第13話 敵?

 起きた。朝だ。

 周りを見回すと、トゥミはもう起きたようで居なかった。

 立ち上がり、窓を開ける‥‥‥はっ!っと気付いて窓を閉める。


「ヤバい!元気になったまんまで、窓から用を足したのなんて見られたら‥‥‥」


 外に出て、車の裏の藪で用を足す。


「早いとこ何とかしないとなぁ!‥‥‥」


「何を何とかするの??」


「!!っっ」


 ビックリした!ある意味、昨日の牙猿よりビックリしたかも!


「おぅ!おはよう!」


「はい♪おはよう。で、何を何とかするの?」


「あ?あぁ。トゥミがここに居られるように何とかしないとな!って。」


「そ、そうなの?(こ、ここに住んでも良いって事?)」


「あぁ、少しづつ何とかするよ。」


「えへ♪えへ♪えへへ♪ そ、そうだね♪ 何とかしようね♪(あたしが住めるように考えてくれるんだね♪)」


 ん??なんだ?、この訳分からない上機嫌は?‥‥‥まぁ、女の子の機嫌は分からないから、触れないでおこう。


「今から準備して、トゥミの村に夕方迄に着くか?」


「うーーん、1人で走って行けば着くかも?‥‥‥リンゴ背負ってたら、2日掛かるよ。無理したらリンゴがダメになっちゃう!」


「じゃあ明日の夕方に着くつもりで出れば良いな。そんじゃ、準備前にまずは水汲んでくるわ!」


「あ!はーい!行ってらっしゃ~い!」


 日課となる水汲みに行く。

 あっ!スライムどうしたっけ?‥‥‥思いながら水場に行くと、スライムが居た!


「ごめんなぁ!抱いて逃げた後、どうしてたんだ?」


「きゅいきゅい!・・・きぃ!きゅい!」


「うん‥‥ごめん。分からないよ。(牙猿(ボス)の話は分かったけど、スライムの話は分からないのかな?)でも、お前のおかけで助かったのは本当だよ。ありがとな♪助かったよ♪」


 その時!スライムの声が答えたような気がした。

 また頭の中で、指輪の声が聞こえる気がする。


「また『異界の指輪』の声?‥‥‥今度はスライムに認められたのか?」


 スライムに認められたので、新たな機能を解放!‥‥


「言語理解!?それは、動物や魔物の言葉を理解できる??‥‥‥でも、牙猿(ボス)

 の言葉は分かったのに?‥‥あれは、一定の魔力があれば理解できる?‥‥‥いやいや!待て待て!一定の魔力って、俺に魔力無いだろう?‥‥‥?」


 全然分からん?、トゥミは牙猿(ボス)の言葉が分かるなんて在り得ないと?と、言うことは魔力があれば分かるのか?トゥミは魔力が少ないのか?それとも、俺が多いのか?‥‥‥サッパリ分からん。


「おい!おい!おーーい!聞いてないのかよ?無視かよ?おーーーーい!」


 はっ!!!!っとした!え?え?ええ?‥‥‥じっとスライムを見る!


「おーーい!‥‥お?やっとこっち見たな?」


「うんうんうん。」


「なんだぁ?まだちゃんと理解出来てない顔だな?」


「こくこくこく!」一生懸命に顔を縦に振る。


「しょうがねぇなぁ~~。お前に助けられたおかげで位階が上がったみたいでな!意思疎通??ってのが出来るようになったみたいだぞ?」


「ん???位階が上がったってどういう事だ?」


「そんなの知らねぇよ。ただ、お前の事とか、俺の事とかが分かるようになったって事だな。」


 それって、スライムとかもレベルアップみたいなのがあるってことか?


