SSSバグヒーラーはストーリーの裏で五寸釘を打ち付ける

「十三聖剣——!」


 十三聖剣は確かこの異世界でも、結構強くて、良い感じに悪いやつらを倒す、国の犬とかなんとか。テイマーとして冒険ばかりしていたから、全然世の中の事が分からなず、あやふやすぎる知識だ。


「そうよ、私にひれ伏しなさい、怯えなさい、そしてこの地を渡しなさい」


「なんですか貴女は突然に。私はここの領主を勤めていますミキネと申します」


「あら、随分ちんちくりんで未発達なおこちゃまですこと——それなりにかなり可愛いですわね」


 暴言を履こうとしたみたいだが俺の魅力ステータスが高すぎたせいか、アリスティリシァは歯切れが悪く、結局褒めて終わった。


「突然出てきて土地を渡せと言われましてもそうは参りません。その考えに至った理由をお伺いしても良いですか」


 ふん、と鼻を鳴らして顎の下に手の甲を寄せる。


「私が欲しいからですわ!」


 ででん! と後ろで音が鳴ったような気がしたが、鳴ったとしても間抜けな気もする。


「一番横暴な奴じゃないですか!」


「ええ、そう。でもいかなり理由をつけて土地を奪うよりも、それがシンプル」


「念のために聞きますが他の理由はないんですね?」


「もし、というならば、この村には邪悪な悪鬼羅刹の類が跳梁跋扈していると、匿名でとある英雄様から国へ連絡が入ったわけです」


 あ、それ匿名じゃねーわ。


 だってそのパーティーに追い出されたクズヒーラーの相沢さんが、使えないはずの呪術みたいなのやり始めてるもん。今頃あの人、顔から鍋に突っ込んでそうなくらい大変だろうなあ。


「元々凶悪な吸血鬼のお膝元で、誰も手が付けられない困った土地と聞いておりました。私が聖剣で全てを一掃して、私の庭でも作ろうと考えておりましたの」


「アリスティリシァさん、残念ながらここには吸血鬼も悪鬼羅刹もおりません。その依頼主の勘違いですから、速やかにお引き取り頂いて結構です」


「そのような、かわいらちぃ、お耳を持っていても、悪鬼羅刹の類ではないと——?」


 キラリと目を光らせて、アリスティリシァは背中で縦に背負った剣に手を伸ばそうとする。


「これは特注品のようなものですので」


 むしろ俺の背中で、聞いたことのない呪詛を唱えてる相沢さんの方が、地獄の亡者だと思うが見えないのかこの聖剣様は。


「勝負と参りましょう」


「受けませんよ」


「時間は三十分一本勝負」


「受けませんよ」


「今の時期にぴったりな、そうお菓子祭——」


「それは先日やりましたので結構です」


 その後、数日はお菓子だけのご飯になってきつかった。当分は遠慮します。

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