即売会で出会ったコスプレ少女はクラスメイト

角田聖侍

第1話

『これより第80回エンタテインメントマーケットを開幕します』


会場に響くアナウンス。響く拍手の音。


東京ビッグサイトで行われる夏のエンタテインメントマーケット、

そのサークルスペースで開幕のアナウンスを聞いていた。


要するにサークル参加ってやつだ。

僕は自作ゲームをエンタメマーケットで頒布しているのだ。


去年の冬、なんとなく応募してサークル初当選した際に

『ダンジョン&ショッピング』というゲームを頒布した。

大して技術力もないゲームだったけど、そこそこの反響があった。

一部ではクソゲー、一部では神ゲーと呼ばれ某匿名掲示板に専用スレも出来ていた。(今では影も形もないが)


そんな経緯は置いといて…今日はそのダンジョン&ショッピングの追加ディスクを持ってきている。続編とまでは言えないけど追加要素を入れたパッチだ。


ここ、【サークル・メープル】が僕のスペース。

冬に一時的な反響があったとはいえほぼ無名のサークルのため、知る人ぞ知るって感覚。

ただ、冬に買ってくれたという人たちが結構な人数来てくれて追加ディスクを買ってくれたため昼過ぎには完売した。


完売してやることもないしコスプレ広場で写真でも撮ってこようかな。

完売の札を出しサークルスペースからコスプレ広場に向かう。

手には愛機の一眼レフカメラ。ここにいる目的の半分はコスプレ撮影と言っても過言ではないだろう。


「お、あの子すっごくクオリティが高いな」

目に付いたのは最近話題のアイドルアニメのコスプレをした女の子。

僕は撮影のためにその子の列に並ぶ。

「次の方〜」

僕はカメラを構えて写真を撮り始める。

そこでふと、違和感を感じた。


「あ、あの、前の人の時より表情固い気がしますがどうしました?」


ここは聞くしかない。うん。

トイレにでも行きたいのだろうか。まさか僕が生理的に受け付けないとかそういうことではないだろう、と思っていると…


「え、えっと、すみません!体調が優れないので今日の撮影ここまでにさせてください!」

唐突に列を解散させる彼女。

え、なに?僕なんかした……?


「あの!着替えてくるのでここで待っていてもらってもよろしいですか?」

突然の耳打ちに驚きつつも冷静になる。

「あ、はい。構わないですけど、どうしてまた…?」

「その方が話が早いと思いますので…それでは行ってきますね」

若干引きつった顔を見せながら立ち去る彼女。

僕はその場に立ち尽くすしかなかった。



***


「お待たせしました」

先ほどの女の子の声がした。

振り返るとそこには……


「も、もしかして、赤井さん!?」

クラスメイトの女の子がそこにいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る