第109話 首なしゴーレム?


 「なんだこれは?」



 場所はダンジョンの中心部。


 斥候として1人で先行して進んでいたベルトは呟いた。


 ベルトの記憶では中心部は大きな広間になっていたはず……


 しかし、広間の真ん中には奇怪な物体が陣取っていた。


 「1人で考えても答えはでないか……」とベルトは周囲の安全を確認してから、パーティ本体であるメイルたちの元に踵を返した。



合流した4人が中心部に到着すると――――



なんですか? これは!」とメイルも声を出して驚いた。



「まるでゴーレムの首なし死体みたいですね」



中心部にあったのはゴーレムのように人間を模した何か……


両足を抱え込むように座っている。 体操座りというやつだ。



しかも、首がない。 


本物のゴーレムと誰かが戦って、その頭部を切断したのだろうか?


 ――――いや、仮にそうだとしても、頭部をわざわざ持ち帰ったのは理由は何か?


 それに奇妙な点はそれだけではない。


 「……おい、ここを見てくれ」とベルトは地面を指した。


 「これは……結界みたいですね」


 地面には薄っすらと魔方陣が書かれていた。


 目を凝らさないと、気がつかないようにひっそりと……


 「これは、首なしゴーレムを封印しているのでしょうか?」


 「……あるいは、誰かをゴーレムに近づかせないためか」


 ベルトがそう言った直後に異変が起きた。


 「義兄さん、なんだか、このゴーレム……縮んでいませんか?」

 

 「縮む?」と最初は意味がわからなかったが、なるほど……

よくよく観察してみると、ゴーレムの体はゆっくりと小さくなっている。


そうかと思うと、急に空気を送り込まれた風船のように膨らんだ。


それが規則正しい間隔で繰り返されている。 


「なんだ、これは……おい、ノリス」とベルトはノリスを呼んだ。



 「他の専門家から何か聞いていないか?」



 ノリスは少し考えてから首を横に振った。


 「いや、いくらアンデッドの専門家でも中心部まで進める奴は限られているからなぁ。ここ2、3ヶ月は誰もここまで来ていないと思うぜ」


 「……そうか。それじゃ魔王軍が関わっている可能性が高いな。念のため、破壊しておくか?」


 ベルトはゴーレムを見上げた。しかし、それを止める者がいた。

 


 「ケタケタケタ……」

 


 それは不死騎手だった。



 「えっと、ベルトさん コイツはなんて言ってるんだ?」とノリス。


 「不死騎手の話だと、どうやらコイツは地下にある化石燃料を汲み上げ、ダンジョン内部に循環させているそうだ」


「化石燃料って言うと、ソイツが乗っている自動二輪車バイクとやらを動かす燃料の? しかし、なんだってそんなもんをダンジョン内で流してる? 兵器に使う燃料って言うなら一箇所に溜め込んでおいた方が便利だろうに」



「ケタケタケタ……」 と不死騎手は何かと話した。



「どうやら、不死騎手でも目的はわからないらしい。ただ……」


「ただ? なんです?」


「その化石燃料って言うのは下手に引火したら大爆発するらしい」


「下手に手を出せないじゃないか!」


「そうだな。それにダンジョン内に流れているなら、他にも火花が飛ぶような戦いができない場所があると言う事だ」


「……これは一度、引き返してギルドに報告した方がいいと思います」

 

「確かにそうの通りだが……どうやら、そうも言ってられないみたいだ」



「?」とノリスは疑問符を浮かべる。


一方、ベルトと付き合いが長いためか、素早く反応したのはメイルだ。



「ノリスさん、戦闘準備を! 敵が、敵が来ますよ」

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