第39話 プレゼン

「牙猿じゃないか!みんな怖がるんだよ!あっちお行き!!」


 何もしてないのに追い出されそうである。

 捕食者の存在が近くに居るのは許されないと‥‥

 まぁ気持ちは分かるが、真正面から来られると中々反論しずらい物である。


「はいっ!お姉さんは、牛の方々の代表ですか?」


 いきなりサラがホルスタインに話しかけた。ちゃんとお姉さん呼びするとこにあざとさを感じるが。


「エルフの娘かい?あたしらと話せるなんて珍しいね?あんたはなんで牙猿と一緒に居るんだい?人質でも取られたのかい?気の毒だねぇ」


「ボス、エライ言われようだな。」

「主、我等の行いは、理解しては貰えませんから。」


「さっきから何ゴチャゴチャ言ってんだい!出て行くならサッサとおし!」


「お姉さん、私たち、違うんですよ!話だけでも聞いて貰えませんか?牙猿から絶対に危害加えませんから。お願いですよぉ。」


「ボス、ジートゥ、ビースリ、悪いけど下がってて貰えるか?」


「「「はい、主。」」」


「ホルスタインのお姉さん。これで話を聞いてくれますか?」


「へ~~!?あんたが主かい?あの牙猿が従順に言う事を聞くもんだね」


「あの、怖がらせたことはすいません。謝罪します。」


「ああ、みんな敵には敏感だからね。男どもは役に立たないしね!」


「私は人間の真悟人と言います。こちらがエルフのサラです。」

「はい。今度、真悟人の妻になります。サラです!」


 おいおい!更っと爆弾落とすなよ!サラだけに‥‥‥

「‥‥‥」

「‥‥‥」


「すいません。話聞いて頂いてよろしいですか?」


「あ、あぁ。そうだね。何の話だっけね?」


「‥‥‥‥」


「実は、あの山の先の草原に村を作ったんです。」


「へーー!人間がだいぶ進出してきたんだね。」


「それがですね。人間は自分一人で、後はエルフと牙猿なんです。あ!スライム先生も居ますね。」


「‥‥‥それで?」


「草原を放牧場にして、牛の皆さんに住んで貰って余ったミルクを頂けたらなぁ?って思ったんです。」


「ふ~ん、それであたし達には何のメリットがあるんだい?」


「僕は遠い国の生まれで、牛の皆さんの恩恵を受けて育ったんです。生まれて直ぐはミルクの恩恵を受けて、子供の頃からミルクから作るチーズやバターの恩恵を受けて、大人になってもチーズ、バター、ミルクの恩恵を失くしては生きていけません。そうやって僕らは大きくなったんです!」


「そうなのかい‥‥‥その、ミルク、チーズ、バターってのは分からないが、どうやって作ってるんだい?」


「これは、全て牛の皆さんのご厚意で出来てます!まずミルクは牛さんのお乳です。これはそのままじゃ人間はお腹を壊します。良過ぎて人間には過ぎたるものなんですね。だから薄めて飲みます!すっごい美味しいです。

 次はチーズですね。これはお乳を運ぶときに出来ました。熱い時に運んでしまったんです!皆、腐ってダメにしてしまったと嘆きました。しかし袋の中にはミルクの塊が出来上がっていました。これがそのチーズです!召し上がって見て下さい。」


 ホルスタイン♀の口に三角形のチーズを剥いて口に入れる。


「なんだい?これ?ネチャネチャして‥‥あら、塩味がイイ感じで‥‥♪」


「真悟人!真悟人!あれ!食べたこと無いよ?ねぇねぇ。」


「そうだっけ?んじゃ、皆に!」


 いつの間にか牛の皆さんも沢山集まってきました!

 みんなに三角チーズを剥いて口に入れてあげる。


「なにこれ?塩味が良いねぇ。」

「真悟人!これ、美味しい!もっとある?」

「ちょっと臭いけど、悪くはないねぇ」


「どうですか?これが、皆さんが作るチーズです!次にバターです!」


 フランスパンを切って、バターを塗ってサラに手渡す。


「ん~~!これも美味しーーい!こんな美味しいもの有ったんだ!」

「このサクサクした周りも美味しいねぇ」

「ちょっとくどいけど、若い子は好きそうだねぇ」


「子供を育てるのに、お乳を上げますが、飲んでくれないとお乳が張って痛いと思います。そんな時、お乳を頂ければ、ミルク、バター、チーズにしてお乳を無駄なく美味しく皆にと思っています!だから、僕にお乳を分けて下さい!!」


