛い生活が長かったからと泣いて感謝をしてくれた。

 その辛い生活を乗り越えてきたんだ。これからも乗り越えて行けると話して、

 今後の為に生活の仕組みを考えておけと宿題を出した。


 生活の仕組みと聞いてピンと来ないようだったが、皆が食えるように仕事などを回していくことだと教えた。




 同じことを繰り返さないように、偶に見に来ると伝えて帰路に就く。

 自分自身も慢心してると同じような事をするのかも?と、怖くなって、気を引き締めようと思った。

 些細な事から目が眩んで行くのかも知れない。



 牙猿村に帰った。

 トゥミ達とワフトゥ、ワフスリの牙猿達と、アルファやシャマルの魔狼達も、皆で迎えてくれた。


「トゥミ、サラ、シャル、ユナ、カレン、----ただいま。」


「「「「「お帰りなさい。」」」」」


 ほっこりした。

 帰りを待っててくれて、迎えてくれるってイイね!


 トゥミ達にオークの話をしてやった。

 王が国を作り上げたが、息子が壊した話を‥‥‥

 そうならないように、俺も気を付けるが皆も気付いたら俺を諫めてくれ。

 そんな話をした後は、村の事をしなければ!

 考えて見れば日本に帰った後は、放牧場の充実のために牛の姐さん達をスカウトして、魔狼の姫を助けに行って、結果的にオーク達を悪政から救った?のか?


 先ずは、魔狼達をどうするか?‥‥‥?どうするも何も皆さん馴染んでいらっしゃる。牙猿と犬猿の仲?だったんじゃないの?

 和気藹々とやってますが・・・


「アルファ!」


「おお!主!帰って来たか!」


「あ、主? はい?」


「今回、我等は真悟人に大変に世話になった。そして皆で話したのだ。真悟人が認めてくれるなら、主としようと。そうすれば、我等もボス達と対等に暮らせる。一応先輩は崇めるがな!」


「主、そう言う訳です。魔狼達もここで暮らせれば我等も安心です。」


 ボスがそう言う横を、牙猿戦隊が魔狼に跨り駆け抜けていく!


「お?なんだあれは?」


「我等の若いのと牙猿戦隊?が意気投合しおってな。同じ色の服を着て山野を駆け回っている。互いに良い刺激になって訓練に励みが出るんだそうだ!---後、戦隊達は、彼奴等にキャラメルをやりたいと言ってたが?何のことだ?」


「あぁ~~~‥‥そう来るかぁ?そう来るよなぁ!」


 何の気なしにあげたキャラメルだったが、ここまで引きずるとは思ってなかった。

 大体、あんな効果があるとは思わなんだよ。

 あいつ等、俊敏のクッキーも食ってるから、平地すら魔狼達といい勝負をしている。

 牛達にもキャラメル食わしたしなぁ・・・


 ボスがニヤニヤしてみている。

 相変わらずの怖い顔だが、イラっとしてデコピンしてやった。

 うおぉぉぉ!と額を押えて、なんで?なんで?と言ってるから八つ当たりだと言ってやった。---そんな理不尽なぁ!と涙目で訴えるので、ちょっとスッキリしたのは内緒だ。

 アルファが可哀想な目をしてボスを見ているので、ボスへの八つ当たりはここまでにして、魔狼の皆を集めさせた。


「魔狼の皆はお疲れ様でした。」


「「「「「「「「「「お疲れ様でした~(です)」」」」」」」」」」


 シャマルも一緒になって叫んでいる。お前が一番お疲れだったろうに。

 今は魔狼の姿なので、カワイイ子犬だが、あの可愛さに負けてモフろうもんなら、嫁一直線な気がして、頭を撫でるに留めた。

 それでも満足気だったのでヨシとしよう。


 しかし、魔狼達も片言だが喋れるらしい‥‥口の構造上、犬類は喋るの出来ないと思ってたが‥‥アルファと話してるのに今さらだよね!違和感なく喋ってたぜ。


「アルファから話は聞いた。魔狼の皆もここで暮らすと言う事で良いんだな?」


「「「「「「「「「「ハイッ!主!」」」」」」」」」」


「うん。良い返事だ。では、ここでの仲間の証として、コレを食ってくれ!」


 そう言ってキャラメルを剥いて、一つずつ口に入れてやった。

 ・・・・・その後はしばらく遠吠えの大合唱だったが‥‥やはり忠誠心爆上がりで、怖いくらいだったのだが、牙猿達が主の素晴らしい所は!とか語りだして、そそくさと逃げた!

 戦隊は、牙猿魔狼戦隊となって、機動力も何もかもが恐ろしい状況だが、今度名前でも付けてやるか?と、悪い事を考えている。


 ニヤニヤと悪い事を考えながら家に帰って来た。

 トゥミが出迎えてくれる。

 心がフワッと優しい気持ちになった。

 ぎゅっとして、チュッとしたら、サラが居るのに気付いた!

 不意打ちでアワアワしてしまった。


 そういえば、トゥミにはキャラメルあげて無いな。それでも慕ってくれるのが嬉しくて、ちゃんとトゥミにもあげて置こうとキャラメルを出した。

 しかし、トゥミはフルフルと首を振り、


「私は要らないよ。有っても無くても変わらないよ。」


 その言葉に感動していたら、サラが、


「ううん。トゥミ違うんだよ。旦那様の事、好きなのは変わらないけど、もっと深く好きになれるよ♪全然違うんだよ!」


 なんかヤバい薬みたいじゃねぇか!トゥミもそこで悩まなくても良いから!


「真悟人?やっぱり私も貰って良い?‥‥」


 ダメなんて言えない、言える訳が無い。

 キャラメルを剥いて、口に入れてやる‥‥指ごと咥えられてゾクッとした。


 その後は‥‥‥トゥミの気持ちのままに、精一杯に答えた。

 横でサラが見てるのも忘れて‥‥


 その後は‥‥‥サラの気持ちにも答えて往く。

 優しくゆっくりと。初めてサラと繋がった。愛しい気持ちが大きくなって往く。


 次にまたトゥミと‥‥‥

 次にまたサラと‥‥‥


 次に‥‥次に‥‥


 明るくなるまで続けた。

 俺って‥‥こんな奴だったんだ。知らなかったよ。


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