第4話久石譲 前奏
「高校生の男の子がジブリを聞いて寝るか・・・」
母親が色々な感情が混じっていますという声で時々呟く。
「フン」と僕が言っているのかどうなのかも気にしていないが、半分以上は
「あんたのせいだろう」という表情をしたはずだ。
「僕のジブリ好き」は生まれる前から決まっていたことで、アニメはもちろんすべて見た。当然久石譲が好きになり、アニメ以外の曲も色々聞いている。不思議と音楽を演奏したいという欲求は皆無なので、とにかく聞く専門だ。
「お母さんが学生時代に「となりのトトロ」が公開されたの。昔は同時上映といって、二本立てで公開されることがあって、その相手が何だったと思う? 」
聞かれたのは確か中一だったと思う。
「火垂るの墓でしょ? 」
「うわ、この子知ってる・・・いつの間に・・・まあそれでね。最初に火垂るの墓を見終わって、あまりに悲しくて「私このまま死ぬかも」と思ったの、でもそれからしばらくして「さんぽ」の前奏が始まって、今までの悲しい気持が一気に癒されて、歌に入った時
「うわ! 久石譲ってやっぱりすごい! 歌も作るのとっても上手だわ! 」って感動したのよ」
「当たり前だろう? 」
「いやいや、風の谷のナウシカの歌はYMO(ワイエムオー)の細野晴臣の作曲だったから、歌は初めて聞いたの。ナウシカの音楽がとっても良かったから期待していたし、ナウシカの歌を作らなかったから、ほんのちょっと「あんまり歌を作るのは上手じゃなかったりして」ってスパイス的に意地悪な感じもあったかな、でも・・・もうそれを吹き飛ばしてくれるというか
「ああ、この曲で救われた」って思ったわよ。音楽に救われたのはその時が初めてだったかも」
何度か聞かされているから「またその話? 」という顔は見せるが、自分としては、他人に話せるレベルの感動的な実話の一つだ。
マウス ピース @nakamichiko
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