第35話 エルフの里
火の長老グッチが、トゥミと権力欲しさにクーデターを企てた。
しかし、偶々、里帰りしてたトゥミと真悟人にあっさりと鎮圧された。
失神と失禁という醜態をさらして。
捕縛された彼らは、ヴィトンが入れられていた地下室に入れて、里の皆には沙汰は追って知らせると伝えた。
彼らの犯した罪は、余りにも利己的で、余りにも幼稚である。
では、どんな償いをさせるか、長老たちは悩んだ。
結界と風の長老ヴィトンは、
「殺したくはないが、禍根を絶つには止むを得ないか?」
水の長老プラダは、
「水牢に幽閉?‥‥でも水が汚れるし、生かして置く価値もないかな?」
土の長老ヘルメスは、
「肥えにしよう。あんなんでも役に立つ場所があるよ!」
全員一致で、極刑のようだ。まぁ、当然と言えば当然だが。
トゥミは、「殺しちゃうと目覚めが悪いから嫌なんだけど、旦那様に矢を射かけたし、罵詈雑言を考えると、もう、価値はないかな?」
真悟人は、こいつら容赦ないね‥‥と引いていた。
日本とは余りにも価値観が違うから当然なのだが、禍根を残さないと言うのは、分かる。昔の日本もそういうもんだった筈だ。
「全員で7人か。俺に預けてくれないか?」
「「「「は?」」」」
「持って帰って畑の肥料?」
「毎日、極限まで湯沸かしの刑かの?‥‥儂が欲しいかも。」
「何やらしても水を汚しそうだから、持って行って良いよ!」
「真悟人、持って帰って何に使うの?きっと使い道無いよ。」
「何かしら使い道はあるだろ。ボス達の小間使いからやらせようかな?と、思ってさ。それにエルフは男が少ないんだろ?」
トゥミとプラダが露骨に嫌な顔をした。
「こんな奴らが同じエルフというだけで、水が汚れるわ!」
「帰ってサラ達に危害が行ったらどうするの?反対だよ。」
「この里じゃ、罪人はどうしてるんだ?」
「めったに罪人が出ないから分からないよ。」
「前に罪人が出たのは200年も前かの。何をやったのかは覚えておらんの〜。」
200年振りの犯罪者が国家転覆罪とは!エルフの里の治安が良いのか?教育が良いのか?見習うべきところは見習おうと思う。
取り敢えず、7人の得意な事、聞いて見ようか?
先ず、グッチは火の長老やってたくらいだし、火を使うのはお手のもんだよね?
「目を逸らすのは、使えないからかな?」
「バ、バカにするな!火の扱いに関しては私の右に出る者は居ない!」
「それって、カレンより使えるって事だよね?」
「あ?カレン?‥‥カレンって?‥‥‥‥」
黙ってしまった。
ヴィトン曰く、火の魔法に付いてはカレンが多分一番だろう。と。ただカレンは性格的に料理一辺倒な所があるので、他の事に使うのは面倒臭いらしい。
「あいつって‥‥まぁ、しょうがないか。」
「じゃぁ、グッチはカレン位使えるって事かな?」
フンッとそっぽを向いて、答える気は無いらしい。
周りに居る残りの6人も、我等の誇りが云々と騒いでいる。
「それじゃあさ、何が出来るのか見せて見てよ。」
ボスをチラッと見るとにこやかに頷いている。
お前のにこやかな顔って、多分皆さん恐怖ですよ。言わないけどね。
最初はグッチから。
「火を使えるんだっけ?じゃあお湯を沸かしてみてよ。」
1mx1mx1m=1000ℓを45度のお湯に出来る?
‥‥‥役に立たなかった。
んじゃ、鍋一杯の沸騰したお湯は?‥‥鍋溶かした。
「お前、何が出来るの?」
「なんだ!その口の利き方は?私は火の長老だぞ!ちゃんと敬え!」
思わず、周りを見回して‥‥「こいつ、亡き者にして良い?」
皆、黙って頷いてくれる。
「なぁ、なんでそんなイキってるのか分からないが、自分の立場と現状は分かってるかな?」
「‥‥‥わ、私は!‥‥私は火の長老に抜擢されて、トゥミを娶ってエルフの里の長老のトップになる男だ!‥‥‥だ、だからこんな扱いをすれば、人間のお前など、直ぐに!‥‥‥」
「ん?直ぐに?‥‥直ぐにどうなるの?」
「直ぐに人間など排除してくれる!!」
なんとなく感じていたが、エルフと人間は、かなり確執があるようだな。
やはり、搾取されていたり見下される場面が多いのだろう。
見目麗しいから、女性は捕まって性奴隷とかも在るのかも知れない。
彼を矯正しようとは思わないが、信じて貰わないと話にならない。
だから、人間は仮想敵にして、種族じゃなくてエルフから搾取する商人を敵としよう。エルフを見下す。希少品なのに搾取する。女性を攫う。
全て、人間の商人が悪いんだぁ~~!!
