微睡みの夢

南瀬笑音

第1話


手に持つ折り畳み傘からは雫が垂れる。

歩く振動によって新品のスーツに雫が着いた。

ビル街はサラリーマンとOLで溢れかえっている。目の前に見える人たちは、今「歩く」という行動が自分の目に見えているが、勿論見えないところもある。

今、目の前にいる154センチくらいの女性も眠たそうな顔をしている。自分と同じで、夜遅くまで恋人と盛っていたのかもしれない。もしくは、セックスフレンドと一夜をすごしていたのかもしれない。

隣の部長の年代の男性は、仕事で疲れた顔をしているように見えるが、子どものことが可愛すぎて悩んでいるかもしれない。

目に見えているものが全てではないと、教えてくれている。

でも、世の中はどうだろうか。全てが見えていること前提に進んでいるように見える。それは、ウエハースの模様のようにキメ細やかにプログラミングされているような。はっきりいって気持ち悪い。


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微睡みの夢 南瀬笑音 @nase_ene_0

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