秋桜の咲く頃

勝利だギューちゃん

第1話

「今年も奇麗に咲いたな」


秋になると、コスモスの花が咲く。

各地のコスモス畑は、人で賑わう。


僕の家には、小さいながらもコスモス畑がある。

ピンクの花が、肩を寄せ合う姿は微笑ましいし、心がなごむ。


コスモス・・・秋桜と書く・・・

花言葉は、乙女心


もともとは、ある人からもらったものだ。

その人とは、高校時代のクラスメイトの女の子。

とても、明るくて人気者だった。


そして、花が好きと言う面も持ち合わせていた。

そのために、必然的に好意を抱く者も、多かった。


僕もその子を、好きじゃなかったと言えばウソになる。


しかし、彼女は突然、転校することになる。

親の都合という、よくある事だ。


皆が、別れを惜しんでいた。


そして、クラスでお別れ会を開く事になる。

皆が、それぞれの品を、彼女にプレゼントしていた。

彼女はお返しにと、ひとりひとりに、違った花の種をプレゼントしていた。


ひまわりの子もいれば、あさがおの子もいた。

カタクリをもらった男子もいた。


カタクリの花言葉は、初恋。

その男子は、気付いただろうか?


僕は、何故かコスモスだった。

どちらかと言えば、女性向けの花だと思う。

なのに、なぜ男子の僕がもらったのか、わからなかった。


「去る者は日々に疎しだけど、もし花を咲かせることができたら、

私を思い出して」

彼女の、メッセージだった・・・


「懐かしいな・・・」

コスモスの花びらを撫でた・・・


花が咲く頃、当時を思い出す。

そう、当時を・・・


人の縁とは不思議な物。

そして、気まぐれ・・・


「また、ここにいたの?」

「ああ」

「でも、大事に育ててくれてるんだね、ありがとう。あなた・・・」


どこでどう間違えたのか、彼女は今、妻として僕の隣にいる。

そして、もうすぐ赤ちゃんが生まれる。

初めての子供だ。


「1人の体じゃないんだから、無茶しないでね・・・」

「少しは、運動したほうがいいのよ。この子のためにも・・・」

妻は自分のお腹を撫でた。


「名前、考えてくれた?」

「女の子だよね?」

「うん、先生はそう言ってた」


名前は決めている。


「秋の桜と書いて・・・」

「うん」

「かれん・・・」

「読めないよ」

「わかってる・・・」


人と人が出会うのは、天文学的な確率。

夫婦となるとなおさら・・・


彼女を妻と出来た事を、神様に感謝したい。

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秋桜の咲く頃 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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