「もうぅ~~。分かったわよ!お乳を分けるのは良いわ。でも、ここじゃ出来ないでしょ?」


「山向こうの草原に住処を作ってます。そちらでは健康にお乳を出すための食事を考えています!」


 米、豆に加えて、芋や野菜類、色々な飼料を出して見た。


「すごい!草だけじゃ無く、芋や豆まで!」


「これは、ほんの一部です。毎日のお食事はお約束します。」


「そして、住環境ですが、「ボス!」」


「はっ。」


 集まった牛たちが騒めいた。


「静かにおし!」


 ホルスタインの姉さんが静めてくれた。


「彼は牙猿のボスです。僕の良き相棒です。」


「主、もったいないお言葉です。」


 やりとりに周りが騒めく。


「ここから住処へ向かうまでと、住処周辺は彼らが守ってくれます。」


「先ほど、お姉さんは、牙猿が居たら安心できないと仰られました。」


「これからは逆です。牙猿が居るから安心してください。」


「彼らが貴女達を絶対に傷つけないとお約束しましょう!」


「僕らの草原に住むことによって、毎日の食事の安定と、外敵から守られる安心感。そして、残ったお乳の痛みからの解放。当然、出産時も守ります。生まれた子供も皆で面倒見ましょう。」

「その見返りは、残ったお乳を分けて下さい。それがメリットと見返りです。」


「もぅ~~~~~~!!ここまでやられちゃ否定しようが無いわ。」

「後は、信用できるかだけね。」

「皆!どうする?ここで少ない草を分け合うか?信じて付いて行くか?よ?」

「男たちはどうするの?」


「男の方たちも来てくれたらと思います。」


「ほ~ら!あんた達も来てイイってよ?」


「もぅ~~~~~~!!俺らはお前達に任すぞ。」


「決まったわ!向こうの草原に移動します!」


「了解しました!すぐ、向かいを呼びます!」


「ビースリ!すぐ向かいを5,6人呼んで!」


「主、了解です。」


「それでは、移動する方々を集めて貰えますか?」


「もう大丈夫よ!真悟人だっけ?やり手ね?お嫁さんは彼女だけ?」


「はい!私は二人目の嫁です。後、3人待ってます。」


「あはは。‥‥それでは出発しましょう。」


 ボスを先頭にして、子牛は真ん中にして陣形を取って進む。

 俺とサラと牛のお姉さんは子牛達の前、殿は雄牛たちとジートゥが務める。


 ぞろぞろと歩きながら、皆世間話をする。

 ボスに話しかける、剛の者(牛の姉さん)も居る。

 俺はサラと、コソコソとさっきの話をした。


 サラ、どうしたの?一気に来たねぇ?

 えへへ♪指輪の小箱で火が付いたの。

 はっ?どういう事?

 だってぇ、トゥミ鈍いんだもん。

 あっ、あ~、ん~、なんとも。

 あんな風に指輪貰えたらすっごい嬉しいと思うんだ。もう、一生尽くすよ?

 あ~、うん。ありがとう。まぁあれもトゥミの良い所ってことで。

 そうね。優しいね?

 いやいや、そんな事ないんだよ。

 そうかな?まぁいいか!

 うんうん。そういう事で!

 それで、何時一緒に過ごせるの?

 ん?それは?何時って?

 だ~か~ら!今晩は一緒に居られる?明日?

 あ!あ~‥‥えーっと。

 私、魅力無い?

 いやいや、そんな事無いよ。とっても魅力的で‥‥ごにょごにょ

 もう!ちゃんと言って!

 うん。俺はサラの事好きだよ。とっても魅力的だし。抱きしめたいと思うよ。

 ‥‥うん。ありがと。(も~赤面するってこういう事?!)

 サラは俺でイヤじゃないの?

 イヤな訳無いよ。嫌なら最初からココに居ないよ。

 そうか、変な事聞いて悪かった。

 大丈夫よ。私も、ねっ♪

 近いうち一緒に居られる様にするよ。

 うん。今日でも良いんだよ?

 ほら、トゥミにも言わないと。

 クスッ!トゥミはもう知ってるよ。

 は?え?どう言う事?

 出掛ける前に宣言したの。

 ‥‥なんて?

 この遠征で、真悟人、落とします!

 おわぁ〜〜‥‥トゥミはなんて?

 頑張って!って。

 そぅかぁ~。一夫多妻の感覚なんだね。

 俺は既にトゥミと夫婦になってるけど、サラはそれでも良いの?

 クスクスッ。今さらね。

 うん。俺の国じゃ無かったからね。

 ここは、そう言うものよ。力のある男の人が従えるもの。

 俺にそんな力があると思えないが。

 何、言ってるの?牙猿従える力のある人なんて初めてだよ。

 そんなもんかなぁ?

 そうなの!もっと自信もって!

 私の旦那様なんだから。ね♪

 そうか、分かった。サラの為にも頑張るよ。

 うん♪よろしくね。旦那様♪



「もぅ~~~~~~!!聞いちゃいられないね!聞いてるこっちが真っ赤だよ」


 周りの全員が聞いていた!

 やっちまった。

 サラと二人、ニヤニヤしてる周りを見回して真っ赤になってしまった。


 穴があったら入りたいとはこの事である。‥‥



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