群青の空に浮かぶ三日月

姫亜樹(きあき)

群青の空に浮かぶ三日月

澄んだ群青の空に

三日月が浮かび

ぼくらは旅に出る

黒い山の影が空に張り付き

凛とした空気に吐かれる

二つの白い息が

ぼくたちの存在を世界に示す


川沿いのホテルのネオンは

神々しい光を夜に放ち

旅人がやってくるのを

静かに待っている


突然

赤い車が静寂を破り

ぼくらの側を擦り抜けて

細波さざなみのように空気を揺すり

三日月を雲の中へ隠してしまう


あーーどうしてだろう?

なぜ?

そっとしておいてくれぬのだろう

ぼくらは誰も傷つけないのに


やがて

大地に白い花が咲きだし

天へ舞い上がっていく

ぼくたちを埋めるように


「このまま

雪に溶けてしまいたいね」

そう言った君の手の温もりを

ぼくはただ

抱きしめることしか

出来なかった


静寂を取り戻した

群青の空には

三日月は

もう・・・・

無く・・

東から朱色を帯びてゆく


ぼくらは

ただ、立ち止まり

明けゆく白い大地に

三日月の

去り行く場所を探した

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群青の空に浮かぶ三日月 姫亜樹(きあき) @Bungo-2432Da

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