第40話 魔狼

周りから冷やかされながら、草原を進んで行く。

サラは逆に喜んでる節さえあるな?それはそれで、こそばゆいもんだね。


そんな時にビースリと護衛達が到着した。

往復したのにメチャクチャ速いな!労いの言葉を掛けようとしたら、


「主!、ボス!戦闘態勢お願いします!」


一気に緊張状態になった!

ボスがビースリに状況を聞いている。


「草原狼か?」


「‥‥魔狼です。何か探しているようで、我等が草原に居るのを不審がって絡まれそうでした。」


「厄介なやつらだ。」


ボス、報告を。‥‥



「皆!魔狼が来る。子供は中に!外に雄牛たちで囲う!その周りをボス!」

「‥‥頼むぞ。」


「主、お任せを!‥‥皆の者!主のために!我等の力示して見せようぞ!」


「「「「「おおぉぉっっ!!」」」」」


「ちょっと真悟人とやら!魔狼の群れを牙猿とはいえ7頭くらいじゃ大変、」


「牛の姐さん。大丈夫ですよ!彼らの力を、俺らの力を信じて下さい。」


「バカだね!違うよ!あたし等も戦うって言ってんだよ!伊達にこの草原に生まれ育ってないよ!ちゃんと角だってあるんだよ!」


「皆ぁ!牙猿のサポートって簡単なお仕事だぁ!抜かるんじゃないよ!!」


「「「「「「もぅ~~~~~~!!」」」」」


「さぁ、いつでもお出で! ボス!頼むよ!」


「牛の姐さん。我等に任せてくれ!絶対に守ってみせる!」



遠くから遠吠えが聞こえる。

段々と近づいてくる様だ。

俺は、キャラメルを出した。

「サラ!子供たちにこれを!」


「えっ!真悟人!これ?いいの?」


「緊急事態だ!出来ることはやっておく。」


「何だいそれは?」


「知恵の種!、万が一でも子供達が生き延びられるように!」


「バカだね!そんな万が一何て来ないよ!。」


「ハハハッ。俺は、心配性なんだよ。」


「もぅ~~~!しょうがないね!子供ら、食っておきな!」


キャラメルを食った、子供たちは。


「「「「もぅ~~~~~~!!おじさん!もっと右だよ!配置は良いけど穴が多いから機敏に反応しないと突っ込まれるよ!‥‥うんぬんかんぬん」」」」


「真悟人、何食わせたんだい?」


「キャラメル。」


「なんだいそれは?」


「お乳を大量に煮詰めて塊にしたもの。‥‥食ってみ?」


責任放棄?そんな気がするが牛の姐さんにもキャラメルを食わせた。‥‥


「よぉぉーーーーーし!!真悟人に付いて行くよ!!皆ぁ!真悟人からキャラメルを貰いな!」


あ~~~。こうなるよね。

ボスがニヤニヤしてる。‥‥だからその顔怖いって!

全員にキャラメルを配った‥‥あれ?サラも食って無かったか??


「真~悟人♪んふふ!そういう事かぁ。これはトゥミは食べたの?」


「い、いや食ってないが‥‥」


「そーーかぁ!真悟人♪私の旦那様♪私に任せてね!」


「う、うん。」


反論は許されない雰囲気で頷いておいた。



「来た!!」


狼が来た。ゆっくりと周りを取り囲んでいる。

この世界で初めて見た犬。デカい!肩の高さで俺の肩に届くか?

