第135話 無計画



 一瞬で傷だらけになるベルト。


 それを見上げる竜王ゾンビは――――



 「まずは一太刀。我が信念は貴様に届いたぞ」



 ゾンビにあるまじき笑みを浮かべた。そして、再び尻尾を振るう。


 かまいたち――――またもや真空の刃がベルトを襲う。


 しかし、その刃はベルトに届かなかった。



魂喰いソウルイーター



魔力の刃が真空の刃を掻き消したのだ。



「むっ……相殺したか」と竜王ゾンビ。しかしベルトは――――



「いいや、届いているさ」



その言葉の直後、竜王ゾンビの尻尾に異変が起きる。


幾つもの線が入ったかと思うと、鮮血……いや、それと見間違うような謎の液体がぶちまけられた。


ゾンビ化しても痛覚は健在なのか?  激痛の咆哮が周囲を震わした。


ずたずたに切られた尻尾は地面に落ちた。しかし、異変はその直後に起きる。


落ちた尻尾から次から次へ魔物


が生れ落ちていく。


骨だけの魔物。 スケルトンと言われる種類だが、良く見れば背中に羽が生えていたり、尻から尻尾が生えていたり……


おそらく、竜の因子が取り込まれているための変化だろう。


特殊魔物


と言われる魔物だ。 


そして、例外になく特殊魔物


は強い。



それも10体に近い数が、ぞろぞろと現れ――――



 ≪魂喰い≫



 その強い強いモンスターはベルトの攻撃によって一瞬で倒された。


 しかし、ベルトの表情は余裕のものではなく焦燥感に駆られていた。


 そのまま視線を竜王ゾンビの頭部に移す。 


 今もノリスが突き刺した聖樹は健在だ。 メイルの破邪効果のある魔法によって竜王ゾンビの周辺にも関わらず清麗さすら感じてしまう。


 竜王ゾンビが体内から魔物を生み出さないの理由はソレだ。


 聖樹と破邪の相乗効果で、この辺りは聖域のような状態になっている。


 だが――――


(直接、ダメージを与えると傷口から魔物を産み落とすか……厄介だな)



 ベルトが竜王ゾンビと対峙している理由は、もちろん倒すためだ。


 それは竜王ゾンビが保持しているダンジョンとしての効果。魔物を生み出し、援軍として魔王軍の兵力を補強するのを防ぐためだ。 

 

 だから、ベルトの勝利条件は竜王ゾンビに大きなダメージを与えずに倒す事。


 そんな矛盾すら孕んだ指令


に対して、ベルトは――――



 「さて、どうやって倒すかな……」



 ……無計画


だった。

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