街発展クエスト発生!:居住者の増加、生活用水を作り出せ!

SSSな街造りと古き良きシムシティ

「何はともあれお客様が必要です!」


 ドドンッと俺は無い胸を張って、朝ご飯を食べている相沢さんとエリィに言い放った。


「「う?」」


 二人はパスタを口に入れつつも顔を見合わせ、同時に自分たちの顔に指をさした。


「お客様は宿代と食事代を支払う方をいうのですよ。タダで寝泊まりしているお二人とは違います」


 そもそも相沢さんに至っては、レンタルお姉ちゃん業でエリィからお金を巻き上げているくせに、「い、今はないから」とか「あー、財布忘れてきたわ」とか言いながら、そのお金を払おうとしない。


 エリィもエリィでレンタルお姉ちゃん代の方が優先度が高いらしく、「も、もう少しお待ちください」としおらしく言うものだから、俺も取り立てるに取り立てられないでいた。


「んー、でもこの有様だしねえ」


 相沢さんがつるんとパスタをすすりながら室内を見渡す。


 掃除の手は行き届いているものの、お世辞にも綺麗といえず、明らかに民家を改造した小さなお宿といった感じだった。


「それに街でもないですからねえ」


 指に付いてしまったミートソースを、小さな舌で優しくなめとりながらエリィは外を見た。


「ですがもうこの街には凶悪な吸血鬼はいなくなりました。今こそ発展の時です。あと背中からそろそろ離れてください、イヴァ」


「いやじゃ」


 俺の背中にべったりと抱きついている金髪ゴスロリ幼女——イヴァは吸血鬼城から帰ってから、どうやら完全に俺に懐いてしまった。


「ミキネママと一緒が良いのじゃ」


 家族の愛に飢えているのか何百年前から生きている年上のくせにこの呼び方だ。なんか気まずい気持ちになるから、ママって呼ぶのやめてもらいたい一心である。


「そんなにすぐ発展させようとしなくてもいいんじゃないかな。外には畑もあるし、水源である泉も綺麗になった。他に何を求めるの」


「良いですか相沢さん。今は四人家族みたいものなんです。ご飯も野菜も四人分。もしもの時の病院もないし、お店屋さんもありません」


 街に降りて生活も一つの案だろうが、この狐耳幼女の身体で知らない町に住むのは少し勇気がいる。それに相沢さんたちが人間界に馴染めるとは到底思えない。


「うぐぐ、ミキネちゃんにしてはまっとうなお言葉」


「この中ではいつも真っ当だと思ってます」


 俺は二人が食べた食器を手短に片付け、ダイニングテーブルを拭いて、大きな紙を敷いた。


「まずここがこの宿屋で現在地です。開けた場所の南側に存在しています。北側にはイヴァのお城があって、その前に湖があります。その他は全部綺麗になってますが、慣らされた土地が広がっているだけです。そして土地の周りは深い森——私たちが安定した生活を送るには、もう少し発展が必要です」


「いつになくやる気だね、ミキネちゃん」


「頼りがいがあります」


 相沢さんとエリィはぱちぱちと拍手をする。


「ふふ、こう見えても街発展には詳しいですからね。若い頃は理想の街を作るために夜通し、街を作っては壊し、作っては壊していました」


「ミキネちゃんそんなこともしてたの?」


「ええ、シムシティで」


「名前しか知らないなー、わたしは。ゲームはMMOしかやってなかったし」


 エリィが「げーむ?」と首をかしげるが、ここは現代人。面倒な説明は全て流す。

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