第18話それぞれの朝

朝、ここはカフル達がいる森の中

静かな夜明け、鳥の声も、せせらぎも聞こえない

嵐の前の静けさのよう

そんな中、森の真ん中にある家からカフル達が出てきた

「よいか、気をつけて行けよ」

ルグドがカフルに声をかける

「わかっておる」


「リリス、二人を頼む」

コドルもリリスに声をかける

「はい、二人と共に帰ってきます」


コドルはカフル、リリスを見つめ警告をする

「本部はどうかしてこの場所に来るだろう。もしかしたら本部の者と出くわすかもしれん。その時は…」


だがカフルは、そんなコドルの言葉を鼻で笑う

「ふんっ。案ずるな。あっちも簡単には殺さんだろう、大丈夫だ」

そういうと、カフルとリリスはルグドの家を後にしようとする

「カフルよ…」

ルグドに呼ばれて、カフルはゆっくり車椅子を動かし振り替えり、問いかける

「なんだね、じぃさん」


「……すまなかったな」

謝るルグドに

「…ふん」

と一言残し、二人は再び歩み始めた


同じ頃、魔術本部の医務室の出入口でクリスが体育座りでうずくまっている

「クリス・ルーグは、何してるんだ?」

アーベル大佐がリズルに不思議そうに聞いている

「今日からアリスと、面会謝絶になって、ふて腐れているのです」

二人は、クリスから少し遠くから見守っている


「しかしだな…」


「そっとしてあげてください。家政婦もクリス達の家の現地調査に同行しており、機嫌悪いのも致し方ありません」


「ふむ……パフェでは機嫌直らないのか?」

アーベル大佐は、真剣な顔で聞いてきた

「大佐…」

その言葉に少し呆れた顔をするリズル


「リズルさん…」

クリスが、見守るリズルに声をかける

「どうした?」

呼ばれて歩みより、体育座りのクリスの目線を合わせるように座ると、クリスもリズルの顔を見る

クリスは泣いたのか、目が真っ赤である

「いつになったら、アリスは目を覚ますの?」


「それは…」

リズルは言葉を紡ぐ

「…お母様に会いたい。アリスともお喋りしたい」

リズルの胸元に抱きつき、泣き始めた

「部屋へ戻ろう、クリス」

リズルはクリスを抱きしめる

「でも…」


「悲しい顔で会うのは、お母様も、アリスも望んでないよ」


「でも…」


リズルはもっとクリスをぎゅっと抱きしめる


「会えるようになったら、すぐ連絡するようにノーツ医師にお願いしているから大丈夫よ、だから少し休もう」


「……うん」

クリスは静かに頷く


リズルは、クリスを体から少し離し、顔を見るとニコッと笑う

「部屋で休もう。少し聞きたいこともあるから…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る