第24話 箱の目覚め?

 さて、目的の物はだいたい揃ったかな?

 服飾関係てんこ盛りで用意して、部屋の中が大変な事になっている。

 向こうに(異世界に)行ったら、仕入れ用の倉庫を作った方が良いな。

 倉庫に入れとけば、どちらでも出せるハズだから、かなり便利になるだろう。


 押し入れの葛籠もちゃんと確認した。葛籠にこんな力があるなんて!

 ¥100万が異世界ではどんな貨幣になるか楽しみだ!定番の金貨だと思うが、問題は何枚くらいになるかだよな?10枚か100枚と見ているが、物価も分からないから価値観が掴みにくい。

 日本で考えたら、住宅費が収入の1/3位を占めてしまう。異世界での暮らしは見たことも聞いたことも無い。トゥミの話から、リンゴが価値あるものとは分かったが、どれだけの価値やら?

 人間の国では貴族が居るような中世ヨーロッパのイメージだが、一度行って見る必要があるだろう。


 次に食材を山ほど!幹物を中心に調味料や香辛料。みんな大好き焼肉のタレも箱買いしてある。夏に向かうから麺類も大量に用意した。


 そのうち、味噌や醤油も自家製出来れば良いのだが‥‥味噌は素人でもできる様だ。手作り味噌セットなんて物もあった。米麹と麦麹とで味が違うらしい!両方の麹を使うと、合わせ味噌になるんだそうだ!これで味噌は作れるだろう。麹を絶やさずに作り置きしておけば、甘酒も造れる!ここから発展して日本酒が出来たら万歳ですな!

 醤油は麦と大豆で作るそうだ。手間も時間も年単位でかかるらしい‥‥これは、かなりハードルが高そうなので、日本酒と並んで、最終目標の位置づけですね。


 後は炭焼きをやりたいとか、焼き物をやりたいとか、鍛冶屋は?とか、色々調べたが、焦ってもしょうがない。設備と下準備が必要なので、調べて置くだけにする。


 他に忘れ物はないか?メモに書いたものは大丈夫!

 では、行くか!

 ‥‥‥‥‥‥覚悟ヨシ!


 ・・・・・・・・・飛べ!・・・・・・・・・・・


 変わらぬ酩酊感と浮遊感・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふぅ~~~~~。帰って来たかな?」


 最初は窓の外を見る。草原と遠くの山。

 前回は牙猿の襲撃があった。今回は大丈夫だ‥‥よな?

 家の中に積んである品物を全てアイテムBOXに格納する。かなりの種類と量が入っているが、俺が居ないと使えない。

 服飾関係はボス嫁たちに管理を丸投げしたいところだ。

 それには、算数を教えないとだな!毎日1時間でもみんな集めて寺子屋を始めよう。


 考えながら、家を出る。


「お帰りなさいませ!」


「「「「「「「「「「「お帰りなさいませ!」」」」」」」」」」


「うぉ!ビックリしたぁ~!」


「主、お帰りなさいませ。帰ってきた気配がすると言う事で、緊急招集を掛けました。警備に付いているもの以外は集まっております。」


 牙猿達が並んで出迎えてくれた。突然の事に動揺してしまったが、ジワジワと嬉しさが沸き上がってきた。


「皆、ただいま!帰ってきたヨ!出迎えご苦労さん。居ない間に変わったことは無かった?」


「はっ。エルフから使いが参りました。10日後にはこちらに到着するようにあちらを発つとの事です。」


「おぉ!そうか。間に合って良かった。10日後なら彼らの家も準備出来るかな?」


「はい。主の指示待ちでしたので、準備は出来ております。」


「うん。ありがとう。では、お土産を配るから、スライム先生とボスから順に並んで。」


 全員にお土産を買ってきた。

 クッキーを買ってきたのだが、鑑定すると【賢さ+1】‥‥‥

 どう取って良いのか分からん。

 日本では魔法が使えないから、鑑定出来ない。持ち込んでからじゃないと特殊効果があるのか?無いのか? +1なら大丈夫かな?と、安易に考えている。


「はい、じゃあスライム先生から、どうぞ。」


「はい。ありがとう。気を使って貰って悪いね。」


「いえいえ、お口に合うと良いですが。食べて見て下さい。」


 スライム先生は、素直に食べてくれた。そして‥‥‥


「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーー♪‥‥美味い♪」


 スライム先生は光った!!そして‥‥‥


「うん♪頭の中が更にクリアになった感じかな!」


 次の渡したボスも、ボス嫁たちも、皆同じ叫びをあげて、同じ感想を言っていた。


「主。ありがとうございます。」


「「「「「「「「「「ありがとうございます。」」」」」」」」」」


「牙猿一同、これからも主に付いて行きます故、よろしくお願いいたします。」


「「「「「「「「「「よろしくお願いいたします。」」」」」」」」」」


「うん。了解!こちらこそよろしく頼むよ。」


「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」


 もう、帰還の儀式のようである。

 警備の者は、交替した後にやって来るので、もう一度この儀式が待っている。


 では、本来の作業を始めようか。


 夏の終わりから秋には、牙猿達の子供が生まれる。本来の繁殖時期に番になった者達の子供である。分かってるだけで3頭。冬には追加で番になった者たちの子が4頭生まれるかも?これはまだ決定ではない。番が4組出来たというだけである。