結界をゆっくり、いつでも発動できるように準備しておく。


一際デカい狼が吠える。


「牙猿風情がこの草原に何の用だ?答えによっては無事に返さぬぞ!」


俺が反応しようとしたら、サラに抑えられ、


「牙猿風情とは何事か!お前らは草原を移動してるだけの牛の群れを襲う盗賊か?」


サラが狼たちに反論した。


「ほう、エルフが牙猿の味方をするか?差し詰め人質でも取られたか?」


「はん!魔狼風情の頭じゃそんな事しか考えられないだろう!」


「なんだと?我等を愚弄するか?」


「私たちは真悟人様の元、この先の世界のために集っている。それを邪魔するようなら容赦せんぞ?」


「は?この先の世界だ?」


「その通りだ!今、真悟人様は我等エルフを従え、牙猿達を従え、草原の牛達も従えた。この事実を魔狼は理解できるか?」


「おぅ!我等牙猿は真悟人様に従っている。真悟人様の為なら最後の一兵卒となろうとお守りする!!」


「もぉ~!!あたし等も真悟人に付いて行くよ!襲うなら最後まで抵抗してやるから覚悟しな!!」


「う、むぅ、‥‥」


まったくの予想外の反応と、真っ向からの敵対で反応に困っていた。

そんな中から、まったく戦えなさそうなひょろッとした男が出てきた。

『剣』が何故か空中に浮いている。


「人間の真悟人だ。お前らはなんだ?挨拶位出来ないのか?」


「うっ‥‥魔狼と呼ばれる種族のアルファだ。」


「おぅ。そのアルファが俺らに何の用だ?狩ろうと思うなら、どっちが狩られるか分かるだろ??」


『剣』がいつでも切り裂ける様に刃を向ける。


「クッ‥‥我等の姫が行方知らずになった」


「アル様!それは!」


「うるさい!ここで抗えば我等は皆殺しよ。更に姫も見つからぬ。」


「どういう事だ?魔狼の姫が行方知れずなのか?」


「う、うむ、我等魔狼は草原には余り出て来ぬ。草原狼に任しているからな。山は牙猿との縄張りが厳しいので中々捜索が出来ぬ。だから草原から順に捜索しているのだ。」


「なんだ。そんな事か。」


「そんな事とはなんだ!?我らが姫‥」

「任せておけよ!」


「な?なんだと?」


「山じゃ牙猿達の機動力は最高だぞ?」


「なぁボス。」


「主、山の捜索ならお任せを。」


「草原なら、なぁ姐さん。」


「そうだねぇ。草原で知らない事は殆どないねぇ。」


「だったら、多分姫さんは山なんじゃねぇか?」


「う、うむ、しかし‥‥」


「ただじゃねぇぞ!探してやるんだ。それなりの見返りは必要だろ?」


「な、何を望む?我らに金品の持ち合わせはない。」


「な~~~に言ってんだ?魔狼ってのは草原の覇者なんだろ?だったら俺らは襲うな。俺らに繋がるものは襲うな。それが見返りだ。」


「そ、それで良いのか?」


「おぅ!それが大事なんだよ。俺らが襲われずに安心して暮らせるのが大事なんだよ。でもな、破る奴が居たら全力でお前ら皆殺しだ!子牛1頭やられたら、絶対に容赦しねぇ!覚悟しておけ!俺らを舐めたら思い知らせてやる!」


ボスもサラも、その場に居る全員が固まった。

絶対に逆らってはいけない。

普段とはまったく違うオーラに息を呑んだ。


「ボス、魔狼の姫ってのは探せるか?」


「無防備に居れば分かりますが、隠していれば分かりません。」


「そうか。魔狼達は牙猿達と行動を共にする事は可能か?」


「なっ?我等を宿敵の牙猿の下に付けと?」


「下に付けなんて言ってねぇよ。一緒に行動することは可能か聞いてんだよ。」


互いに少々決まり悪そうな顔をしている。


「なんだ?お前ら宿敵なのか?」


「はっ‥‥」


「うっ‥‥」


「そうかぁ!犬猿の仲だもんなぁ!」


「んじゃ、一番早く見つけた魔狼、牙猿チームにご褒美出そうか?」


「おぉ!!」


「そ、それは一体?」


「牙猿と魔狼で組になって一番早く見つけた奴にご褒美だすんだよ。」


「協力出来なきゃ見つけられないだろう。同じ目的で協力できるかの試練だな。」


「試練だと!我らは‥「そんな事言ってる間に皆出て行くぞ?」」


「あっ、「アル!行くぞ!」」


ボスが魔狼のアルファを強制的に連れて行った!



皆が捜索に行ってる間に少しずつ進んで行った。

しかし、捜索は上手く行かなかった。

山の捜索が終わる頃。牛達も俺らの草原にたどり着いた。

トゥミが出迎えてくれるが、魔狼たちが居るのを見て顔が強張っていた。


「なに?真悟人、どういうこと?」


「あぁ、色々あってな、詳しい事は後で説明するよ。先に牛の姐さん達を小屋に案内してくるわ。」


牛の姐さん達にバタバタしてるのを詫びて、小屋などを案内する。


「なんだい、予想以上に良い所だねぇ。」


「そうかい?気に入って貰えて何よりだ。」


「さっきのエルフの娘が嫁かい?」


「ああ。後で紹介するから宜しく頼む。」


「楽しみにしてるよ。」


牛達の食事を用意させて、好きにしててもらう。今は魔狼の姫を探すのが先決である。

牛達も手を貸すと言ってくれたが、山の捜索がメインなので、気持ちだけ貰っておく。


牙猿の飯と魔狼の飯も準備する。

真悟人達が戻って、牛達を連れているのは兎も角、魔狼まで居るのに騒然となったが、真悟人とサラが状況を説明して場を鎮めた。

トゥミはサラに何か聞きたそうであるが、二人に任せて見ない振りをした。



食事の後は作戦会議をする。


ボスとアルから。

「我等は南西の森から南方面を捜索。手がかりは無し。」

ビースリと魔狼No2

「我等は南西の森からそのまま西へ。手がかりは無し。」


そうやって、順に捜索した場所を開示していく。

俺はこの辺の地図を大きく書いて、捜索した場所を表示していく。


「魔狼達は、匂いはどうなんだ?」


「姫様は隠蔽のスキルを持っておられる。匂いも気配も遮断できるのだ。だから我等も見つけられないでいる。」


「だいたい、なんで姫様は逃げたんだ。?」


「うぅっ‥‥‥」


「あ!いやいやなら言わないで良いよ?‥‥」


「‥‥‥姫様は、ヒト型になれる。その姿を見たオークの王子?なんだかが是非にと所望してきたのさ。」


「オーク?そんなの蹴散らせないの?」


「主、あいつ等の一人一人は鼻に掛けるほどでもない。それは、魔狼達も一緒であろう。ただ、数が多い。我等の10倍20倍の数の暴力の前には抗えません。」


「そんなに多いんだ?頭を先にやってもダメか?」


「それが可能であれば、とっくに我等も姫の憂いを取り除いてます。」


「あぁ、そんな感じなんだね?」


「今の状況、姫はオークに攫われた可能性もあるって事だよね?」


「よし!じゃあオークに聞いて見よう!」


「はっ?」

「えっっ?」


オークって何処に居るんだ?






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