AAA運動用胸部補助用品の行方は神のみぞ知る

「相沢さんがついに本気に——」


 吸血幼女の術式に負けじと相沢さんも早口で何かを唱える。唱える言葉が増えるたびに相沢さんの拳も強く輝きを増していく。


 一体、どんな術式を組んでいるんだ。元テイマーの俺では想像もつかないほどに、ヒーラーってのはそんなに凄いのか?


 そっと狐耳を澄ませる。


「まずはミキネちゃんとエリィたんにフリフリであまあまなワンピースのお洋服を着せるお洋服を着せたら二つ用意した椅子の上に立たせて椅子の間からスカートの中をじっと見つめる階段を登るときも下から見上げる洗濯はわたしがやって洗う前のミキネちゃんとエリィたんの下着は一度わたしがすこし穿いてからなにごっともなかったように干すその後に下着を準備してあげて私が履いた奴を滑り込ませておけば作戦は完ぺきご飯を食べる時はわたしがスプーンでお口に運んであげてふたりのくちもとをてでふいてあげたりするんだ。お風呂の時は身体同士をすり合わせて洗い合い『女子同士だしよくあるよくある』なんていいながらいいかんじにごまかすもちろんむねはなでるなでるなでるなでるなでる就寝時はミキネちゃんとエリィちゃんに挟まれながらふたりの成長過程にある胸にすりすりしながらねて朝は二人の天使のような笑顔で起きるんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああシャイニング・退魔フィンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ————————ああ、魔術式って人柄出るんだなあ。


「わ、我より早いじゃと!」


 相沢さんの手は光に包まれ、相沢さん自身も何故か光り輝く。まるで明るい鏡に映し出された止まった水の如く。いやめちゃくちゃ濁ってそうだけど。


「ひかりになれえええええええええええええええええええ!」


 相沢さんはゴスロリ吸血幼女の小さな膨らみである胸に向かって、シャイニング・退魔フィンガーを放つ。


「や、やった——のでしょうか」


 俺の隣で呆気に取られているエリィが呟く。


 相沢さんの初めの説明では、シャイニング・退魔フィンガーに触れた者は死ぬ、といっていた。


 ——しかし光が収まっても一向に吸血鬼が絶命する気配はない。


 その間も相沢さんはただ静かに胸を優しく撫でまわしている。


「あ、あれ?」


 相沢さんも結果に気が付いたのか、不思議そうに自分の手を見て、もう一度吸血鬼を見る。


 吸血鬼は何事もなかったようなきょとんとした顔をして、わずかばかり距離を取る。


「ふふ、す、少しばかり驚かせおって——?」


 何か気になるのか、吸血鬼の動きが一瞬止まる。

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