悪役令嬢聖剣クエスト発生!:悪役令嬢から勝利をもぎ取れ!

SSS悪役令嬢は聖剣使い

「ひまひまひまー」


 真っ青なヒーラーローブを着たまま床に寝そべり、足だけ宿屋の椅子に乗せてじたばたしている相沢さんが呪詛のように呟いていた。


「なんか太もも気になるので、はしたない格好はやめましょうね」


「ええー、別にいいでしょ女の子しかこの村、居ないんだし。パンツはぎりぎり見えないでしょ? それがいいのよ」


「恥じらいがあった方が品性が疑われませんよ」


 むーと唇を尖らせた相沢さんは、ミキネちゃんが言うならと、いそいそと床から体を起こした。珍しく素直だった。


「熱でもあるんですか? それともいつものように拾い食いでもしました?」


「私を何だと思って——なんか女の子でそう言ってくれる友達いなかったから、それもそうかって思っただけ」


 人の言うことを聞く日もあるんだなぁ、これは槍の雨でも降ってきそうだ。


「にゃ、にゃあああああ!」


 創造した矢先に、今日の宿屋庭先掃除担当のエリィが妙な悲鳴を上げる。


「槍が槍があああ!」


「どうしました!」


 俺と相沢さんがすぐに駆け付けると、庭先で数十本の槍に囲まれて逃げ場を失っているメイド服姿のエリィの姿があった。


 よっぽど怖かったのか尻もちをついたまま、エリィは半泣き半笑いでこちらを見る。


「や、槍が降ってきました……!」


「あ、あたしじゃないよ?」


 じっと見る俺の目を察したのか、相沢さんはふるふると顔の前で手を振る。


「大丈夫ですかエリィ」


「怖かったです……普通に。ミキネお姉ちゃん!」


 槍を避けてエリィに手を伸ばして引き上げると、俺の首元に手を回してギュっと抱きついてきた。エリィのふんわりしたミルクのような優しい香りが鼻孔をくすぐる。


「よしよし、相沢さんじゃないのなら一体——」


 吸血幼女イヴァは朝方だからさっき寝たばかりだし、魔法研究生組も、ミリャ先生の青空教室が始まった頃だろう。


 辺りを見回すと俺の視界の先、宿屋に通じる道にまっすぐにこちらを見据える影があった。


 影は女性だ。


 年の頃は十七前後か、赤毛混じりでロングのゆるふわな髪、全身を覆う鎧は軽装で薄い青を纏っている。鎧の下はロングスカートが見え、足元は武骨なブーツを履いていた。


 顔立ちは美人系で落ち着いたクールなイメージを醸し出している。


「あなたがうちのエリィに槍を投げたのですか? 返答によっては」


 俺は拳を握り、非常用で宿屋の庭にびっしりと書き込んでおいた非常術式に手をかける準備をする。


「ええ、投げたのは私ですわ」


 やけに自信満々に胸を張り、そこそこ蓄えている胸に手を当てる。


「この十三聖剣の十三番目を司る私——アリスティリシァが、それを投げましたわ。何か問題が?」


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