第100話 幕間② シンラがやって来た 完


 「そうか……あれよりも魔王は強いのか」


 「そうだな。少なくともアレよりは……いや、アレとじゃ比べ物にならないさ」


 「それじゃ、私も今以上に……全盛期よりも強くならないとな」


 「ん? そうだな」


 「私は、そのために戦い続けなければならない」


 「それは……いや、そうだな」


 「それで相談なんだが……新しいパーティを作りたいんだ。まずは前衛ができて、斥候もできて、優秀な……それこそ世界最強の暗殺者が必要だ」



 シンラの頬が赤く染まってみえた。

 その勧誘に対してベルトはと言うと――――


 「うむ……知り合いに俺以上の暗殺者が1人だけ知っているが、今は現役を引退して甘味処の主人をしているからなぁ」


 「……馬鹿」とシンラは呟き、それから帰り道は話さなかった。


 いや、最後の別れ時に一言だけ――――


「暫く、この村を生活の拠点にする。何かあったら私はお前を真っ先に頼るから、お前も……その……私を頼れ! いいな!」


 そう言って2人は別れた。



・・・

 

・・・・・・


・・・・・・・・・

 


 ―――翌日―――



「ラブコメの! ラブコメの波動を感じました!」



 ベルトの実妹であるノエルが帰って来た。



「ラブコメの波動ってなんだ? それよりも今日は帰宅する予定じゃなかったはずだが?」


「これはラブコメの残り香……すでにラブコメは終わっていたのですか!?」


「ラブコメの残り香…… 本当に何を言ってるんだ? お前は……」


 しかし、ノエルはベルトの言葉が耳に届いていないほど極度の興奮状態だった。



「それで兄さんは誰とラブコメしていたのですか?」


「いや、誰ともラブコメをした記憶は無いのだが…… しいていれば、昨日は昔の仲間が……」


「はぁ~はぁん! では、シン・シンラさんですね。 男装の麗人で兄さんに好意を寄せている東洋の美女とのラブコメですか!」


「なぜ、シンラとわか……いや、まてよ。どうしてお前は……シンラが女性だと知っている!」


 驚愕するベルト。しかしノエルは平然と言った。


「どうしてって……吟遊詩人の歌を聞けば、年頃の女の子なら想像がつきますよ」


「いや、マリアやメイルはシンラを男性だと認識していたが……」


「いえ、あの2人は女子力に難があるので」 


「女子力!」


 凄いな、女子力。

 シン・シンラが隠し続けていた秘中の秘を簡単に暴くのか……とベルトは驚愕を隠せずにいた。


 「はぁ」とため息をつきながら「兄さんとシンラさんのラブロマンスを見たかったなぁ」と頬杖をつく妹がまるで別の生物のように見えるベルトだった。


 もっとも……


 世間でシン・シンラを表す「男装の麗人」という言葉。


 これは男装をした女性を指す言葉である。


 つまり……


 多くの人たちがシン・シンラが女性であり、ベルト・グリムに恋する女性という事は常識として広がっている。


 知らぬは当人たちと……恋愛に未熟な一部の少女たちだけである。



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