第2話

「いや、それにしてもびっくりだよ〜!まさかクラスメイトに会うなんてね〜」


歩きながら赤井さんは言う。


「こっちも驚きだよ。まさか教室であんなにおとなしい赤井さんがコスプレなんて……」


赤井紅葉あかいもみじさん。クラスではおとなしいイメージの女の子だ。


「あはは〜、漫研に入ってたんだけど、色々あっておとなしくしてたからね〜!

 幻滅した?クラスでおとなしい女の子が人気アニメのコスプレするオタク女子で」

「幻滅なんてしないし、むしろ親近感が湧いたよ」


「そっかそっか!水面くんは…買い物?」

「いや、僕は……」


言い淀んでいると意地の悪そうな顔でこんな事を言った…


「なーに?えっちな同人誌でも買いにきたの?」


赤井さん、ちょっと顔赤いですよ。


「自分で言って照れないでもらえないかな?こっちも恥ずかしいよ!?」


『ふふ…』


お互いに笑う。コスプレを見つけた時の微妙な空気はそこにはなかった。


「赤井さんの秘密、知っちゃったしこっちも話さないとフェアじゃないかな~」

「え?水面くん、何か秘密があるの?」

「うん。ちょっとこっち来てもらえる?」

「あの…同級生の女の子をどこに連れて行く気なの〜?まさかえっちな同人誌を見せつけるつもりじゃ…?」

「それはない!!」


からかうように言う赤井さん。教室では見れない赤井さんの一面を見ることができてちょっと嬉しい。

というか学校とキャラ違いすぎないか?


「着いたよ」


歩くこと数分。目的の場所に着く。


「あ、あれ?ここって…サークル・メープル……?」


案内したところは僕の個人サークル、メープルの出展スペースだった。


「メープルってダンジョン&ショッピングの頒布してるサークルだよね?」

「赤井さん、知ってるの?」

「うん!掲示板で話題になってたから気になってプレイもしたよ〜!絵とか音楽はともかく、内容はすごく良かったな〜!

 あと一歩でクリアできない悔しさでやめられない感じがもう!今日出てたんだね」


こんな身近にプレイヤーがいたとは…嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といったところ。


「まさに、そこに主眼を置いて作ったからなぁ…」


その時、赤井さんがキョトンとした顔でこちらを見た。

ああ、そんな顔もかわいい。


「作ったって…今そう言った……?」

「うん」


隠す気もないし正直に話す。


「も、も、もしかしてメープルさんって水面くんなんですかっ!」


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