第33話 今後の生活

 牙猿遷移隊の弔いを行う。

 果樹園の間の開けた場所に棺桶を並べて2つ入れられる穴を掘った。

 動物などに掘り起こされては嫌なので、深めに掘った。


 彼らの亡骸は、麻の袋に入れて棺桶に納めた。

 火葬は出来ないだろうし、そのままじゃ余りにも悲しいので、そんな形にした。


 牙猿達が集まる中、俺とトゥミとエルフ娘たちは、見守るだけにした。

 牙猿達にはボスが事前に説明したらしく、皆、神妙に俯いている。

 牙猿の親しかった者たちに担がれて棺桶が運ばれて、穴に入れられた。

 順番に声を掛けながら土を掛けて行く。

 最後に俺が声を掛けて埋める。


「お前たちと戦ったおかげでボス達と仲間になれた。本当はお前達とも仲間に成れれば良かったな。命のやり取りの先には、本当の友好があったぞ。」


 埋めた後、ボスが石を乗せる。墓の完成である。


 手を合わせて願う、それを祈りという、と教えた。厳密には違うのか?

 分からないが、俺はそう思っている。


 皆で祈った。明日は良い日で在りますように!幸せに成りますように!

 彼等の冥福を祈ります。


 こういう純粋な願いが祈りとなり信仰に繋がるのかも知れない。


 この場所は、リンゴと桃の間で少し開けている。公園みたいにしても良いかもね。


 埋葬が終わって、解散すると各自がボスの元に集まった。そして俺の所に来ると、全員で頭を下げた。何も言わない。ただ頭を下げてボスとワフワンが牙を、ワフトゥとワフスリが毛皮を手渡してくれた。そして何も言わないままに解散した。


 渡してくれた牙はピカピカで毛皮はフカフカだった。

 こんなに綺麗になって、仲間への想いを感じた。

 その夜、俺はまたトゥミに抱きついて泣いた。トゥミは呆れる事無く付き合ってくれて本当に良い女だと思う。本当に感謝する。


 翌朝、スライム先生の所に行って、

 牙猿達にアドバイスしてくれた事のお礼を言った。


「大した話はしてないよ。強者もじきに土に還り木や草花の実りとなる。そうやって廻って行くんだと話しただけさ。」


「スライム先生、ありがとうございます。」


「いやいや、所で、いつから僕は先生になったんだい?最近皆、スライム先生って呼ぶんだよ。発端は君でしょ?」


「あ、あー‥‥ありがとうございました。」


 逃げた。

 説明も難しいし、只のスライムから賢者になったスライムですから、そりゃ先生だよね。

 まぁスライム先生も怒ってる訳じゃないから誤魔化しておこう。


 後は、角熊の解体をお願いしよう。

 日本で換金する素材も探さないと、鑑定でいくらの価値とか分かれば良いのに。

 ‥‥ん?分かるの?指輪が伝えてくれる意思?が教えてくれる。鑑定で価値も判ると。

 今まで気にして無かったから教えなかっただけらしいです。


 試しに何か鑑定して見よう!

 ん~~~?周りを見渡して見る‥‥目に付いたのは牙猿の牙と毛皮。

 なんか、鑑定しても良いもんかな?‥‥止めておこう。

 では、解体してもらう心算の角熊。丸ごとハウマッチ!‥‥‥


「ぶっ!!」


 角熊丸ごと、¥50M‥‥マジか。

 詳細は、角¥10M、毛皮¥30M、肉、爪、色々¥10M

 これってそのままの値段にはならないよなぁ。金貨500枚か?

 エルフの里、出入りの商人に頼んだらどうなんだろう。

 聞いて見ようか。



 トゥミとエルフ娘たちに聞いて見る。


「角熊、丸ごと幾らになる?」


「「「「「はっ?」」」」」


 ト「真悟人は突然、何を言い出すの?」


 ユ「それは、角熊狩ったら幾らになるか?って事ですか?」


 シ「角熊なんて見つけるのも大変だし、会ったら終了だよ。」


 サ「大体、牙猿の群れ対角熊の構図でしょ?ボス達にお願いした方が効率良いよ。」


 カ「角熊って美味いらしいなぁ~!狩れたら是非食ってみてぇな!」


 なんか、それぞれの個性が出てる反応だよね。


「いや、そうじゃなくて、これで幾らになるかな?って。」


 角熊を出した。


「「「「「はぁぁ??~~~~~?」」」」」


 ト「真悟人!これどうしたの?また危ない事したの?」


 ユ「マジで狩ってる‥‥在り得ないでしょ~、アハハ!」


 シ「・・・・・・・・」


 サ「スゴイ。本気でスゴイ!どうやって狩ったの?」


 カ「おぉ!食えるのか?食っても良いのか?」


「トゥミ、牙猿達と一緒に狩ったんだよ。

 ユナ、一人じゃ狩れないよ牙猿と一緒だったからだぞ。

 シャル、‥‥‥‥

 サラ、ボスが引き付けてる間に狩ったんだよ。

 カレン、キレイに解体出来るか?何処が美味いんだ?」


 エルフの里に来る商人に売れるか?

