第25話 エルフ到着

 資材倉庫に着手して、整地を終わらせ大体の大きさを決めた頃、

 エルフが牙猿のテリトリー圏内に入ったとの知らせがあった。


 人数は10人、長老ヴィトンとトゥミ、護衛の男エルフ二人。

 残りの6人は見たことない男二人と女四人で緊張の面持ちで向かってると。

 長老は相変わらずユニコーンに乗っている。


 と、いう事は女は一人帰るのか?ここに残るのはトゥミと男女三人づつかな?

 それとも?‥‥処女の女が居なくてもユニコーンは言う事を聞くのか?

 いやいや、それは無いだろう‥‥

 くだらないことを妄想してる間に、午後には到着との報が入った。

 ‥‥ん?早くね? あぁ、トゥミが急いでるのね。

 あいつの頭には焼肉とドライフルーツが浮かんでいるのだろう。

 と思い、苦笑してる頃‥‥



 ==========================



「みんな!早く早く!」


「もぅ~~!トゥミ!なんでそんな急かすのよ?」


「トゥミの頭には、焼肉とドライフルーツでイッパイなんだろう。」


「うんうん!違いない!」


「違うよ!!早く真悟人に会いたいんだよ! もぅ~人を何だと思ってるかな。」


「「「トゥミだと思ってるよ。 うんうん。」」」


 みんな真悟人と同じことを思っていた。



 もうすぐ会える!トゥミは本当に思っていた。

 あの焼肉と甘美なドライフルーツをないがしろにする訳ではないが、本当に真悟人に会いたかったのである。


 前回来たときは余り話せなかったし、許してくれたお礼もちゃんと言えてない。

 トゥミを初めて守ると言ってくれた男、それが真悟人である。

 実際に、もう終わりだと思った牙猿の襲撃から守ってくれた。

 高価なリンゴだって食べさせてくれた。

 更に、襲って殺そうとしてたのに、許して帰してくれた。

 籠一杯のリンゴを持たせて。

 だから今度こそちゃんと話したい。今度こそちゃんと‥‥‥伝えたい。

 そんな思いで急いでいるのである。



 トゥミが帰って来た、リンゴは籠一杯しかなかった。

 そして、在り得ない話を語り始めた。‥‥誰もそんな話は信じなかった。

 自分自身も、眉唾物の話じゃのう‥‥と、聞き入れられなかった。

 しかし、護衛の二人が証言してきた。

 自由に動く『剣』や『ロープ』がいて、一歩も動けずに拘束された。

 これでも彼らは村の中じゃ手練れである。

 その二人を、人間の男一人で圧倒するなんて聞いたことが無い。


 牙猿さえ、一人で一撃で仕留める。在り得ない話である。

 遷移隊の番を一人で仕留め、本隊さえ返り討ちなんて、ドラゴンだって対峙できるような戦闘力である。(謎結界の事は知らない。)

 それも、本隊は話し合って帰って貰った??‥‥どんなお伽話かと?


 人間の男はババ様の孫だと言う。

 それなら在り得るかも知れないが、本当にババ様の孫だと言う証拠も無い。

 万が一、本当にババ様の孫だとしたら敵対するなんてとんでもない!

 ババ様に敵対したら、こんな村、一瞬にして跡形も無く消え去るだろう‥‥‥

 だから確認しなければいけない。だから私が来た。護衛二人は嫌がったが‥‥


 覚悟を決めて向かった先では、牙猿の出迎え!正直、終わったと思った。

 ところが、礼儀正しく話しかけられた。

 話しかけられたんだよ!あの牙猿に!お迎えだって!死からの迎えかと思ったよぅ‥‥‥はぁはぁ、取り乱したの。


 向かった先では、在り得ない光景が広がっていた。

 整列した牙猿。その前に立つ人間の男‥‥これは?これは人間の男が牙猿達を配下にしてると言う事か?理解するのに数瞬を要した。


 男の口上と歓待‥‥これは敵対しちゃいけない奴だ!これは本物じゃ!

 我に返り、友好を結ぶべく考えた!トゥミは男を気に入っているようだし、

 孫娘に頑張って貰おう。ただ、トゥミは暴走しがちなので不安である。


 相当な数の土産を持って村に帰った。

 村の皆の驚愕ったら!話の内容に、さすがババ様の孫だと思った様だ。

 今後、友好を図りたいと思う。そこで、嫁になっても良いと思う女子はおるか?

 トゥミ以外にもう一人二人の嫁は?と募ったら結構な数の立候補が現れた!

 このまま村で燻ぶるより、護衛二人を圧倒出来て、牙猿をも退ける男なら人間でも申し分なし!女性達からの護衛二人の株はダダ下がりの様だ。

 今までブイブイ言わしてた分、下げ率も大きいようじゃのう。

 ふぉっふぉっふぉっ!


