第28話 復活の魔王と四天王と1人


 勇者の肉体を奪った魔王シナトラ。


 ベルトとの邂逅の後、姿を消した彼はダンジョンの奥底――――


 深遠部に現れた。




 そこには2つの物が存在していた。


 1つは魔王が座るための玉座。


 もう1つはダンジョンコア――――ダンジョンを制御するためのクリスタルだ。




 魔王はダンジョンコアにてを触れた。


 本来ならば魔力を注入することでダンジョンの様子を窺ったり、モンスターたちを活性化するのだが――――


 魔王が行った行為は逆だった。


 ダンジョン内の魔素が逆流され、魔王の体内に入り込んでいく。




 魔王が勇者に討たれた後、世界中のダンジョンは次々に消滅していった。


 そして残ったのは4つのダンジョンのみ――――


 なぜ、ダンジョンが消滅していったのか? なぜ4つのダンジョンが残ったのか?




 それはわかっていない。なぜ、わからないのか?




 それは人間側の学者が出した見解だからだ。


 魔族側は違う。人間たちとは違って理由は明白だ。


 そもそも魔族に取ってダンジョンとは拠点。


 魔王が討たれた直後、魔族たちは各地の拠点ダンジョンを破棄。


 4箇所のダンジョンに戦力を集中する事で再起を狙っていた。




 そして、今日、絶対なる指導者である魔王シナトラが帰還したのだ。




 西のダンジョン――――否。新たな魔王城に――――




 吸収した魔素が体内を循環して自身の力に変換されていく。


 その感覚に魔王は、歓喜を乗せたため息をつく。


 そして――――




 「入室を許可する。姿を見せるがいい……我が四天王たちよ」




 そういうと、暗い部屋に魔方陣の光が漏れる。


 転移魔法だ。 


 魔方陣は5つ。 そこから5人・・が姿を現した。




 「うむ、誰一人欠けることなく、この場の再会……まずは嬉しく思う」




 ひれ伏せた5人が肩を震わせる。顔も見せず、声も出さぬが、その姿からは喜びが伝わってくる。




 「許す、顔を上げて立つが良い」




 5人は一糸乱れぬ動きで立ち上がった。


 右から――――




 参謀 フェリックス ローブで全身を覆って顔までも隠している。それでも酷い痩せ型なのはわかる。




 魔獣将軍 ラインハルト 獅子の頭を持つ半獣半人の戦士




 暗黒将軍 ルーク 漆黒の鎧。今は兜を脱いでいる。人と変わらぬ顔。




 人狩将軍 ヘルマン 10歳にも満たない少年のような見た目。




 そして、5人目は―――― ? ? ? 




 「今の我等が目標。そのために、参謀を除いた3人には他のダンジョンの制御を頼みたい」




 全員からの肯定の意思。


 ならばと魔王は酒の入ったグラスを宙に浮かべ、それぞれの手元に送る。


 それを受け取った四天王は――――




 「全ては魔王のために!」




 一気に酒を飲み干すと空になったグラスは地面に叩きつけて割った。


 決起の儀式であった。 儀式によって猛った彼らは姿を消した。


 ――――いや、1人だけ残っている。


 それは、四天王の共に魔王に謁見した謎の人物だった。




 「うむ……首尾の方はどうだ?」と魔王。




 「はい、冒険者ギルドの内部は、ほぼ……上層部は子飼いの者にすり替えました」


 「なるほど、次に取り入るのは……王族か?」


 「はい、しかし……」


 「気になっているのであろう? あのベルトと言う男を……」




 魔王の言葉に男は「……」と無言で返した。


 その表情は、まるで苦虫を噛み潰したかのようなものだった。




 「あの男は、今回の計画を根本から崩しました。本来ならば、私が――――」




 「構わぬぞ」と魔王。そして、こう続けた。




 「ギルド側からあの男に近づけ、そして――――」


 「隙あらば殺します」 




 男の目に浮かんだ殺意を見て魔王は笑った。とても愉快そうに笑った。




 「ならば行け。吉報を待っているぞ」




 「はい、必ず」と男は姿を消した。


 転移魔法。


 転移したのは天幕の内。外からざわめきは漏れている。


 男は天幕から出て外の様子を窺った。


 場所は西のダンジョン内部。周囲には100人の冒険者たちが休息をとっている。


 Sランク以上の冒険者で構成され、勇者救出を目的とするパーティ。


 男は、それに支持を出す立場にいた。


 男の名前は――――




 ソル・ザ・ブラッド


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