第3話ルーグ家は……

 医務室を出て、廊下を歩いているアーベル大佐とリズル少佐。


「なぁリズル、どう思う?」

リズル少佐の一歩前を歩くアーベル大佐が話し始める

「わかりません。あの子達は、本当にルーグ家の双子はでしょうか?」

 問いかけに答えるリズル少佐。


「ルーグ家の関係者、全て行方が分からなくなって、半年ですよね」

 今度はリズル少佐が問いかける。


「あぁ…」


「では、あの子達は…」


「ルーグ家の双子かはまだ分からないが、あの規模の能力を考えると、そうであろうというのが本部の考えみたいだ」


「えぇ、私より遥かに強い魔力の反応でしたから。そうだと思いますが…」

 そう答えると、ぐっと手に力を込める。


 アーベル大佐は立ち止まりリズル少佐の方を向き、話しかける。


「そうだとしたら、ルーグ家に双子が生まれていたという記録はないのだ」


 リズル少佐も立ち止まり、驚いた様子で、アーベル大佐を見る

「ルーグ家は、双子の存在を隠していた…と」


 アーベル大佐は頷く。

「あぁ、隠したいという気持ちは分かるが…」


「ですが…」


「だから今から会議をするそうだ」


「今からですか?」


「ルーグ家の捜索かつ双子の対策、相当参ってるみたいだがな」


「仕方ありません、ルーグ家は…」


 アーベル大佐はため息まじりに答える。

「あぁ、この世界の一番といわれる魔力使いの一族。それが半年前から、全ての者が音沙汰もなく行方不明。いたと思えば、双子だからな」


「えぇ、ルーグ家の双子が10才の日になると…」


「いつも何かが起こる。天変地異か戦争か。この世界の言い伝えの一つだな。二人に何があったかはまだ分からないが、前触れじゃないか、という事で動いているが、クリス・ルーグが何も話さないとなれば、どうにも…」


 リズル少佐が少し考えている様子で、アーベル大佐に質問をする。

「これまで、ルーグ家の双子に起こった記録というのは?」


「近々に起こったのは、もう数十年前だそうだ。その時は大規模な水害で、本部、ルーグ家、他の魔術一家の協力により怪我人は多数いたが、死者は…」

 アーベル大佐は言葉に詰まった。


「そんなに多かったのですか?」


「いや、双子の片割れだけだったそうだ」


「え?」


 アーベル大佐は、体の向きを直し歩き始めた。

「ともかく、あの子からルーグ家の情報が少しでも手に入らないと先には進めん。一家の捜索も半年かかってゼロだからな」


「頼んだぞ、リズル少佐」

そ ういって、廊下を歩き続けるアーベル大佐。

その背中を見届けながら、頷くリズル少佐


「了解…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る