竜王の死骸ダンジョン編

第101話 新メンバー募集  


 「う~ん、どうしたものか」とベルトは机に座り唸っていた。



 人工都市オリガス 第五迷宮での戦いから3ヶ月。

 

 平穏な薬屋生活と剣呑な冒険者生活を両立させていたベルト・グリムであった。


 しかし、そんな生活は長く続かないというのは世の中の常というものである。


 冒険者ギルドからの依頼……というよりも強制指令。つまり、魔王絡みの案件が来たのだ。



 『東のダンジョンに魔王軍の痕跡が確認された。ただちに向い、魔王軍の残党を討伐を』



 依頼書を弄りながら「残党ね」とため息をつく。


 世間では魔王復活は秘匿されている。 

 

 例えば、第五迷宮の戦いだと、内部の状況が外部へ伝わる手筈になっていた。 


 しかし、冒険者ギルドの介入があり魔王軍との戦闘は世の中に隠された。


 最も、初めから冒険者ギルドは魔王軍が第五迷宮に潜んでいる情報があったからできた事なのだろうだが……


 それは兎も角、今回は東のダンジョンだ。


 第五迷宮とは違って、本格的なダンジョン攻略になる。


 それが今回、机に向って「う~ん う~ん」とベルトを悩ませている問題だ。


 ……パーティが組めない。


 まさか、毎回メイルを抱きかけてダンジョンを攻略していくわけにはいかない。


 例えば、少し前にマリアの私兵団に入った獣人の少女――― ミケラエル。

  

 彼女を斥候にして、前衛はシルフィド。自分は状況に合わせて、斥候、前衛、後衛の護衛と役割を変え、回復要員のメイル。後衛にシン・シンラのような魔法職がいれば……


 完璧なのだが……しかし、現時点では ベルトとメイルの2人組パーティ。


 今、ベルトが紙に書いているのは、ギルドに提出するパーティメンバー募集のお知らせのチラシだった。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・



 ギルドの近場にある飲食店にベルトとメイルはいた。


 早速、パーティメンバー募集をギルドに申請して、応募者への面接を行う事にしたのだ。


けれども…… 


「……本当に1人も来ないな」


「義兄さん、流石にSSランク冒険者が募集条件では人は集まらないのではないでしょうか?」


「そうだな。西のダンジョンの時に、SSランク冒険者と交流を……」


「あの時は、みなさんを置き去りにしていきましたからね」


「……」


 ギルドから勇者救出の特別指令ミッション発動。


 西のダンジョン30層で動けなくなった勇者たち。彼らの救出作戦にギルドが考えたのはベルトを中心として大人数のSSランク冒険者を投入。後衛のサポートにもSランク冒険者を起用した大規模ダンジョン攻略作戦。


 それを無視してベルトはメイルと2人で高速攻略を行った。


 もしかしたら、SSランク冒険者たちはベルトへ悪い印象を持っているのかもしれない。

 

 飲食店の扉が開いた。反射的に2人は来店者を目で追った。


 間違いなく冒険者の風貌。長い槍のような武器を肩に担いで……近づいてきた。



 「あんた等がパーティ募集しているのか」



 ベルトは頷いた。すると男は手を差し出し、名乗った。



 「俺の名前はノリス。 キルト・D・ノリスだ」




 

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