第41話 オーク

 俺のイメージでは、オークは二足歩行の豚。

 繁殖のために他種族の♀を襲って攫う。

 戦闘狂な脳筋で怪力だが、頭は余り良くない。


「主、大体合っています。肉は少々硬いですが、割りと美味いですね。」


「割と美味いのか‥‥で、何処に住んでんだ?」


「東の奥の山だ。我等は東の山から草原にかけて縄張りにしてるが、奥の山から偶に出て来て我等と衝突する。適当に狩っていたが、

 今回、大規模に移動していて、姫が見つかった。という訳だ。

 大体、我等の10~20倍の数は居る。アレでは太刀打ちならん。」


「東の奥、東北の山か?」


「うむ。」


 日本であれば、空港の方か?他に何か在ったかな?

 ずっと北に向かえばお寺があったか。オークに繋がるようなもんは無いな。


 じゃ、行ってみようか?

 相手が相手だけに、女性たちはお留守番。

 すっかり影の薄くなってしまった、エルフ反乱軍の面々にもオークが攻めて来たら肉の盾となれ!と、言っておいた。


 火のグッチは、俺らの力を侮るな!と言ってイキッていたが、期待してるから頑張れっ!て言ったら複雑な顔をしていた。


 そうやって出てきたが、途中途中でオークの斥候らしき奴を見かけるのだが、見つかった途端に一目散に逃げていく‥‥‥あれで良いのか?誘い込んでるつもりか?判断付かないから(マヌケ過ぎて罠にもならん)誘いに乗ることにした。


 狩ろうとしても逃げるし、遠巻きに見てるだけなのでウザいし、段々イライラしてきた!

 牙猿達は機動力を生かして、木の上から辺りを確認していて、魔狼達は懸命に姫の痕跡や匂いがないか探している。

 万が一、捕まるような事があれば気配や匂いを消す必要は無い。

 だから捕まってないと考えたいが‥‥


 ボスとアルは俺がイラついてるのをまぁまぁと宥めてくれるが、イラつくのはしょうがない!挑発なのか、罠なのか、バカなのか?


 ちょっと真面そうな斥候?に、

「おらぁぁぁ~~~!!!」と叫びながら追いかけたら簡単に捕まえた。

 何をしたいのか聞いたら、下っ端は会話できないらしい。


 パクパクしてるし、漏らしてるし‥‥

 捕まえただけくたびれ損?みたいな?

 次捕まえたら、食ってやる!と言って逃がしたが、泣き叫びながら逃げて行った‥‥


 イライラがピークに達したころ、本隊らしき群れを見つけた!


 もう、我慢が出来なかった。自制出来なかった。後先考えなかった。


「うらぁぁあぁぁああぁあぁぁぁーー姫を返せーーーー!!!!」


 100以上は居る群れに『剣』と『造林鎌』で、殺すな~~~!!と言って突っ込んで行った!!‥‥‥後はよく覚えていない。


 気付いたら、アルファに踏みつけられて泣き叫ぶ着飾ったオークに『根切鋤』を突き付けていた。

 冷静になって、後先考えずに飛び出した自分を思い出し、

「‥‥‥やっちまった‥‥‥ぶち切れちまった‥‥‥」


 止める間もなく飛び出した主の動きを見て、

「主‥‥まさに獅子奮迅のごとく。我等の主は恐ろしいお方だ‥‥」


 着飾りオークを踏みつけながらも、

「わぅぅぅぅ‥‥我としたことが、なんの役にも立てていない‥‥」


 それぞれがまったく違う事を考えていた。


 周囲では、倒れて呻いているオークが多数、転がって居て、牙猿と魔狼が偉そうな奴から順に集めて整理していた。


 さて、着飾りオークの尋問タイムである。

 こいつはなんでこんなビラビラした鎧もどきを着てるんだ?作った?とは思えないから、どっかの王侯貴族を襲って奪ったか?


