バルポズ
セックスできてキスできない俺の彼氏(前編)
「んゃっ……!も、やめろぉ……っ」
「は?こっからが本番だぜ?」
「死ぬ……腰とケツが死ぬ……」
ポーズとバルドは毎晩恒例のエンドレスセックスをしていた。
バルドは底無しの体力を持ち、そして絶倫だ。だから俺は毎晩……どころではない。毎日隙あらばだ。場所なんて関係ない。
ヤりたいからヤる。それだけだった。
バルドとのセックスにはテクニックなんてものは存在しない。
それこそ獣のようにひたすら腰を振るだけ。逃げるなんてことはできないし、逃げようとするだけ無駄だ。逃げられないんだから。
俺はえんたびメンバーの中でも体力が無い方なんだから、こんなやつに毎日、一日に何回も付き合っていたら体に限界が来る。
毎日俺がバルドと致していることはみんな知っているので心配はしてくれるが、誰もバルドを止められない。
「もうむり……ほんとにむり……」
「俺も我慢できねぇんだけど」
「優しいキスのひとつでもしてくれたらムードが多少?ほんの少し出て?気が楽になる気がしないでもないのになぁ???」
「むり」
そう、こいつはなんでか、優しくキスしたりハグしたりができない。
「なんでだよ!!しろよ!!キスしろよバカ……」
あまりの疲労に甘えたくなってしまった。
普段されないことをされたい。
「……キスとかハグとか、なんかすげぇお前のこと好きみたいでやだ」
「……???……は???」
「キスより先にセックスしちまったからもうなんか逆に無理なんだよ!!!」
何言ってんだこいつ……バカなの???バカだからバカなんだよなぁバカ!!!(語彙が疲労困憊)
「はぁ〜〜〜???ふざけんな!!!しろよ!!!キスしろよ疲労がすげぇんだよ俺!毎日お前のクソ絶倫に付き合ってやってんだろうが!!!キスの一つや二つじゃ足りねぇぐらいだわクソ!!バァ〜〜〜カ!!!」
そう言って俺は雑に服を着て部屋を出た。出る前に唾を吐きかけてやったぜ。
「性格が不覚にもバルドに似てきてしまった……不覚中の不覚……」
足早に目的地もなくメンバーと泊まっている宿の中を歩き回るポーズ。
そもそも俺にはバルドと付き合っている――恋人同士であるという感覚が全然無い。
そりゃそうだ。告白もお互いしていない。デートもしていない。ベッドで始まった関係……
こ、これは……
「セフレというやつか……!!?」
「き、キス……キスか……」
想像しただけで体中が熱い。
バルドはセックスで始まりセックスで終わる、という関係しか知らない。恋とか愛とか、そういうものがよく分からない。
でも、ポーズに対して感じている気持ちが、今までに感じてきたものとはちがうことだけは分かる。初めての気持ちだ。
「これが恋……?珍しく乙女って感じだな俺……はぁ………」
珍しく深いため息。自分以外のために吐いたため息。
ため息の理由はとてもくだらないけれど。
「とりあえず、捕まえるだけ捕まえて……」
って、そういうことじゃないよな。あいつが求めてるのは。
分かっていても行動に移せない。
「探しながら考えっか……」
キスをする覚悟に、もう既に7分経過。
「ポーズー!どこだ〜」
キスってどうやるんだぁ?舌入れねぇやつだよな?いややり方は知ってるんだけど……
「おい、ポー……、ズ……」
声をかけようとしたとき、ふとポーズが誰かと話していることに気付いた。
「そうかい、それはつらかったろうね」
「つらかったっていうか……まぁ……」
ミシェル……?二人だけなんて珍しいな。
「そんなやつと毎日なんて……大変だね」
「はい……そうなんですよ。今も腰が痛くて……」
少し笑いながら、ポーズは腰をさする。
なんだよ、楽しそうじゃん。
おじゃま虫はお部屋に戻りましょうね〜、と独り言をこぼしつつ部屋に戻ろうとすると、
「ポーズくん、ボクじゃだめなのかな……?」
……は?
「ミシェルさん……?」
そう言うと、ミシェルはポーズの後ろに立ち、するりと腰に手を回し、もう片方の手でポーズの唇を撫でた。
「ボクなら君に優しくキスをすることもできるし、君の体を労りながらすることもできる」
「あ……ちょっと、んっ……、ぁ、やめ……っ」
「ねぇ、だめかい……?」
「おいこらおっさん!今すぐ手ぇ離せ!」
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