第7話 道具たち。

鍬を持って土間に戻ると、


「なんか、空気というか、雰囲気が温かい気がするな?」


これといって変わらないのだが、そんな気がしながら洗った鍬を土間の棚に戻す。

なんだか、お帰り~!と言われるような錯覚を覚える。‥‥‥はて?

この鍬を持ち出したときは、埃を被った古ぼけた鍬だと思っていたが、とんでもない切れ味にビビった!

お陰で命が助かりました!お祖父ちゃんの道具のおかげだね♪


鍬を仕舞って土間の道具棚を見る。改めて棚の道具たちを見ると、埃を被った古ぼけた道具なんて何もない。ちゃんと手入れのされたキレイな道具たちだった。


「あっちの世界で見てた時は、確かに埃を被った古びた道具だった筈だよなぁ??自分の眼が曇ってたのか?いや、異世界に来てリフレッシュされたんだな!きっと!‥‥‥どういうことかは分からないが、その方が納得できるか。これからもこの道具たちにはお世話になりそうだし、これからもよろしくお願いします。」


道具棚に向かって手を合わせて頭を下げる。

そうすると、何か道具たちが反応してくれたような気がする。


その時、頭の中で、新たに指輪の声が聞こえた気がした。


「『異界の指輪』の声?‥‥‥道具たちのマスターに認められた?」


道具たちに認められたので、新たな機能を開放。・・・・・


「何をしたいのかお願いすれば、道具たちがサポートしてくれるのか!?更にアイテムBOXに1っ格納可能って!?・・・さすが異世界だな!!

もしかして、さっきから欲しい道具が都合よく見つかるのって?そういうことか?なんて有難いんだろう♪‥‥‥しかし、一つだけかぁ‥‥‥まぁとりあえず早速お願いします!」


先ずは水を確保したい。

風呂も無ければ、井戸も無い。昔、お祖母ちゃんが住んでた頃と同じならば、近くに湧き水があるはず!

あんな牙猿が出るような場所で、丸腰でウロウロしたくない。身を守れる道具と、水汲みのバケツに協力して欲しいです。


そんなお願いをしたら、道具棚がうっすらと光るところがある。

そこには、『根切鋤』? 鋼の棒で、片側には刃物、もう片側には突き刺せるような尖った先端。長さも手頃で、重さも5~6kgくらい?本来は木の根を切断するための物らしい。持ち手に布でも巻けばもっと使いやすくなるかも?‥‥‥バケツは?と思ってたら、『異界の指輪』が光っていた。


なんで『異界の指輪』が?‥‥‥あっ!そうか!アイテムBOXに格納できるってことか!・・・まだ使った事の無いアイテムBOX。不定形の物も格納できるのか?やってみないと分からないかぁ。


アイテムBOXは、お試しで何か格納してみるか‥‥‥武器にする予定の『根切鋤』!やってみよう‥‥‥か?って既に姿が無かった。


「あれ?もう格納してる?‥‥‥んじゃ出すとき‥‥‥は?」


もう右手に『根切鋤』は出ている。


「おぉー!!すげぇレスポンスの良さだな!!考えればダイレクトに答えてくれるカンジか!?んじゃ、『根切鋤』を格納と思わせて『鍬』格納・・・」


「おぉー??もしかして考えるより早くないかい?棚に仕舞った鍬が格納されている。手許に無いものでも格納できるってことは、道具棚の物は1っだけなら出し入れ自由ってことじゃん!おいおい!スゲー機能だな!」


「それでは‥‥‥『鍬』から『根切鋤』に切り替えと思わせて『鍬』収納継続と思ったけど、『鍬』はどーしよーかなー?って迷った所で、いきなり『剣』格納!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・


『剣』?‥‥‥格納されてます。

これは?どちら様です?


なんとなく意思みたいなのは感じます。

んーーーと?この道具棚に居た子ではないようですね。

んと、『鍬』と『根切鋤』と『異界の指輪』達は試してごめんね!

みんなの早変わりが楽しくて、調子に乗ってしまいました。みんなのクオリティの高さは良く分かりました!んで、『剣』の子ですが、何処から来たかな?


