『英雄』のあらすじ



–––––––・・・そっか、私、兄貴にとっての英雄になれたんだ・・・–––––––




 一年後の1985年。成長した人種も出自も異なる彼女たち七人はついに初めてのテレビ出演を迎えていた。


 チェルネンコが死去したソ連では改革派のゴルバチョフが最高指導者に就任しソビエト政治は新たな局面を迎えていたが、彼女たちもまたそんな彼が推し進めるペレストロイカ(改革)の追い風として大いに期待されることになる。

 

 そんな彼女たちのグループ名は「花束ブーケト・ツヴェトフ」。

 

 テレビ収録を終えた直後のナタリアは、長引くアフガン戦争に出征し負傷した兄アレクセイがモスクワの病院にいるという話を聞きつけて大慌てでモスクワの病院に駆けつけるが、一年ぶりに再会した彼の心はすっかり荒みきっており、二人の間の溝はむしろ深まってしまう。


 アフガンで十分に活躍できなかった兄は今もまだソ連の英雄になりたいと願っており、再び地獄のような戦場に戻ろうとしていたのだ。


 しかし決して軍人だけが英雄になれるのではなく、自分のようなアイドルでもソ連を代表する英雄になることができるのだと考えた彼女は自分が英雄になることで兄の心を変えたいと強い決意を胸に抱き、年末に行われるグループ単独ライブに臨む。

 

 兄が、そのライブに来てくれることを信じて。

 

 美しいライラックの花飾りを頭に飾ったナタリアは、新生音楽グループ花束ブーケト・ツヴェトフのリーダーとして、美しい歌声をソ連中に響かせる。

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