第15話 勇者パーティ
―――ダンジョン―――
かつては世界中に存在しており、そこからモンスターが無限に湧き出ていた。
しかし、魔王討伐後にダンジョンに変化が起きる。
ほぼ全てのダンジョンからモンスターの出現率が大幅に低下。
魔王の存在がダンジョンに何らかの影響を与えていたと言われる。
しかし、一部例外もある。
世界五大ダンジョンと言われる4つのダンジョン。
その4つのダンジョンでは逆だった。
強化されたモンスターが大量に出現するようになったのだ。
まるで世界中のダンジョンが弱体化して封鎖されていく代わりに、何らかのエネルギーが4つのダンジョンに集中されているのではないか?
そして、そのダンジョンの調査……あるいは攻略は勇者たちに託された。
そのはずだった……
――――西のダンジョン――――
(どうしてこうなったのか?)
シン・シンラは、解ける事のないパズルに挑んでいるようにグルグルと思考を浮かべていた。
モンスターの出現率が極端に低いとされる場所。安全地帯セーフティゾーン。
安全地帯まで、なんとかたどり着いたが……
勇者パーティは動けなくなっていた。
罠によって遮断された帰り道。 加えて兵站不足。
(どうしてこうなったのか?)
何度となく繰り返した自問自答。
こんなはずではなかった。
シンは、全く新しいダンジョン攻略の戦術を今回の遠征アタックで取り入れた。
名づけて――――
『疾風迅雷陣』
攻略スピードの大幅な高速化。
斥候などを排除。兵站などの軽量化。
勇者を中心に個々の突破力を前面に押し出し、必要となる時間と金銭の大幅削減。
ダンジョン攻略の効率化として成果を上げるつもりだった。
(どうしてこうなったのか?)
見渡す。パーティの面々を。
「……」
「……」
「……」
誰もが無言。
壁を背に座り込むアルデバラン。
頑丈な肉体と堅固な装備。
超前衛戦士の異名を持つ彼でも、深く刻まれたダメージと積み重なった疲労は隠せずにいる。
そして、座り込んでいるのは彼だけでない。
マシロも自分も――――勇者すら頭を下げて座り込んでいる。
マシロ姫は、魔力回復ポーションに手を伸ばすも、その数を確認すると飲むのを止めた。
周囲の魔素を吸収する自然回復を選んだみたいだ。
ちらりと盗み見ると残り3本。
1本は副作用もあるが一瞬で魔力が回復する高額なポーション。
残り2本は徐々に回復していくタイプのポーション。
帰還を目指すのにも心もとない量だ。
そして勇者カムイは――――
一言も喋らない。
剣を抱きしめるように座っている。
少しでも体力回復に専念するように座ると同時に寝息を立て始めている。
(どうしてこうなった?)
誰もシンを攻めない。
どうしてこうなったのか? その原因は明らかにも関わらず――――
それが仲間の信頼によるものと言うならば、自分は冒険者としての信頼を裏切ったとシンは思っている。
焦りと不安。 勇者パーティの新参者としてのプレッシャーが、今回の遠征を強行した。
――――否。強行してしまった。
だが、シンには不思議と慙愧の念は、湧き上がってこなかった。
(なぜだろうか? どうして自分は――――)
シンがその疑問に答えが出る前に動きがあった。
カムイが立ち上がると同時に剣を抜く。
「どうした?」とは誰も聞かない。
勇者が剣を抜くのは敵襲を察知したからだ。
新手のモンスターを前に彼らは戦闘態勢に移行した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
一方、ベルトは――――
冒険者ギルドの奥へと受付嬢に案内されていた。
事前に「コンビを組んでいる者もいるんだが?」と聞いたが、答えは――――
「ご内密にお願いします」
有無を言わせない緊張感。
仕方なく、メイルには待ってもらう事にしてギルド長が待つ部屋に向う。
やがて、部屋の前に止まると受付嬢はノックと共に――――
「お連れしました」
「うむ、入りなさい」と返事を受け、ドアを開けるとベルトを中へと促す。
中に入ると老人が立って待っていた。
彼がギルド長だろうか? ベルトがそう思っていると老人は朗らかな笑みを浮かべた。
「どうぞ、こちらにお座りください」
そう椅子へ勧める。
「さて、本来ならギルド長如きがSSSランクの冒険者さまに特別指令ミッションを発動する権利はありませんが、今回は事が事ですので――――」
「勇者パーティ救出と聞いていますが?」
「……そうです」とギルド長は神妙な面持ちで説明を始めた。
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