第16話 勇者パーティ その②
勇者たちの前に現れたモンスター。
「ゴーレム……でも、あの鱗に翼は!」とマシロ。
「ドラゴン? 龍の因子を取り込んで作られているのか?」とシン。
「作ったって! そんなの誰が作ったって言うの?」とアルデバラン。
「――――」と勇者は無言だが、目を見開いて驚きを表した。
混乱が襲い掛かってくる。
体は、レンガを積み上げたような作りのゴーレム。
表面にはドラゴンの鱗が無造作に貼り付けられている。
その背中には羽が生えている。むろん、ドラゴンの羽だ。
頭部はゴーレムからドラゴンに挿げ替えられている。
ドラゴンゴーレムと言えば言いのだろうか?
幻想種最強と言われたドラゴンを魔道兵器であるゴーレムに取り入れた存在。
今まで、様々なモンスターと戦ってきた勇者たちですら初見のモンスターである。
「とりあえず、前にでるよ!」
そう言うのはアルデバランだ。
自身の巨体すらも覆い隠す巨大な盾。
それを構えてドラゴンゴーレムの前に飛び出す。
ドンッ
盾が殴られた衝撃音。アルデバランの巨体が後ろに下がる。
だが、ドラゴンゴーレムの攻撃はそれで終わりではない。
ドンッ ドンッ ドンッ……と単調なリズムで重低音を響かせる打撃。
不意にリズムが止まる。
アルデバランは盾の隙間から見た。
ドラゴンゴーレムの歪なフォーム。
上半身は大きく反られている。
――――それは、まるで弓そのもの。
腕は真っ直ぐ後方に伸ばされている。
――――それは、まるで矢そのもの。
防具破壊の一撃。
そして、それは放たれた。
だが、一流の前衛職であるアルデバランは経験則から、攻撃の種類を読み取っていた。
≪シールドパーリング≫
アルデバランのスキルが発動した。
接触の瞬間、強化された盾がドラゴンゴーレムの拳を弾き飛ばした。
さらに体勢が崩れた状態を狙うアルデバラン。
自身の肉体を弾丸に変えて、強烈な体当たりを叩き込んだ。
吹き飛ばされたドラゴンゴーレムは壁に大穴を開けた。
魔獣程度なら、この一撃で絶命する攻撃のはずだが……
ギッギギギ――――と不気味な機械音を発しながら、ドラゴンゴーレムは立ち上がっていく。
だが、アルデバランは叫んだ。
「カムイ、追撃を!」
「――――」と声にならない声を発してカムイが前衛に躍り出る。
ドラゴンゴーレムは見た。
飛翔する勇者の姿を―――― 煌く聖剣の輝きを――――
それが最後に見た物だった。
ドラゴンゴーレムの頭部が切り飛ばされる。
だが、倒れない。
頭を無くして、なおも動き続けて敵を排除しようとする。
しかし、後衛の2人――――マシロ姫とシン・シンラ。
彼女たちの攻撃は発動していた。
攻撃特化型の魔法使い。マシロの詠唱は既に完了。
さらに方術士であるシン・シンラの魔方陣によって強化。
≪深色のアルコバレーノ≫
「風」「土」「水」「火」の四大元素。
それらに3つの要素を加えた七属性の魔法攻撃。
残っていたドラゴンゴーレムの胴体は灰燼に帰す。
「……」と誰も勝利の歓喜を上げない。
こんなわけの分からないモンスターがこれから出現してくるのか……そんな事を想像するだけで疲労が増してくる。
誰かが、ため息をついた。
しかし、そんな余裕もすぐに消え去る。
「見ろ!」と誰かが叫んだ。
新たにモンスターが現れた。さっきと同じドラゴンゴーレムだった。
だが、数が違う。 新手の数は5体。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」と雄たけびを上げながら『超前衛戦士』アルデバランはモンスターたちの前に飛び出した。
その雄たけびは、気合を入れるものではなくヤケクソという言葉が似合っていた。
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