宝石店にて 3−1

 ジュディが30分以上かけた道のりを、ロイはその半分以下の時間でスパークルにたどり着いた。

 すっかり街は夜の闇に覆われていた。満月が昇っていたはずだが、背の高い建物に隠れて、ジュディとロイの位置からは見えなかった。

  店の前でようやく降ろされたジュディは、店に入ろうとするロイの後ろから声をかけた。


「あの、コレ、店長に渡しておいてくれませんか」

 ジュディは宝石の入った袋をロイに差し出す。


「アタシ、もうここに居られません……。店長に、これ以上迷惑かけるわけにはいかない」


 もうこの場所は割れている。いつサーペントの連中がここに来るか分からない。


 涙が頬を伝った。やっとたどり着いた、ようやく手に入れた自由を、平穏を、こんなにすぐ手放さなければならなくなるなんて。あの店の中の、窓から差し込む温かい日差しにも、もう当たることができない。

 生きるための仕事だったとはいえ、自分もたくさん奪って、人の心を傷つけてきたのだ。どう頑張ったって、自分に幸せなど用意されていない事を、ジュディは思い知らされた。


 ロイは少し黙ってから、宝石は受け取らずにドアノブに手をかけて言った。

「そうかよ。そんであの連中に殴り込みに行く気か? じゃ、手始めにコイツの顔でも拝んどけよ」


 ロイがドアを勢いよく開くと、エレナと、あの白装束の男が掴み合いながら飛び出してきた。


「うわあぁぁ!? なんでっ!?」


 ジュディは驚いて悲鳴をあげた。

 まさか開くと思っていなかった扉が突然開いて、エレナと男が倒れ込む。店の照明の光がまるでスポットライトのように二人を照らしていた。


「あぁ!! 二人とも! 強盗犯が現れたんです!!」

「き、貴様、さっきの……!」


 ロイは全く驚く事もなく、飄々と説明した。

「さっきのとこで魔法陣の片割れを見つけたんだよ。で、うまいことおびき寄せて、オマワリサンのとこに送り込んどいたってわけだ」


「おおお前がやったんかい!!」

 エレナは何とか男を押さえつつも、ロイに怒る事も手を抜かない。


「な、なるほど、逮捕の手間も省けますしね!」

「だろ?」

「感心してないで手伝ってくださいよバカーっ!!」

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