 どの位になるか判るか?

 皆、難しい顔して黙り込んだ。


「途方もない金額になるのは判るけど、かなり足元見られるんじゃ無いかな?

 他に売りようが無かったら言い値になると思うよ?」


「もしかして、リンゴもそんな感じか?」


「そうだねぇ。価値有るのは分かっても商人通さないと売りよう無いもんね。」



 ん〜〜〜‥‥‥

「そうか!じゃあ教えてくれ!売って、金にして、買うのは何だ?何を買う為に金が要るんだ?」


「一番は塩だな。この山の中だし、岩塩も少ない。海の水から塩が取れるのは分かってても、やり方は人間の秘密だし、魔物が多くてそんな事してられないよ。」


「他には生活用品ですよ。布が特産でも服は綿が良いし、鉄も必要だし、鍋1つでも高額ですから‥‥」


 どうやらエルフの里は相当搾取されているようだ。


「良し!これからは俺が商人をやってやる。もう人間の商人に搾取されたりしない様にしてやる。」


「えぇ!真悟人、そんな事出来るの?」


「あぁ、任しとけ。これからは俺が全て買ってやるし、売ってやる。」


「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」


 半信半疑な一同であった。

 では、まずエルフの里で必要な物を洗い出してもらう。それに加えて、欲しがりそうなモノを考えてもらう。


 エルフ達から買って日本に行くとき葛籠で換金する。日本からの物をエルフに売って、これも葛籠で換金すれば、エルフの里とこの村だけで成り立つだろう。

 人間の商人がやって来ても、ちゃんと適正価格なら取引する。逆に日本の物を見たら絶対に欲しがると思う。


 ただ、気を付けなくてはいけないのが、この世界で賄える物が基準になる。

 牙猿シャンプーとリンスは大丈夫だが、俺の

 持ち込んだエコシャンプーとリンスはダメだろう。

 当然、ライターはダメだがマッチは微妙か?香辛料系は、出来たら木を見つけたい。

 鉄は良いが、SUSやチタンを売るのは問題だろう。逆にミスリルやオリハルコンなんて有るんだろうか?


 エルフの里に一回行ってから日本に帰って仕入れた方が良いな。


 後は足か、牙猿達に連れて行ってもらうのが早いかな?


「トゥミ。エルフの里に行くか。」


「えっ??片道2日掛かるよ。往復と向こうでの事考えたら1週間かかるよ?大丈夫なの?」


「ん~。何とかなるだろ。収穫始まるまでには1ヶ月?程?時間は無いが早く済まそう。‥‥往復はボス達に送ってもらうよ。」


「???どういうこと?」


「まぁ、大丈夫だって!行くのはトゥミだけで良いのか?他のエルフ娘たちは良いのか?」


「‥‥‥真悟人は分かってて言ってる?」


「ん??何のことだ?」


「まぁ、イイわ。後で教えてあげる。」


「そ、そうか?‥‥じゃあ、明日朝から行くか?」


「そうね。準備しておくわ」



 その夜、トゥミに説教された。

 それは、みんな俺の嫁に成りに来たのに、まったくそのそぶりが無い事。

 だって、トゥミが好きなんだからしょうがないじゃん。‥‥


「えっ。うん。えへへ。うん。でもね。これから子供増やさないとイケないんだよ。だから、お嫁さんも増やさないとイケないんだよ。」


「だからさ、トゥミは俺の事好きで居てくれるの分かるし、俺も大好きだから良いんだけど、他の皆はそうじゃないじゃん?」


「そんな事ないんだけど‥‥真悟人は相手の気持ちが大事って事でしょ?それは問題無いと思うよ。」


「え~~?俺が分かんないと問題アリアリだよ。普段から俺に全然興味ない相手にどうアプローチしろと?、そんなの無理無理!俺、ヘタレだもん。」


「あーー‥‥‥真悟人がヘタレなのは一緒になって良く分かったわ。この世界の男って、もっと女は物のように扱って自分の欲求のぶつけ所ってイメージだから、私をこんなに大事にしてくれる男も居るんだぁ♪と思ったけど‥‥本当はもっと要求とか在るんでしょ?」


「あ、う、ん~、‥‥‥」


「んじゃ、今晩ゆっくり教えて?(ニヤニヤ)」


「あ、うん。(顔真っ赤)」


「大丈夫よ。そんなことでキライになったりしないよ。」


「うん。(変態的要求もOKか?)じゃあ、今晩。」


「うん。(ちっと怖いかも?‥‥)」



 此処に来て、イイおっさんが何を言ってるか!である。


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