「それって‥‥‥俺と、友達になれるって事か??」


「はっ??友達ってのは良く分からねぇが、そう言うことなんじゃねぇか?」


「そうか!!それじゃ友達になれるな!スライム!よろしくな!」


「お?おぉ。よろしくな!」


「早速だが、牙猿の襲撃でケガとかは無かったのか?」


「あぁ。お互い何も傷は無いだろ?そういう事だ!」


「そかそか!途中で訳分かんなくなっちゃってゴメンな!」


「あいつらの襲撃ならしょうがないだろ!あの襲撃を凌ぐこと自体、奇跡みたいなもんだろ?」


「そうなのか?よく分からないんだが‥‥‥」


「分からないのか??お前、お目出たいなぁ‥‥‥」


「う~~ん。否定はしない。この世界の状況、よく知らないからなぁ‥‥」


「ふ~ん、よく分からないが、そう言うことならしょうがないだろ。あの、牙猿って奴らは、食らうだけ食らって移動して行く。下手したら俺ら(スライム)も食おうとするから恐ろしいもんだ。」


「そ、そうなのか‥‥‥数が少ないから良かったが‥‥‥もう一回話せたら、話した方が良いな。まぁ、それは、それとして、これから、トゥミの村に行こうと思ってるんだ。」


「あ、あのエルフの女か?」


「へ?エルフ?トゥミってエルフなのか?」


「は?お前ちゃんと目ぇ開いてるか??‥‥‥誰が、どう見てもエルフだろ!」


「そ、そうなのか?エルフって耳が尖ってたり、美男美女でシュッとしてて‥‥‥ん?トゥミってシュッとしてて‥‥‥そ~~~かぁ~~~~!!気付かなかったよ。」


「はぁ‥‥‥まぁ今さらだが、山じゃエルフも碌な噂は聞かん!何してるかなんて知らんが、エルフに対して怒ってる奴は多いぞ。」


「はぁ、エルフって先入観から味方ってイメージでいたけど、そりゃそうかぁ‥‥‥敵で更に搾取してるなんて当たり前かぁ‥‥‥敵対すると、数は力だからな。何とかしないと。」


「真悟人~~??どうしたの?水汲み遅いから心配で来たけど?」


「お?おぉ!大丈夫だぞ!スライムに留守の間を頼んでたんだ。」


「‥‥‥‥‥‥きゅ。」


「ちょっとの間、頼むな。」


「きゅい。」


 真っ向から敵対してくる奴の方が分かりやすいって、厄介だよなぁ。

 ここは、日本じゃない。弱肉強食!

 騙される奴が悪いんだよ!

 心に刻んでおこう。‥‥‥


 ==================


 トゥミと村行きの旅に出た。

 籠には、何も入れなかった。重いから村の前で出そう。そう言って譲らなかった。

 今出すメリットはなんだ??‥‥‥言い淀んだトゥミは黒だろう。

 最悪は、殺すことも視野に入れなきゃいけない。


 籠は一つ。トゥミが背負った。トゥミの荷物以外は全て俺のアイテムBoxの中に入れた。


「真悟人が居ると、楽チンだね!ただ、そのスキルは人には言わない方が良いよ!」


「そうだな。信用できる奴ばかりじゃ無いからな。」


 トゥミは疑われている事は分かっているのだろう。会話もぎこちない。

 どんな手段で来るかは分からないが、謎結界が無い今は、中途半端な対応は出来無い。殺し合いになるだろう。‥‥‥婆さん、幸せになれるかも?って言ったじゃん??この状況、幸せじゃ無いんですけど。‥‥‥


 夕方になってきた。そろそろ野営の準備に入らなければ‥‥周囲の状況を考えると、トゥミと離れて一人で防御できる体制にしなければ‥‥‥


「トゥミ。野営の準備をするぞ。」


「う、うん。‥‥‥」


 サヨナラ。トゥミ。心の中でそっと呟く。

 特に寝る場所は作らずに、そっと『剣』を警戒に出して、目に付かない所に居てもらう。

 火だけ起こして、無言で火を見つめる。

 トゥミも無言で横に座っている。


 保存食‥‥‥ジャーキーと乾パンを水を飲みながら食べる。

 最初、トゥミは目を見開いていたが、何も言わず自分の分を食べる。


「トゥミ、最初の見張りを頼む。真夜中過ぎたら起こしてくれ。」


「う、うん。分かった。‥‥」


 俺とトゥミの長い夜が始まる。

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