第19話

体育の時間。

球技大会が近づいたこともあってこの時間は球技大会の練習になった。

この学校は2クラスが合同で体育を行うため、今日はA組と合同だった。


どうやら試合形式でやるらしい。


「D組でバスケ経験者はいるか~?」


我がクラスのリーダー的存在がそういう。

僕は仕方なく挙手をした。


「え?水面ってバスケ出来るのか?って担任が勧めたんだからそりゃそうか」

「うん。少しは。膝が悪いから激しいプレーは難しいけど」


中学時代の話はしない。ブランクもあるし期待されても困るから。


「じゃあ俺と水面を中心にボールを運ぶ。身長の高い奴らはゴール下な!」


そう指示を出す彼は現役バスケ部だそうだ。


「膝が悪いって言ってたけどボール運びとかシュートには問題ないか?」

「うん。速攻とかプレスはちょっと厳しいかもしれないけど・あとゴールしたのリバウンド」

「それならゾーンディフェンスにしてみるか」


正直ありがたい。彼はいい人だな。名前くらい覚えておこう。


「えっと、申し訳ないんだけど何くんだっけ?」

「おいおい、クラスメイトの名前くらい覚えとけって。俺は須藤だ。」

「ご、ごめん。よろしく須藤くん。がんばろう」


試合前に軽くみんなの実力を見ることになった。

現役バスケ部だけあって須藤くんはスピードもあるしシュートもよく入った。

他のクラスメイトも身長が高い人が中心のため、ゴール下の安定感が違う。


「ほら、水面もやってみろって」


ボールを渡されたそこはちょうどスリーポイントライン。

僕はそのままシュートモーションに入ると自然な流れでシュートを放った。


『スパッ』


直接リングに収まり、気持ちいい音がなった。

よかった、まだ身体が覚えていたみたいだ。

それにしても、静かだな~なんて須藤くんをみたらあんぐりと口を開けていた。

よくよく周りをみてみるとみんな僕を見ている。

あれ?ぼくなんかやって?


「いやいやいや、水面、もう一回シュートしてみて」


須藤くんからボールを受け取る。

なんだろう?まあ、いいや。さっきと同じ感覚でシュートを放つ。

今度も寸分の狂いなくシュートが決まった。


『すっげ……』


誰かが言ったその言葉を皮切りに僕の周りに人が集まった。


「2本連続でその精度ってことはまぐれじゃないんだな。

 いや、すげえよ。ガリ勉オタクとか言われてるからスポーツできないと思ってたわ」

「ほんとほんと。バスケ部でも即戦力なんじゃない?」


そんなふうに言われる。バスケはシュートだけじゃどうにもならないけどね。

そして須藤くんが


「なあ、もしかして水面って中学んとき選抜入りしてた水面か?」

「……あの頃の僕はもういないよ。膝を怪我してこの通りだからね」


否定はしなかった。事実だから。バスケはたまに楽しむくらいが丁度いいって思ってる。


「そうか、その、災難だったな。色々噂は聞いてたけどが目の辺りにするとちょっとな…

 ま、水面がいれば球技大会は優勝もらったみたいなもんだろ!」


須藤くんのその一言でD組はすごい盛り上がりを見せた。

あんまり持ち上げないでほしいなぁ……

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