黒幕は置いておいて、そこから始めよう。
「お前の話は分かった。これからエルフの里を豊かにして行く。だから手を貸せ。拒否権は無いがな。」
「人間に、そ、そんなことが‥‥」
「人間の俺だから出来るんだよ。他の6人も得意な事とか聞くから考えておけよ!働かない奴は食わせないからな!」
反乱軍6人が固まった。食わせない?それは、餓死するまで?
痛めつけられるより恐ろしい。死ぬまで食事も水も与えられずに放置?そんな恐ろしい罰を考えた奴は居なかった!一掃一思いに殺された方がどんなに楽か。
「「「「「「はいっ!出来る事考えておきますっ!」」」」」」
お?おぅ。随分従順になったな?
では、こいつらに何をさせるか?
グッチは火の長老だったからそれを生かそうとは思っている。
残りの6人は、護衛の二人と新護衛二人の彼らと同じように、人間の街に行くことが在って、人間に良い感情を抱かなくなったと‥‥分かりやすいね。
今、護衛二人と新護衛二人は人間の街に行商に行っていると。
腕の立つ男でないと、エルフが人間の街に行くのはかなり危険らしい。
彼らは何を売りに行ったのか?‥‥毛皮や農作物らしいが、聞いた値段はかなり搾取されていると思われる。
長老の皆に宣言する!人間に売るなら考えろ!その分俺が適正価格で買ってやる!必要な物はなんだ?ちゃんと適正価格で準備してやる!
そう言って、欲しい物のリストを準備させた。
塩がメインで、他は生活用品である。
今の手持ちで準備できるものは準備した。人間の買取は、輸送費を考えても倍以上の値を搾取されているだろう。
俺が適正価格で売ってやる!だから人間との取引は程々にしておけ。まったく来なくなったら、それはそれで弊害が出そうな気がする。
後は、人間の商人と癒着してる奴も居そうなんで、邪魔してくるだろうから、その辺のあぶり出しも考えないとね。
必要な品を出して、適正価格で交換する。
エルフの女たちはワフワンの着てる服と色に食いついて、トゥミがドヤ顔で説明している。
裁縫道具や布や糸、‥‥これ出して良いのか?思いながらも今さら止められない。超大盛り上がりである。特にワフワンのしてる蝶々結びが大人気で、講習会状態になっている。君たち、あんなに牙猿恐れてたのに、そういうモンですか?
後でトゥミに聞いたら、ワフワンがしてたブラジャーに全員が食いついて、トゥミも脱がされそうになってたらしい。二人で、胸囲とか、カップの説明をして、トゥミが標準とされて、なんか納得出来なかったらしい。
ワフワンは断トツのカップで張りもあり羨望の的だったと不機嫌に教えてくれた。
それも、今後ワフワンが仕切って供給していくことで、皆、納得済と。
希望者は、うちの村に来て、裁縫業務を勉強すると、プラダが嬉しそうに教えてくれた。‥‥てか、あんた、あの騒ぎに交じってたのかい!?
‥‥女として、外せないものがあるらしい‥‥
因みに、ケイトさん(お母さんと言われるのは恥ずかしいから名前で呼べと言われた。)もしっかり交じって、色々仕切っていたらしい。
塩や香辛料は当然として、幹物なども人気があった。
乾燥うどんや乾燥そば、パスタなどの麺類が人気で、レシピを公開しようと思うが、ここでの食い方も教わろうと思う。
保存食というのは、いつでも重宝される様だ。
仕入れの参考にしよう。
今迄は、同じ金額でこの半分も買えなかったらしい。
運んでくる物資も乏しいから、更に拍車をかけた様だ。
アイテムBOXも最初はビックリされたが、出て来る品物の豊富さに更にビックリされた。ただ、ここでは良いが人間の前でその魔法を使うと、絶対に攫われてこき使われるだろうと誰もが言った。
これは、特にヴェルさん(やはり、お父さん呼びは嫌なんだそうだ。)が熱く語っていた。気を抜くと、何処で攫われるか分からないと。そんな有用な魔法を持っているのが知られたら、どれだけの人間がやって来るか分からない!
今、俺の魔法はエルフの里のトップシークレットだそうだ。
心配してくれるヴェルさんに、色々な物資を渡した。
恐縮していたが、今回縁を繋ぐことが出来たお礼だと押し付けた!(笑)
後は、物々交換も受け付けた。
主に毛皮や、採取物である。
中には、大量の肉を引き取って欲しいと言う要望もあった。
獲物を獲っても、家族で消費しきれないが、売りも出来ない場合は腐らせてしまう。だったら配ればとも思うが、仕事としてやる以上はタダで配る訳には行かないのである。
これも相応額の金銭か商品との交換に応じる。
取引が終わった頃には、かなりの額の金銭と品物を入手した。
これで、日本に行ってもそれなりの金額になるだろう。
次に仕入れる算段を付けて、俺らの村に帰ろう。‥‥村の名前、考えないとな。
結局、反乱軍エルフ男7人と、裁縫留学エルフ女3人で牙猿村へ帰る。
考えるのが面倒くさかったので、トゥミに丸投げしたら、牙猿村にした。分かりやすいでしょ?えへ♪ だそうです。
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