第3話 バイト日常 その2 休憩中

休憩中


 切りはよくないけれども時間が来たので一旦ここまでとして、部屋の隅の応接セットのテーブルに皿とフォーク、砂糖やスプーンを運ぶ。


 「ケーキ好きな方選んどいてー」


 社長は資料室からお盆に乗ったコーヒーセットをもっていそいそと部屋から出ていく。

 給湯室はこの部屋から見ると廊下を挟んで右向かいにある。

 社長はそこでこだわりのコーヒーをこだわりの方法で入れるのだが、コーヒーのことはよくわからない。

 こちらの準備はいろいろ済んでいるのだが、暫く戻ってこないのが困る。


 応接セットは何となくその辺の量販店で買ってきた物に見える。

 家庭用っぽくもあるが、扱いに気を使わないでよいメリットもある。


 社長はなぜか砂糖を三種準備する。グラニュー糖、サトウキビの砂糖、甜菜糖。

 でも社長はブラックのみ。


 (さてと・・・)


 ケーキの入った紙の袋を覗いてみる。

 一般的なモンブランと、こだわりを感じさせるチョコレートのショートケーキが並んでいる。


 これは難題。


 マロンクリームのマイルドな甘さと生クリームのコンビか

 本格的なビターなチョコとチョコクリーム、くっきりした甘さのチョコレートケーキか。

 悩ましいがモンブランの柔らかい甘さは、お茶のほうが合う気がする。

 これはチョコレートのショートケーキが正解だな。


 そんなことを考えてるうちに、コーヒーカップが並んだお盆をもって社長が帰ってくる。

「どっちにします?」

 コーヒーカップを置きながら続ける。

「チョコのはドイツのいいのを使ってて、モンブランは栗とサツマイモ、かぼちゃを使ってるって言ってました」


 コーヒーの香りが部屋に広がる。コーヒーの香りは落ち着く。

 ゆっくりと深呼吸。目が覚めていくような気がする。


(そういうのは先に言うべき)

「・・・・・・・モンブランにします」

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