第18話

「失礼します。美咲先生はいらっしゃいますか?」


結局、僕が部長として申請書を出すことになってしまった。

でも相手が美咲先生なら楽勝だ。お昼に赤井さんからとびっきりの情報をもらってるからね。


「はいは~い。ってあら?水面くん。珍しいわね」


美人の癖にオタクを隠さない、その裏表の無さが一部で大人気らしい。

オタクを毛嫌いする一部の生徒や先生からは目の敵にされてるみたいだけど。


「美咲先生にお願いをしにきました」

「水面くんが、先生に?一体なんのお願いかしら?

 あなたのゲームの絵を書いてほしいって言うなら大歓迎よ?」


そう、この先生、結構絵が上手いのだ。漫研の顧問は伊達じゃない!ってことかな。


「何回も言ってますが、それはお断りします。そうじゃなくてこれです」


断りをいれつつ、申請用紙を渡す。


「エンタメ部?あなた部活を作るの?」

「はい。ある意味巻き込まれた形かもしれませんが悪くはないかなって」


美咲先生は僕に友だちが少ないことをよく知っている。

何故かって?そんなの昼休みとか放課後にコンピューター室に籠もってることあるからね。


「作ることには反対しないけれど、つまりは私に顧問をやってほしいってことよね?」

「そのとおりです」

「私、漫研を受け持ってるのだけれど…」


やっぱり断られる流れか?


「そう言わずに、兼任してる先生だっているじゃないですか。是非ともお願いします!」

「先生も暇じゃないのよねぇ…」


あなたが暇じゃないのはゲームの時間が減るから嫌だってことでしょう……

じゃあ、攻撃に出るか。


「僕の新作、赤井さんに横流ししましたよね?普通に売れば僕の収入になったのに……」

「ちょっとまって!!!」

「非正規のルートで、著作者の許諾もなく勝手に」

「はい……」

「なにか言い分はありますか?」

「ありません…顧問、やらせていただきます」

「ありがとうございます!さすが美咲先生は頼りになりますね!」


あ、美咲先生ちょっと悔しそう。


「ただし!条件があるわ!」

「はい、なんでしょう?」

「水面くんの作品は引き続き融通してもらうとして…部室はコンピューター室にすること。

 他の先生に問題視されるようなことはしないこと!

 あとは、活動実績が必要になるからなにか部として作品を残すこと!

 これをちゃんと守れるならOKとしましょう」


部としての実績がないと存続出来ないのか。

まあ、大会とかそういうの無いし当然か。


「わかりました。そういうことならみんなにも伝えます」

「実際のところ水面くんがいればあまり心配はないのだけれど」


ありがたいことに成績上位者ってこともあって教師陣からの評価はそこそこ高いらしい。勉強しててよかった。


「それじゃあ、結果は明日にでも伝えるわ。明日の放課後、部員を集めてコンピューター室に集合ね」

「ありがとうございました」


美咲先生にお礼を言って振り向くと心配そうに覗き込む部員たちがいたので柄にもなくサムズアップしたらみんなの喜ぶ声が聞こえた。

部活か、悪くないのかもね。

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