 結局、候補四人が決まった。

 絶望の顔してる男が何人かおるが、見ないでおこう。

 四人の美貌とスタイル!あの胸!一応全員、処じ‥‥と言う事じゃ。

 トゥミ、お前ヤバいの‥‥‥ゲフンゲフン。

 かなり真剣な殺気を感じたのぅ‥‥


 真悟人の村?までのメンバーは儂とトゥミ、候補四人、護衛二人、更にどうしても行きたいとごねる、新護衛二人。総勢10人で向かう事になった。


 中継の野営場所を出発して、トゥミが急かすので予定より早く着きそうだった。

 そんな時、牙猿が迎えに来た。それも、服を着て!!!これは衝撃だった!

 なんと、何という事だ!布はエルフの村の特産だった。それを、あっさりと越えられた。それを牙猿が着ている。恐ろしさに震えが来た。


 服の色は黒なのだが、それぞれ色の違う飾りが付いている。

 赤い腰ひも、青い腰ひも、緑の腰ひも、黄色の結んだ布、桃色の結んだ布‥‥

 女性陣も衝撃を受けた様だ!こんな鮮やかな色の布は、エルフの村でも出来ていない。大体、黒い布なんて、何で染めているのか?


「お迎えに上がりました。」


 意識を失いかけていた様だ。我に返って返答をする。


「うむ。お手数をおかけしますな。では、お願いいたします。」


「はい。ご案内します。」


 赤い腰ひもの牙猿の後ろを付いて歩きながら、思わず観察してしまう。

 貫頭衣のような仕立てで、下は短パンのようになっている。

 腰の部分を赤い布を巻いて縛っている。

 黄色と桃色は、仕立ては同じ感じであるが、腰ひもが太く後で大きく結んでいた。

 それを見た女性陣は騒ぎだしている!


「ねぇ、ねぇピンクとイエロー!」


「「トゥミさんご無沙汰しております。」」


「あ!うん。久しぶり!それって凄くカワイイね~!」


「えへへ!主が考えてくれたの。今、すっごい流行ってるんだよ。」


「そうなの!?真悟人が考えたんだぁ!それイイね~♪」


「うん♪リボンって言うんだって!あたし達は下っ端だから黒い布だけど、ボス達は色んな色、使ってるよ。早くあんな色着てみたいんだよね!」


「そうなんだ~・・・・・・・」


 挨拶もそこそこに女子トーク炸裂である。

 他のエルフ女性陣は、最初はドン引きしてたが、内容が服の話題なので聞き入っている。そこで意を決して話しかけてみる。


「こんにちは!初めまして。あたしはサラっていいます。よろしくね。」


「「コンニチハ。初めまして。」」「イエローです。」「ピンクです。」


「「「コンニチハ!」」」「シャルです!」「ユナです!」「カノンです!」


 そこからは大盛り上がりである。

 流石の長老も注意する訳にもいかず、レッド達も苦笑いである。

 そんな間に真悟人の村が見えてきた。



 真悟人達はやって来るのを見ていたが、どうも様子が可笑しい。

 女性たちは真ん中で盛り上がっていて、男たちは周囲で苦笑いをしている。


「なんだ?ありゃ?」


「さぁ?何が合ったんでしょうか?」


 長老は牙猿達が整列しているのを見て、さすがに注意する。


「トゥミ!サラ!お前たち、みんな待っておるぞ!」


 イエローとピンクも気付いて、イカン!と思ったらしく、ササっと位置を移動していた。トゥミ達も、何事も無かったように澄ましていたが、手遅れである。


 長老がユニコーンから降りて、口上を述べようとするが、みんな苦笑いで、なんとも締まらない到着となった。


 今さら仕方ないと、まずは宴の準備をする。

 今回は酒付きである。

 前回は量が少なかったので、長老のヴィトンと真悟人しか飲まなかったが、今回はエルフの歓迎会と言う事で、全員に一杯づつ、乾杯だけ一緒に飲むことにした。


 酒はワインである。様々な酒を相当量、買ってきたが、全員で飲んだらすぐに無くなる。だから、ワイン1杯だけである。


 ボスに牙猿達が酒は飲めるのか聞いたら、木のうろなどに果実が溜まって、発酵して酒になることがあるらしい。いわゆる猿酒か?

 後は、マルーラの木もあるらしく、春先に熟すマルーラの実は取り合いになると!

 今度、マルーラの木も移植しようと心に決めた!

 しかし、マルーラの木ってアフリカとか赤道近くの植物じゃないのか?‥‥

 その辺は異世界クオリティなんだろうか?

 深く考えてもしょうがない事は、考えないのが賢明である。


 いつも通り、焼肉の準備と乾杯の準備が整った。

 乾杯のやり方は、事前にボス達に説明して練習している。

 コップを使う事の無かった彼らだが、今ではすっかり慣れて当たり前にコップを使っているし、乾杯を教えたら、何時でも乾杯している。


 エルフ達は、ヴィトンが教えたようだ。彼らの村でも食事前に乾杯するのが流行っているらしい。どこでも似たようなものか。


 因みにコップは俺が『彫刻刀』にお願いして、木から削り出したものと、

 竹を使った竹コップがある。


「竹コップだー(タケコプター)」


 と言って、笑っていたら、ボス嫁たちが走ってきて、濡れタオルを乗せられて寝かされた‥‥‥ちょっと悲しくなった。


 閑話休題


 では、乾杯をしてから自己紹介をしよう。


「乾杯!」


「「「「「「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」」」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る