春 私はまだ知らなかったんだ

春 私はまだ知らなかったんだ


木々がこんなに眩しくて

名もない花がこんなに愛らしいなんて


ただ 見ていただけだったよ

私を包んでいる世界のすべて


あなたのことだって

見ているだけだった


夏 私ははじめて知ったんだ


まなざしが鼓動を踊らせ

手のぬくもりが心まで温めること


私はあらゆる感覚を開いて

世界をまるごと抱きしめる


あなたがここにいること

そのすべてを感じたいから


秋 私は知り過ぎてしまった


青い空には何もないこと

風は涙を拭ってくれないこと


私にはもう 色も見えない

今がいつかも わからない


あなたが私の世界を連れて

どこかへ消えてしまったから


時間はあれから止まったまま

私はどこへも行けない迷子

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