第36話

放課後、先生に連れられて病院に行き、二週間の安静を言い渡された。

なんでも、中学時代の怪我の結果、多少は筋が強くなっていたからこの程度で済んだらしい。

次は本当に手術しないと歩けなくなるって忠告はされたけど。

しばらくは松葉杖生活かな。


「さて、お前を送っていくことになるが、なにか必要なものはあるか?」

「あ、それならスーパーで買い物したいです」

「お前、その足で料理する気か?」

「中学時代もやってたし大丈夫ですよ」


もう固定されてるわけだし、適当な台に足を乗せておけば問題ない。


「それと、二週間は登校禁止な。休め」

「え?」

「安静にしろと言われただろ?それと親御さんにはちゃんと連絡しておくように!」


まあ、休んでいいなら休みますけど…授業ついていけなくなるじゃん。


「授業については……成績もいいし問題ないだろう。

 課題をやって、登校できるようになったら別室で中間テストを受けてもらうことになる。

 喜べ、期間的に水面だけに作られる特別なテストになるぞ」

「全然うれしくないです」


あ、中間といえば、小野さん、勝負できないや。ごめん。

一応心のなかで謝っておく。


「ほら、買いたいものがあるなら言うんだ。俺が買ってくる」

「じゃあお言葉に甘えて」


肉や野菜類、牛乳など、当たり障りのないものを一通りお願いする。

車で待たされている間に部活のグループチャットに書き込む。


楓:『二週間絶対安静だってさ』

林檎:『そんなもんですんでよかったわね!』

なお:『大変なときに役に立てなくてすまない』

紅葉:『よかった~~~(´;ω;`)』


みんな、あったかいなぁ……仲間って感じがする。

感慨にふけっていると赤井さんから個別メッセージが届く。


『色々大変だと思うからお見舞いもかねてお邪魔していいかな?』

『そんなに気を使わなくてもいいのに』

『わたしがしたいの!いいよね!ダメって言われても行くよ!』

『僕の家知らないでしょ?』

『あ、そうだった』

『住所送っとくね』

『それは来てほしいってことだね~!待っててね(はーと)』


本当にくる気なんだ。あ、色々あって忘れてたけどヘアピンとか返してないや。

制服は……先生に回収してもらおう。




***


先生に自宅まで送ってもらった。先生は学校に戻るそうだ。

まあ、報告とか僕の休校手続きとかあるのだろう。

クラスのみんなに何も言わずに休むことになっちゃって申し訳ないな。

連絡先も知らないし諦めよう。


『ピンポーン』


赤井さんかな?


僕は慣れない片足で飛びながら玄関まで向かいドアを開ける。松葉杖?めんどくさいじゃん…


「来ちゃった」


照れながら言う、制服姿の赤井さん。なんか、荷物多くない?


「なんか、ギャルゲでよくある家出してきたヒロインみたいな登場だね」

「水面くん、さっすが!まさにそれをイメージしました」

「それで、その荷物は?お見舞いにしては多くない?」


率直な疑問をぶつける。


「えっとね?嫌だったら断ってくれていいんだけど…」


何が飛び出すんだ…ちょっと怖い。


「水面くんの休んでる二週間、この家でお世話させてください!!!」

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