削ぎ落すという美学。全てはただ、拳へと終着する。

小説の極意とは、突き詰めればただふたつ。
装飾か研磨かに分けられるだろう。

一事をひたすら飾り付け、多こそを美として仕上げるのか。
多事をひたすら削ぎ落し、一こそを美として仕上げるのか。

その観点でいえば、まさに『異境武闘伝』は一を美とする研磨の作品だろう。
全てが必要と効力のもとに用意され、真っ直ぐに事実へと読み手を運ぶ。
有るか無いか、要か不要か。余計なものはない。

さながら拳突き脚運ぶ武道のそれだ。
藤村文幹はキーボードを打ち、記述力を鍛えるファイターのようだ。

完成されたパンチの前には、いかなる空気抵抗もそれを阻めない。
読めば伝わる、ハマれば届く。ノーガードでお楽しみあれ。

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