第5話 会長
「こうして夕焼けを見て帰るのって何回目かしら」繚乱は後ろの蒼然に向き直って訊く「物思いに更ける「
「流星少年団、ですか?」
「そうだよ。彼らはヨジツクモの中でも特異な存在にあるからね」
生徒会長室。
二つの人影と声がカーテン越しにわかる。
「流星少年団は学園アイドルとして女子生徒だけでなく男子生徒からも人気を誇っています。そんな彼らを標的にするのは愚策としか思えませんが」
「愚策? そんなことはないよ。ですよね、生徒会長殿」
「生徒会長? まさか……」
バレたかもしれない。
でも、大丈夫。
カーテンに隠れていればわからないはず……。
「カーテンに隠れても意味ありませんよ、
まぶしい。
カーテンが開かれ、照明の光が目に刺さる。
「折角カーテンに隠れてたのに、邪魔するなんて。本当に詰まんないの」
「詰まる、詰まらないの話ではありませんよ。生徒会執行委員会まで出動して、本日締め切り分の資料を提出したんですよ」
「え、そうだったの? だからみんな、忙しくしてたんだね。……知らなかった」
「拗ねないでくださいよ。まだ、一つ仕事が残っているんですから」
生徒会副会長――
「仕事ってあれでしょ、犠牲ユニット決め!」
「明るく言われましても、かなりの重要案件。しかも学園都市の暗部となる案件ですよ」
「はいはい。って、君だぁれ?」
円満の横に立つ、九年生に声を掛ける。
涼しそうな青の髪色に、色素の薄い目。
……そして。女子ウケありそうな顔。
「おれ……私の名前は、
「礼儀正しくていい子いい子~」
ちょいちょい、と円満を呼ぶ。
「なんですか?」
「こんなにも女子ウケしそうな男子を選んだのってだぁれ?」
「私ですが?」
「はぁ~、円満のイケメン好きには呆れちゃうよ! こんなにも顔面偏差値をあげたら、またなんか言われちゃうかもじゃん~」
顔面偏差値が高すぎる生徒会。
ぼくが生徒会長に、円満が副会長になってから生徒会はこう呼ばれるようになった。
そしてさらに、生徒会役員を決める担当の円満が有能なイケメンばかり選んでくるから、男子からは揶揄され、女子からはちやほやされている。
「ですが、有能な人材ですので」
「うん、まあそれもそうだね。円満が選んできた子はみんないい子で有能だもんね~」
「はぁ、買いかぶりすぎかと」
謙虚な姿勢。
何というか、ご子息って感じ。
「透涼、よろしく」
「改めて、よろしくおねがいします」
ぼくが手を差し出すと透涼はがっしりと掴み返してくれる。
やわらかいのに芯のある握手を交わして、円満と仕事に向かい直す。
「流星少年団でいいと思うけど、本当にいいの?」
「ええ、私は構いませんよ」円満が目を伏せる「この巨大な組織、学園都市の犠牲となれるのです。ちっぽけな彼らは喜んでくれるでしょう」
「そっか」
流星少年団の小春日と円満は幼馴染で、今でも偶に遊んでいるのを見かける。
親しい仲であるはずの小春日を犠牲にすることを相当悩んだ末に決定したのだ。
その思考はせめても、評価してあげないと。
「それでは、生徒会長命令ですっ! 新ユニット「有栖」の誕生と、人気ユニット「流星少年団」の解散を明日施行します!」
「「承知いたしました」」
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