 気を取り直して復活したアルファが、着飾ったオークを問い詰める。


「我等の姫をどうした?どこかに隠したか?」


「姫?し、知らない。関係ない。」


「隠し立てするか!?その命を削って聞いても良いのだぞ?」


「し、知らないんだ。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ボス‥‥‥」


 ボスは、周囲で捕まっているオークの中でも、真面そうな?偉そうな奴を引っ張ってきて状況を聞く。

 何頭かに同じように聞いて情報をつなぎ合わせる。


「主、この群れは確かに魔狼の姫を捕まえるために行動していたようです。しかし、どうしても姫の行方が分からず、我等の動きから測ろうとしたようですな。」


「と、言うことは姫はまだ捕まって居ないということか。」


「さて、お前の名は?‥‥」


「ふん!人間ごときが気安く口を利くな。」


『根切鋤』で黙って牙を砕いてやった。


「ぶぎゃっ!!」


「名を言え。」


 反抗的な目で口を利かない。


「ボス。身包み剥いで張り付けてやれ。」


「何をする?止めろ!馬鹿者!」


 こ汚い豚が転がっている。


「名は?」


 悔しそうに睨み付けているので、右手首を切り落としてやった。

 側近だった豚に、食え!と言ったら、泣きながら奴の名を言っている。


「お前に聞いてない。」


 右足首を落としてやった。

 次の側近に食えと言ったら、食いだした。


 こいつ等は王子と上位5頭くらいで群れを率いていたらしい。

 恐怖政治で反論は許されない、絶対的な暴力で支配していたと聞いた。

 実際に下位の者は、見るに耐えかねる傷を負って居るものが多い。


 上位5頭はプライドも高く反抗的だったが、段々と仲間を売るような言動を見せ始めて、食えと言われれば食うような従順さを見せ始めた。


「誰が姫を攫おうと言い出した?」


 聞き込みで分かっているが、上位5頭中4頭が王子だと言った。


「何で王子なんだ?」


 今迄群れを率いていた王が居たらしいが、息子の王子が下克上をしたらしい。

 下位の者に聞いた所、前の王は立派な統制を取っていた様だ。

 だからこそ群れも大きくなったが、今では逃げだす者が後を絶たない。

 捕まって殺される者も多いが、それでも逃げ出す者が多いとの事だ。


 どうしようもねぇな。

 王子と上位5頭。‥‥逃げられないように大腿骨を粉砕した。

 残りのオークの群れは80頭くらい。オークに雌も居るのは初めて知った。

 傷だらけだ。どんだけの扱いを受けたのか‥‥仲間にする仕打ちじゃない。

 雌は5頭居る。直ぐに回復魔法をかけてやった。使い慣れていないが、掛けないよりは良いだろう。雌たちは泣いていた。


 オークの村は何処に在るのか?ここから歩いて一日くらいの所らしい。

 わざわざ、姫一人捕まえるのに全員率いて移動する。バカの行いでもバカ過ぎる。

 残して置くには、信用できなかったのだろう。


 一般のオーク達は従順に反応する。

 中には、助かったと涙を流す者まで居るくらいだ。

 彼らはもう逆らったりしないだろう。食事を振舞って休ませる。


 牙猿を伝令に帰して、ワフワン達を呼びに行かせた。

 トゥミ達には刺激が強すぎるだろう。


 ボスとアルファと相談して処遇を決める。

 まぁ、王子筆頭に上位の者は皆殺しですが、まだ姫が見つかっていない。

 ワフワン達が合流してから捜索再開だな!



 思っていたら、意外な結末が待っていた。



 ワフワンが到着したら、犬耳の娘を抱えていた。‥‥‥


「は?その娘は?」


「姫!!!!ご無事で!!」


 なんと!村に居たらしい。

 スライム先生の所で寛いでいるのを発見して大騒ぎになったとか。

 灯台元暗し!先生の所とは!‥‥考えて見れば、まず先生に聞いて見るべきだった。

 話を聞くと、逃げて逃げて隠れていたら、スライムに会って先生の所を教えてくれたとか。順にスライムを辿って行ったらスライム先生に会えたんだそうだ。

 見た目は10歳前後の女の子。犬耳で犬尻尾がある。


 こんな娘を嫁にしようだなんて、許すまじ!更に残酷な裁きをしてやる。


「あの、今はこんな成りですけど、魔狼のシャマルです。今回はご迷惑をお掛けして申し訳ありません。それと、アルファ達を助けてくれてありがとうございます。このお礼は必ずしますので、もう少しだけ手をお貸し下さい。」


 膝を着いて、視線の高さを合わせて、

「人間の真悟人です。大変な目に合われましたね。幸い捕まらずに助けられて良かった。もう大丈夫ですよ!悪い芽は摘んでおきます。今後はこの様な事はないでしょう。」


「はい。ありがとうございます。怖かったですが、貴方に会えて良かったです。」


 ん?まぁ、深く考えないで置こう。

 アルファがおいおいと泣いているが、後は任せておけば良いだろう。


 ワフワン達には、雌と若いのを任せてボス達には残りの全員の世話を任せた。

 後は、上位達の処遇だが、もうこいつ等にかまけている時間が勿体ない。

 皆が見てないうちに始末してしまおう。


 俺が近づいて行ったら騒ぎ出しそうだったので、『剣』で順に首を飛ばす。


 最後にした王子は、「な、名を言うから‥‥」と言ってたが、無言で首を飛ばした。飛ばしてから、「聞きたくないわ。‥‥」


 残った死体は、全てアイテムBOXに放り込んでおいた。







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