『剣』の意思みたいなのが、なんとなく伝わる。

どこか暗い所で飾ってあった?呼ばれた気がしたから来たらしい。


「まぁ、確かめようも返却も出来ないみたいだし、『剣』もこれからよろしくって、あっ!そういえば、湧き水を確かめて汲んでこなきゃ!遊んでてつい忘れちゃってたよ!『剣』の子はちょっと待ってて!」


「ん?戦闘は得意だから、このまま持ってけって?‥‥‥ん~そうかぁ。そりゃ『剣』の専門は戦闘だもんな。ただ俺はまっったく戦闘出来ないからね。上手く誘導してもらえると助かるよ?」


『剣』を格納したまま外に出たら、まだ夕方少し前!水汲みは今のうちだね。

あの場所にまだ湧き水があれば良いけど‥‥‥行って見ないと分からない。


徒歩3分、山の壁面から水が滴り落ちている。

‥‥‥良かった!ちゃんとあった!湧き水も埋め込んだタライもそのままだった。


なんだか、異世界と過去の現実とリンクしてる部分があって、ちょっと混乱するが、悪い事じゃないから良しとしょう!知ってる部分が残ってると非常に助かるね。


湧き水受けのタライの蓋を取ると、中に沢蟹がイッパイ居た!


「あぁ。流れ着いたら出れなくて、流れてくるミミズとかを食ってたのかな?‥‥‥可哀そうだから水を貯める方法を考え直した方が良いかな?」


何時でも汲みに来る訳じゃないから、沢蟹達が出れるようにした方が良いだろう。


まずは、ちょっとだけ掬って片手づつ洗う。そして、両手で掬って‥‥‥


「ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ‥‥‥フゥ〜〜!生き返ったぁ♫」


やはり、最高に美味いです♪

生き返ったら、次は、水の格納!


「おっ!?!?」


指輪を水に浸けたら、一瞬にしてタライが空になった。

沢蟹がカサカサ歩き回っている。


次は、水をちょっとだけ出す。‥‥‥イメージはコップ1杯、200㏄!


「パシャッ」


イメージ通りコップ1杯分の水が出た!

んじゃ全放出!


「バッシャ~ン!!」


あー‥‥‥ビショビショになっちまった。

タライには満杯の水!

まぁ、服は血だらけのままなので、濡れた所でどうこうないが、ちょっと考え無しだったね。後は、沢蟹は格納できるのか?


「・・・・・・・・・・・・・・・」


出来ないらしい。

そういえば、さっきの牙猿の死体とか、格納して動かせたのか??

やってみる価値は有りそうだ。


早く水を持って帰らなければ、日が傾いてきた。

もう一度水を格納して、沢蟹達にはタライから出られるように、木の枝をタライに突っ込んでおいた。これで木の枝を伝って外に出られるだろう。


帰ろうと立ち上がった瞬間!!何かがキラッと光って俺の横に落ちて来る‥‥‥


「ギィィィ‥‥‥」ドサッ


ウサギ??‥‥‥っぽい灰色のどうぶつが落ちてきた。

やけに鋭い牙と、カミソリ?みたいな爪が生えているウサギ?その胸には血が広がっていく。

これって??俺の横に、剣??らしい刃物が浮いている。


「お前か?・・・・・『剣』」


自動発動かよ!ビックリしたわ!・・・・・助かったけどね。

もう、便利過ぎて怖いもの無しだな。でも、何を感知して迎撃?この先、人間相手にイキナリ迎撃とか怖すぎるぞ!よくお話しておかないと取り返しの付かない事になりそうだ。


ウサギモドキは動かないから仕留めたのか?折角だから、持って帰って血抜きすれば食えるかな?試してみようか。


「格納」


左手を翳して声に出してみる。恐ろしい爪の生えたウサギモドキは収納されたようだ。死体は格納できるんだな。‥‥‥あの牙猿も!‥‥‥今さらですね!


横に浮いた『剣』を従えて、夕焼けの中、家に帰る。

あとは、一旦あっちに帰るかなぁ~‥‥‥と、考えながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る