11月

2019年11月3日 「あなたの好きなもの」


あなたのことが好きだから、あなたの好みは全部わかってるの。昔ながらのナポリタンが好き。ミルクと砂糖たっぷりの珈琲が好き。スピッツが好き。古本の甘い匂いが好き。私じゃなくて、笑顔の可愛いあの子が、好き。




2019年11月10日 「望遠鏡の向こうにいる彼女」


クレーターまではっきりと見えた。手を伸ばせば掴めそうなほどに近い。でも、レンズから目を離せばほんの小さな丸になる。そこには永遠のような距離がある。隣で望遠鏡を覗き込む彼女を、僕は月のような人だと思う。




2019年11月17日 「ジオラマ」


山頂から見下ろした街並みは四方を山に囲まれ小ぢんまりとまとまっていた。「まるでジオラマみたいだね」妻と笑いあっていると、ふいに雲の切れ間からひょいと大きな手が伸びて、建物をいくつか置くと去っていった。




2019年11月25日 「人生のせんたく」


人生は選択の連続だ。なにかを選ぶことが苦手だった俺はなにも選ばなかった。いや、それもひとつの選択か。結局、実家のクリーニング屋を継ぐことになった。俺の選択は正しかったのか。いま俺の人生は洗濯の連続だ。

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