12月

2019年12月01日 「37.6度の愛」


風邪でダウンした。ふたり同時に。目が覚めて最初に感じた気だるさに顔をしかめると、隣には同じ表情の君がいた。お互いの火照った顔を見て、笑って、咳をしてから、キスをした。いつもより熱い唇。37.6度の愛。




2019年12月09日 「雪男」


「雪男を見つけるまでは下山しない」彼が雪山の小屋に住み始めて早十数年。ひと月に一度古い友人が食料や日用品を持ってくる以外は外界との関わりを持たない。そんな彼は知る由もない。麓では彼を雪男と呼ぶことを。




2019年12月15日 「湯気の行く先にいる」


今日の晩御飯は鍋か。いいね、今日は寒いもんね。でも、一人で食べるのは寂しくないかい?僕も一緒に食べて暖まりたいよ。湯気と一緒にいい匂いがここまで上ってくるからお腹も減るし、それに冷えるんだ。天井裏は。




2019年12月23日 「A.___________________」


問1・君の家が近いと知って始めたコンビニバイト。故意の偶然を期待し「来い来い」と強く念じる。来なければ落胆の色が濃いが、来ても鯉みたく口をパクパクさせるばかり。この時、僕から君への想いを俗に何という?




2019年12月30日 「星の光よりも脆弱な僕の声」


「あの星、本当はもう無いの。光だけが届くのよ。まるで幽霊みたいに」あの日、彼女は夜空を見上げてそういった。もし叶うならばあの星の光のように、もう一度、もう一度だけでいい、僕の声が彼女に届きますように。

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