 現実に7組の番が居る。牙猿戦隊の親たちも居るので、+5組。全部で12組。


 牙猿長屋を作ろう!東の林の中に木を伐りだして、背中合わせに10軒づつ合計20軒の長屋を作ろう!ボスの家は、横にくっ付けて4軒分くらいの家で良いだろう。


『斧』‥‥‥『根切鋤』‥‥‥『鋸』‥‥‥『鉋』‥‥‥『金槌』‥‥‥

『道具』様様である。総動員する勢いで、伐って皮を剥いで、木材にしていく。

 本来なら乾燥させるのだろうが、牙猿達の要望は、簡易的に雨風が凌げる小屋が良いらしい。だから、キッチリ組むのではなく、隙間だらけである。

 その方が良いらしい。元々鳥の巣の様な所に周りを枝で囲んだだけの巣であった。

 だから、完全に囲われると不安になるんだそうだ。


 次はエルフ小屋である。

 これは、牙猿小屋とは反対側の西側の森を伐り開いた。

 何人来るかも聞いてないので、背中合わせの長屋を、12軒づつ24軒作る事にした。

 牙猿小屋とは違い、壁は下から上に重ね合わせて行って、外から見えないようにする。更に隙間にはミズゴケを詰めて隙間風も入らないようにした。

 しかし、木を乾燥させてないし、直ぐに隙間だらけになるだろう。

 本当はコーキング材を用意したかったが、時間も無いし、これでやってみて、後はエルフの知恵を拝借しよう。


 そして、最後に大物!資材小屋である。

 これは、車の駐車場を巨大なガレージにして、そこを資材小屋とする。

 そうすれば、いちいち家に資材を運ぶ必要も無いので、非常に便利になる。


 その為には、車を移動しなければいけない。

 車のロックを解除して、ドアを開けたら、一同ビッッックリ!!!

 主が何か始めたと!箱?の口を開けたと!全員が集まってきた。

 一旦降りて、危ないから近づかない事!何があっても近寄らない事!

 家の前まで移動するので、ここから先に近づくな!と念押しした。

 車に戻って、エンジンを掛けたら、


「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!」」」」」」」」」」


 牙猿達が吠えた!!何事かと聞いたら、

 主を呑んだ箱が吠えたので、負けずに吠えたそうだ!

 更に、車を動かす。‥‥‥‥‥‥


「「「「「「「「「「ぐぉぉぉおおおおぉぉぉぉーーー!!」」」」」」」」」」


 大興奮の坩堝である。




 後のボスの説明によると、見たことが無い箱が置いてあった。

 中が見えるが、何で出来てるかは分からない。

 ずっと置いてあるだけなので、その内存在を忘れていた。


 それが、今日、主が近づいたら、ガチャ!っと目覚めた音がした!

 そして主が触ると、大きく口を開けた!!

 そこから伝令が走り、箱が目覚めた!主が手懐けている!全員集合だぁ!!

 皆が集まった頃には、既に主は箱に呑まれていたと!

 それでも、主からは、何があっても近づくなと厳命されていたので、気が気じゃ無かった。‥‥‥そして、箱が吠えた!全員の緊張はピークに達した!


「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!」」」」」」」」」」

 

黙って見ているのは限界だったそうだ。

 更に、主を呑んだまま動き出した!!!!


「「「「「「「「「「ぐぉぉぉおおおおぉぉぉぉーーー!!」」」」」」」」」」


 皆は既に限界突破しているので、泣く者、吠える者、駆け出す者、頭を抱える者、腰を抜かす者、怒る者、そうして大興奮の坩堝の完成である。


 それでも全員、偉かったのは、近づく者は居なかった。

 車を移動して車から降りたら、皆に泣かれた。無事で良かったと!手懐けは成功かと。‥‥‥


 こんなに心配かけるなら、もっとちゃんと説明すれば良かった。‥‥‥


 因みに、スライム先生は相変わらず縁台で興味深そうに見ていた。


「ほほぅ!‥‥」

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