第20話

放課後、美咲先生に言われたとおりに部員全員でコンピューター室に集合していた。

僕が鍵を開けられることに赤崎さんと和田くんは驚いていたけど、

どうせみんなもこのあと登録することになるんだろうと予想していた。


「みんな揃ってるわね?」


美咲先生の登場だ。

昨日は渋っていたけど、やると決めたら真剣に取り組むそうだ。

……ゲームのことじゃないよね?


「昨日職員会議で掛け合った結果、部として認められることになりました。

 まずはおめでとう。顧問は私が努めます。よろしくね~」


こんなゆるい部活でも認められるのか、この学校。


「あ、ちなみに水面くんの成績あっての了承みたいだから成績は落とさないようにね?」


釘を差されてしまった。


「この部活の生命線はあんたよ、水面。しっかり頼んだわね」

「水面ってそんなに成績いいのか。勉強おしえてもらおうかな」

「水面くんは学年二位だよ~!わたしもおそわりた~い!」


みんな僕を頼り切ってるなぁ…悪い気はしないんだけどプレッシャーが。


「それで、部活動の当面の活動内容を決めておきたいのだけどなにか案はあるかしら?」


先生は部員一同に問いかける。


「ん~、あたしはもっとオタクに詳しくなりたいわ」

「俺はなんでも。言われたことやるよ」


赤崎さんと和田くんは具体性なし!作ったの赤崎さんでしょ…考えといてよ。


「わたしはみんなでコスプレとかしたいな~」


さすが、コスプレイヤー。でもそれ学校ではやらないほうがいいと思います。


「あ、それいいわね。みんなで合わせてコスイベとか面白そう」

「俺もコスプレするのか…?」


なんて盛り上がりを見せ始めたところで言いにくいけど切り出す。


「僕は最初は目に見える形のもの作ったほうがいいと思う。文化祭もあるし」

「例えば?」


うっ、そこまで考えてなかった。


「はいはい、先生から提案で~す!」


美咲先生が僕に助け舟を出す。


「部長はこうみえて自分でゲームを作っている人なの。すごいでしょ!」

『知ってる(ます)』


全員がそう答えたとき、美咲先生は戸惑った顔をこちらに向ける。

そりゃ、夏の展示会でばれてるしなぁ…


「そ、そう。それなら話は早いわ。部長指導の元でなにかゲームを作りなさい!

 それを文化祭で展示することを目標とします!」


ゲーム制作ね……悪くはない案だけど僕の負担が大きいだけでは?


「美咲先生?ゲーム制作なんて簡単にいいますけど、開発環境用意できますか?」


待ってましたと言わんばかりの美咲先生。何を企んでるんだ……


「秘密にしてたけど実はゲーミングノートPCがあるのよ!

 これを部の備品として使用を許可します」


出てきたのは某BTOメーカーのゲーミングPC。なぜ学校にこんなものがあるんだ。


「うわ、すっげ~。これ20万くらいするんじゃねえの!」

「え?パソコンってそんな値段するの!?」

「ノートパソコンだとちょっと高くなるんだよ~」


はしゃぐ3人。僕は出どころが気になって仕方がない。


「で?美咲先生、出どころは?」

「去年のコンピューター部が大会で優勝したときの副賞ね。

 残念ながら部員不足で廃部になったんだけど彼らに渡すわけにも行かなくてお蔵入りしてたの」


よかった、怪しいルートじゃなくて。先生のポケットマネーとかだったらどうしようかと思ってた。


「一応伝えておくけど、部の備品ってことは学校のものだから原則、家に持ち帰っちゃだめよ~!気持ちはわかるけど」


『はーい』


いい返事だ。本心は持って帰りたそうだけど。


「あとは部長に任せるわね。私はたまに顔見せる程度ってことで許して!」

「了解です。何かあれば報告します。あと、彼らの静脈認証登録してあげてください」

「あ、それはダメよ。自由に使われると困るからこその静脈認証なのよ?

 だから入るときは先生か水面くん同伴は必須条件」


もう本格的に逃げ場ないじゃん!!!

と、ついに観念した僕だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る