第102話 ベルトの面接


 「俺の名前はノリス。 キルト・D・ノリスだ」


 ノリスは整った顔立ちの青年だった。しかし、口元は黒いマスクで隠されていた。


 服装は軽装。

 

 黒い皮の服に身を包み、その上には緩衝着。鎧は関節部分を守る物と胸当てのみ。

 

 しかし、背後からの攻撃を守るためか、分厚いマントを装備している。

 

 そして、武器は槍。 ……いや、それだけではないようだ。

 

 マントに隠されているが、背後には何らかのフォルダがあり、そこに武器が収められているように見える。 

  

 やがて、ノリスは手にした紙をベルトへ渡す。


 「うむ、なるほど……そういう事か」とベルトはその紙をメイルに見せた。


 「これは、道理で人がこないはずです」


 その紙はベルトたちがギルドへ提出したパーティ募集の書類だった。


 しかし、その紙には奇妙な変化あった。


 検閲……と言うのだろうか?


 幾つかの部分が黒く墨で塗りつぶされていた。



 「それで、どうして君はこんな条件で受けようと思った?」



 ノリスは短く笑ってから言葉を加えた。



 「一体、どんな奴がこんなヤバそうな条件でパーティ募集を出したのか興味があってね」


 「……それで? 実際に会ってみてどうだった?」


 「想像通りにヤバイ奴みたいだ。……あんた、ベルトさんだね?」



 「どこかで会ったことあるかい?」とベルトの言葉には剣呑な響きがこもっていた。



 「いいや、単なる山掛けってやつさ。世間じゃ隠されてるけどSSランクの間じゃ噂になってるからな。魔王復活と倒れた勇者。暗躍するSSSランクの暗殺者……しかし、あんたが本物のベルト・グリムなら俺にも運が向いてきた」


 「ほう。俺が本物のベルト・グリムなら……君に、どんな運が向いてきたんだい?」


 「もう誤魔化さなくても良い。貴方は兎も角、貴方の相方は正直だ。正解が顔に出ている」

 


 「えっ」とメイルが声に出す。すぐ、意味に気づいたのか顔を赤く染めた。


 どうやら、自分の顔色を窺われたらしい。



 「……」


 「どうやらアンタに取って、そっちのお嬢ちゃんは、よっぽど大切な人みたいだな。怒気が漏れてる……いや、ワザと威圧しているのかな?」


 「そうだとしたら? 君は、どう思う?」


 「俺の実力を確かめたい?」


 「なかなかのご明察。この面接の後に少し腕試しをしてもらいたい」


 「いいぜ。……というよりも面接だったのか、これ……」

 


 ベルトは気を取り直すためか、ゴホンと咳を1つ。

 


 「では、面接を続ける。どうして、このパーティ募集を受けようと思った?」


 「俺もあんた等みたいにSSSランク冒険者になりたい」


 「うむ……出世欲や名誉のために怪しげな募集を受けたのか?」


 「いや、SSSランクのような冒険者じゃないとギルドから情報を受けれない場所。あるいは情報提供を受けれない奴がいる」


 「敵討ちか? しかも、SSランクでも情報が降りない相手だな」


 「そんな所だ。復讐者を仲間にするのは問題があると?」

 


 そのノリスの言葉に「ふっ……」とベルトは笑う。それから――――



 「俺も復讐者みたいなもんだ」



 そう言った。それからベルトは立ち上がる。


「では、ノリスくん。少しだけ腕前を見せて貰おうか」


 


 

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