第19話ごめんなさいを伝えに

 時は流れ森の中、ゆっくり進むカフルとリリス

時刻はお昼、日差しが暑く、木漏れ日も少ない道を二人は進んでいる


「リリス」

 カフルの車椅子を押すリリスに、話しかける

「何でしょうか?お母様」

 

「押すのはツラくないかい?」

 

「大丈夫です。お母様の車椅子は森にも対応していますから」

 ニコッと笑うリリス

でも、カフルはそんなリリスを見ることなく、前を見つめ

「そうかい…すまないね」

 と、とても小さな声でリリスに、謝っていた


 二人の会話が途切れ、風がなびいて樹木が揺れる音が聞こえてくる

長い長い沈黙が流れて、カフルが話し始めた


「リリス、少し寄り道をしましょう」

 

「寄り道ですか?どこへ?」


「一度家に帰りましょう」


 リリスはカフルの言葉に思わず立ち止まる


「ですが…」


 予想外の提案に、リリスは返事に困っている

だがカフルは、そんなリリスをよそに話を続ける


「本当に反応があったという確認がしたいのです。それに、このまま進んだとて本部の人間に会うなら、なおのこと」

 

「でも…」

 リリスは戸惑いを隠せない様子で、返事を濁している


 カフルは車椅子を動かし、リリスの方を向くと手を取り、両手でリリスの手を包み込む

「あの子達が、居ることを生きている事を信じたいのです」

 カフルの目に涙が零れている

「そして、二人に全力で謝らなきゃいけません」


「お母様…」

 カフルの様子に何も言えなくなった


 カフルは涙が止まらなくなり、すすり泣く

リリスも、カフルを見て、涙が溢れていく

 そして、しばらく森の中には、カフルが、涙を堪える声と、リリスの泣く声が聞こえていた


「ねぇ、リリス」

 涙で声も震えているカフル

「何でしょうか?お母様」

 カフルの声に涙を拭うリリス


「あの子達は、ごめんなさいで、許してもらえるかしら?」

 涙をこらえてカフルは、ふと笑う

「お母様…」

 笑ったカフルを見て、リリスも少し微笑む

「そうですね…私も二人に謝らなきゃですね」

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