第130話 世界に激震が走った


 世界に激震が走った。


 異変と言うにはあまりにも大規模な変化だった。


 ダンジョンが動いたのだ。


 東のダンジョン。通称、竜王の死骸ダンジョン。


 その名の通り、2代前の勇者によって討伐された竜王の亡骸が長い時間をかけてダンジョン化した場所。


 そういう意味では、元々は生物であり、元から動く機能はあったのだろうが……


 それでもダンジョンは、間違いなく亡骸であり、どうしようもないほどに死骸であった。


 そんな事を言っても実際に動き出したのだから仕方が無い。


 竜王の死骸ダンジョンに挑んでいた冒険者たちにしてみたら寝耳に水。


 幸いにして出入り口である口が開いていたため死者、行方不明者共に0という奇跡的な数字で済んだ。


 流石は鍛えられた冒険者というべきか…… だが、しかし、動き出した竜王に意思があるのならば、なぜ冒険者を生かして帰したのか?


 口を閉じるだけで数百の冒険者が命を散らしていたはずだ。


 それとも、文字通り歯牙にもかけないというやつだったのだろうか?


 兎にも角にも消えた竜王の死骸はどこへ?


 あんなにも巨大な存在が姿を消し、痕跡を残さないという事はあり得ない。


 考えられる可能性は海だ。 


 深夜の海に姿を消して、北上。 先の大戦で領土を失った魔族が集結してると推測している最果ての北端で魔王軍と合流するものと想像される。


そして、今後の予想として魔王軍は南下。再び、人類への攻撃が予想される。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


「それで俺たちが集まられたのか」


そう言ったのはベルトだった。


場所は冒険者ギルド。 元々、多くの冒険者が出入りする場所ではあるが、その日は違った。


およそ、町に住む冒険者全員が集められている。 いや、冒険者だけではない。


教会関係者。王国兵士のもの。商人もいれば、貴族もいる。引退した冒険者もいる。


メイルが見渡す限りでも顔見知りが幾人かいる。


教会関係者はかなりの位の高い者達だった。 もっとも、聖女であるメイルよりも位が高い者は猊下と呼ばれる少数だけ。 そのため、彼女に気づくと深々と頭を下げてメイルを困らせた。


 他にはベルトの師匠である甘味屋の女主人。


 さらには、娘に多くの権限を譲り、一線を退いたはずのマリアの父親がギルド長の横に立っている。


 それだけで異常事態だという事が簡単に読み取れてしまう。


 ギルドの長である老人は、主要人物が揃っているか確認するかのように周囲を見渡す。


 やがて、満足したのか? 「うむ」と短く頷いて、後ろに下がる。


 ギルド長に代わり前に出たのはソルだった。


 彼がギルド長に代わり実務をこなしているのは周知の事実だが、この盤面で彼に任せるという事は、ギルドの最高責任者として公私ともに認められた事になるのだが……


 それらが事の重要を知らしめる結果となり、空気は重々しさをました。


 全員から注目される圧力の中、ソルは口を開いた。


 「さて、みなさんもご存知通り、北に魔王軍の残党が集結して軍隊を再結成。南下を開始しました」


 重々しい空気は、さらに重力を増した。


 「北の周辺国家は徹底抗戦を開始しています。しかし、破れるのは時間の問題です」


 ざわめきが大きくなる。


 魔王軍は先の勇者との戦いで大打撃を受けている。


 戦力としては全盛期の3割ほど。

 

 対して、人類は平和を取り戻すと復興作業に尽力を重ね、さらに北に逃れた魔族へ眼を光らせるため、北の兵力を増強させた。 いわゆる防人のような制度を採用したのだ。


 それにも関わらず北の戦力が破られる? ギルドに集まった人々は驚愕を隠せずいた。


 「お静かに……」とソルが小さな、しかし力強い声で言う。



 「これから、各国と各ギルドが立てた作戦を伝えます」



 

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