SSSおーっほっほっほ

「あらそうでしたの、ではどういたしましょう。貴女のようなおちびちゃんに、聖剣を使うのも憚られますし……」


「エリィには武器投げましたよね……」


「それはその子が、ここで見てた私に剣を先に投げつけたからですわ」


 アリスティリシァの言葉に、エリィは「やばっ」と呟いた。


「今日の食器洗いもエリィです」


「え、えええ! 昨日も今日の朝もやりましたよ!」


「ね、エリィ」


 にっこりとほほ笑み返すと、うう、と肩を落とした。


「それではこういたしましょう。今、街で流行りの《どきっ女の子だらけの村で可愛さ最大アイドル対決》というのは」


「……何を言ってらっしゃるのですか」


 もしかして頭、お花畑なの?


 世の中の街はどうしてそんなものが流行っているの?


「こちらは大真面目ですわ。私の庭を手に入れる勝負なのですから」


「受けるとは言っておりません」


「いえ、領主様は受けざるを得ませんわ。こんなしょぼい村でも守らなければいけない領民がおりますし、それに——」


 俺の足先から尻尾、表情、狐耳を舐めるように見て、アリスティリシァは両手を広げて叫ぶ。


「その可愛さを無駄に眠らせておけるはずがありませんもの!」


 褒めるのか貶すのかどっちかにしてくれ!


「ルールは後で説明しますわ、まあ私の美しさに勝てないというのなら、すぐに領主権を引き渡してくれさえすれば、許しましょう」


 くっ、なんて面倒くさい人種なんだ。いくら断ってもペースに飲まれていく気がする。流石十三聖剣の名は伊達じゃないということか。


「ミキネちゃん、やっちゃいなよ」


 十二個目の藁人形を近くの木に打ち付けながら、相沢さんが俺へと笑いかけた。


「大丈夫、ミキネちゃんなら最高のアイドルになれるよ。私が保証する」


「五寸釘で打ち付けてる人に言われたくないんですが」


「どうやら決定ですわね」


 決定してないんだが。


「会場設営とスタッフは、私が手配しておきますわ。是非フェアな勝負とまいりましょう、ミキネ様」


 アリスティリシァは髪をふぁさっと書き上げ、おーっほっほっほと気持ちよく去っていった。


「……やっぱり笑い声はおほほなんですね」


 何のメリットもない戦いだと思いつつも、やっと帰ったことがメリットだと自分を納得させ、今日も一日が始まるのだった。

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